わたしは此処にいる
"蜘蛛宇宙人" は
――また
地点(C)を抜け出す。
そして
――九歩で
次の分かれ道。
そこからまっすぐ進み――
――また二歩目で…
語りが始まる。
"ω":
「わたしが言ってる事、わからないでしょ?――あんた頭悪いから」
"ω":
「人間は、宇宙になんか行く必要がない!」
"ω":
「人間は、深海に行く必要なんかない!!」
"ω":
「人間は、ロボットの進化を追求する必要なんかないの!!!」
"ω":
「人間は、神秘と呼ばれてきた現象を調べる必要なんかないの!!」
"ω":
「愛されなきゃ意味ないの!」
"ω":
「『カワイー』って褒められるのが最高の人間なの!!」
"ω":
「謙虚なペットみたいにね……」
"ω":
「ペットがキライな人なんかいないでしょ?」
"ω":
「ペットはみんなに愛されてる………――だから<すごい>んだよ!!!」
"ω":
「<究極の人間>は偉大な事をするヤツじゃない!!
――可愛いペットなんだ!」
"蜘蛛宇宙人" は立ち止まった
――トンネルの真ん中で。
――――――――――――――――――――――――
これまで……――何度も耳にしてきた事。
これからも…――耳にし続ける事。
<人それぞれ>に、多様性などない。
――――――――――――――――――――――――
"蜘蛛宇宙人" は決めた。
そして――声を出した。
「それが人間だというのなら……
――オレは人間の可能性を越えるだけだ」
それは、自分に向けた言葉だった。
そして
――それは………
目新しくない。
――――――――――――――――――――――――
"蜘蛛宇宙人" は<求めた時>に失った……
――キャラクターを
――個性を。
随分と前から失っていた。
"蜘蛛宇宙人" は『1』ではない
――『ω』でもない。
記号ではない
――記号の集まったグループとイコール関係にない。
陳腐で本を読みもしない読書家がテンプレ的によく言う――
<キャラが立っている>
――そんな状態など、『24』の様な物だ。
『1』に『23』を足したり――『1』と『2』に『21』を足したり。
そして…
――『1』を『ω』にして……
他の数字を都合良く修正したり。
全ては――"それ" が理解出来る範囲内。
そして――
<予想も出来ない事>が目の前に現われると………
――文句をつける。
黙り込む。
無視する。
そして新たに現われた対象が数えられないのは――
<自分の頭が悪い事>
――その事実を認めない。
絶対に。
――――――――――――――――――――――――
<安易さ>よ……――<普通>よ!!
お前は<雨樋>である!!!
自分に相応しい分だけ、わかりやすく流し…――
そして膨大過ぎる雨滴を受け入れる事は出来ない!!
ただ――
雨樋が受け止めきれず――
溢れ出たものは
流れないと言うのか!?
否!!
それらは流れる……――
流れ――
流れて――
雨樋の道から外れた所へ行く!!!
そして、外れた事で示すのだ………――雨樋の無意味さを。
――――――――――――――――――――――――
"蜘蛛宇宙人" は手の中を見た。
ライト、スコップ、タブレット。
"蜘蛛宇宙人":
「これを見ろ……」
"蜘蛛宇宙人" は、手を開いて、物を落とした
――タブレットだけ残して。
そして、残した物だけ片手で掴みなおし、壁に向けた。
弱い光――沈んだ文字。
「これを見ろ!!」
薄暗闇の中を掲げられる――
「continuum hypothesis」。
タブレットと「ω」は
――トンネルの中…
相互に面して立っていた。
照らされた壁は黙していた。
「これが目に入らないのか!?」
<タブレットの文字が記された面>
と
<壁>
との間の距離が、狭まっていく……。
「これが見えるだろう?」
光の中から消えない――
タブレットから削除される事のない――
「continuum hypothesis」。
壁は接近に対して――無力。
沈黙。
「これを見ろ!!」
遂に "蜘蛛宇宙人" は、タブレットを壁に押し付けた
――「ω」の上に。
接触を機に――
白マテリアが歪む、粘着質な音が生まれる
――そして………
壁の上にある
ひとつの――
「ω」
――が歪む。
音は続き……――
被さる様に…――
声がする――
隣りから。
"ω":
「何をした?」
"蜘蛛宇宙人":
「見えないのか?」
"ω":
「見える――わたしには目があるんだから見える。
でも……何をした?」
"蜘蛛宇宙人":
「わかるだろ?――此処にある。
そこに書いてある」
無言が返る。
"蜘蛛宇宙人" は――
「ぐいぐい」
――タブレットを押し付ける。
力の増大………――
"蜘蛛宇宙人":
「ほら、よく見るんだ!!!」
タブレットが
――壁の中……
めり込む。
すると、"声" がした…
――"蜘蛛宇宙人" の目の前
壁の中から。
「いたい……」




