わたしは此処にいる
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賢い者は――
単調に繰り返される事
――その中に<変化>を見出す。
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十字路がないダンジョンにて――
"蜘蛛宇宙人" が進む…
――曲がらずに。
地点(D)を踏む
――そのまま地点(D)を抜け出す。
壁には――
「ω」
――が在る。
"蜘蛛宇宙人" の肩と同じ高さ。
その
――パフスリーブの様に膨張した
<肩の筋肉>と
中心点を同じに……
――平行に。
"蜘蛛宇宙人" が無視して………
――また一歩。
すると "声" が聞こえた
――背後から。
「わたしは此処にいる!」
それは<叫び>に似ていた
――感情が籠った音。
"蜘蛛宇宙人" は振り返らない。
また一歩。
また声がする
――真後ろに。
「わたしを見て!!」
"蜘蛛宇宙人" が
――足の裏で
地をプリントするのをきっかけとして――
声がする。
"ω":
「わたしは見ている!!!」
"ω":
「わたしの隣りが<目>なんだから!!」
"蜘蛛宇宙人" は立ち止まった……――"声" はしない。
一歩踏み出す。
"ω":
「それに聞こえる!――その隣が<耳>だから!!」
"蜘蛛宇宙人" は
――立ち止まったまま…
――横目で
壁を見た
――動きはない。
また一歩……
――頭を動かさず………
――耳を傾けながら。
"ω":
「わたしの前は<鼻>なんだ!!!」
"ω":
「わたしは<鼻>じゃない!!」
"ω":
「いいや――今、<鼻>になった」
"ω":
「それじゃ、わたしは<耳>なのだろうか……?」
"ω":
「違う! わたしが<耳>なんだ!!」
"ω":
「なら、わたしだって…」
"ω":
「お前と一緒にするな!!!」
"ω":
「お前とわたしは同じだ!!」
"ω":
「そうだ! 何様だ!! 同じ形をしている癖に!!!」
"ω":
「あんたなんかにわたしの気持ちはわからない!!」
"ω":
「そうだ――あんたの気持ちなんかわかんない!」
"ω":
「どっちにしたって、みんな同じ!!」
"ω":
「違う!!! わたしとあんたじゃ、名前が違う!!」
"ω":
「あんたの名前は?」
"ω":
「わたしの名前は『1』だ!」
"ω":
「ちょっと、人の真似をするな!!――わたしが『1』だ!!!」
"ω":
「わたしはマネなんかしてない!!
――生まれた時から『1』なんだ!
お前がわたしのマネしてるんだろう!!?」
そして――"蜘蛛宇宙人" が、地点(C)を踏んだ。
"ω":
「お前が『1』?――わたしだって『1』だよ……」
それで終わり――
………ではなかった。
"ω":
「そうだ!!!――みんな『1』なんだ!!」
"蜘蛛宇宙人" には
――最後の台詞が
音量大きく発された様に思われた。
実際、それは、「ω」<ひとつ>の声ではなかった。
同じ性質で同じ量の物を掛け合わせた声。
そしてそれは――
「ω」<全て>が重なって出来た声ではなかった。
幾つかが同時に発生して、まとまった声であり……
――それは、<全て>よりも大分欠けた量であった。
ただ――ひとつの台詞だった。
"蜘蛛宇宙人" が振り返る。
トンネルが在る――空間が在る。
黒が在る…――白に丸く包まれている。
そして――
何もない。
だから "蜘蛛宇宙人" は言う……。
「エト………――エッケ メー」




