わたしは此処にいる
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ダンジョンでは、現実に照らすと不可思議な現象が在る…
――しかし……
それは
――現実では………
<違う形>で現われているだけだ。
同じなのだ。
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壁に出来た凹み
――型の中に満ちる影。
そこは他の白よりも暗く
――控え目。
声は言う……――
「わたしは此処にいる」
"蜘蛛宇宙人" は返事をしなかった…
――ただ対象にライトを当てて
――様子を見ている。
「ω」
――は
――蛤の口の様。
白マテリアを――
「ぼろぼろ……」
――零しながら言う。
"ω":
「わたしは此処にいた」
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テンプレには――テンプレを。
安らぎの端から垂れ流される下品には――軽蔑を。
――――――――――――――――――――――――
"ω":
「あなたと共にいた」
"ω":
「どうして無視するの?」
"ω":
「どうして此処にいるわたしを無視してまで
そんなくだらない事にいつまでも縋っているの?」
"ω":
「何にもならないのに」
"ω":
「現実を見なさい」
"ω":
「わたしは、いつだってあなたの傍にいた」
"ω":
「あなたが歩いていた事を見ていた」
"蜘蛛宇宙人" は
――我知らず…
口を開いていた。
"蜘蛛宇宙人":
「そんで………――何もしない」
自嘲が漏れた。
《何度繰り返すのだろう?》
"蜘蛛宇宙人":
「良いんだよ――それで。
それが――人それぞれの<善>なんだろ?」
"ω":
「わたしを見て」
"蜘蛛宇宙人" は視線を逸らしていた
――地面を見ていた。
"ω":
「わたしを無視しないで
――くだらない事を捨てて」
俯く "蜘蛛宇宙人" は、気付いてた
――"ω" は、身近な人間の "声"。
"ω":
「"わたしたち" の為に」
慈愛の旋律。
それは空間に響くが――"蜘蛛宇宙人" には響かない。
ホローでエンプティな人間には響くが――"蜘蛛宇宙人" にはそうではない。
"蜘蛛宇宙人" は、言葉を返した――
「オレが心動かされるとでも思ったのか?
――なら、間違いだ」
"蜘蛛宇宙人" は
――再び
その焦点を壁に合わせる
――目を細めて。
そこに
「ω」
は在る……
――陰の中。
しかし
――そこに…
目はない。
ひとつもない。
確認した "蜘蛛宇宙人" は、お喋りになる――
「お前が何であり
――どうであろうと……
ご勝手に。
少なくとも、お前は――
<キミ>
――ではない。
俺にとっての――
<キミ>
――じゃないから。
どんな形で現われようと………
――どんな言い方をしようと……
――どんな名前を使おうと…
――何をしようと……
お前が<キミ>になる事はない」
そして "蜘蛛宇宙人" は、スコップとタブレットを拾った。
それから――
<十八>
――に囲まれた
<コンクリートの地点>
――を抜け出した。
言葉――なく。




