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わたしは此処にいる

 ――――――――――――――――――――――――


 その否定を人は


 <幻滅>


 と呼ぶのだろう…

 ――陳腐に。


 しかし、<幻滅>は<終わり>ではない――

 特に……やるべき事がまだ残っている時は。


 後は

 ――ただ………

 目の前にある現象に対処するだけだ。


 ――――――――――――――――――――――――




 "蜘蛛宇宙人" は床に指を伸ばし――


 手袋を拾った。




 「ふさふさ」――




 した毛が

 ――ベクトルとは反対方向に

 撓う。




 そして、在るべき場所に戻る――


 ……儚げ。




 ――――――――――――――――――――――――


 そして<或るべき場所>は、固定された0地点だけではない。


 ――――――――――――――――――――――――




 手袋を装着した "蜘蛛宇宙人" は、来た道を戻ろうとした

 ――別のアプローチを行う為に。




 その時だった。




 「…わかったでしょ?」




 ――と声がする。




 "蜘蛛宇宙人" はライトを向けた。




 誰もいない。




 振り返った。




 誰もいない。




 「そこで終わりなの……

  ――先はないの」




 "蜘蛛宇宙人" は

 ――コンクリートの上

 ――隅から隅まで

 ライトを当てる。




 動く物はない。




 「………わたしを探しているの?

  ――わたしは此処にいる」




 コンクリート地点の外――




 白マテリア




 ――を調べた。




 すると――




 「此処だよ」




 壁に




 「ω」




 が在る

 ――動いている。




 それは同じ場所にある

 ――フィックスト……。




 ただ――動いている。




 揺れている。




 そして

 ――文字の動きに釣られて

 白マテリアの塊ひとつが




 「ぽろ…」




 と剥がれ

 ――壁の上

 転がり落ちた。




 涎の様ではなかった

 ――兎の糞の様だった。




 涙が、

 弾力と熱のあるコリーヌを

 雪国育ちのスキーヤーの様に

 流れ、

 跡として、

 スマホカメラのフラッシュに似た金剛石のラインを

 「グリツァン」

 に残し、

 優しくピュアな "愚かさ" が

 「<素直さ>の現出だ」

 と騙される――

 その様にではない……

 ――掃除を命じられた<幼子>の手にあるチリトリから零れ落ちる様。




 "蜘蛛宇宙人" は踏み出さなかった。




 動く――




 「ω」




 ――は、割れていた。




 文字を構成する一本線が

 ――同じ形のまま………

 上下二本に分かれていた。




 そして、端二つは繋がっていた。




 ちょうど、唇の様に見えた。




 微笑みの様に見えた。




 「ぱくぱく」




 と――




 ダブルな「ω」




 ――が、重なり合う。




 その度に転げ落ちる――周囲マテリア。




 そして、"声" が響く。




 「無駄……

  ――無駄!

  わかったでしょ?




  無駄なの」




 それは柔らかな声

 ――ヘイトリッドを掻き立てない音。




 耳に心地良く…

 ――安眠への誘い。




 ――――――――――――――――――――――――


 頭の中に拡がる――二次元スクリーン。


 そこにプロジェクトされる動画「α」

 ――己の<過去>を部品とし……

 ――背景とする。


 「α」で展開する<人間模様>

 ――チェスのコマの様。


 ある人は、一歩前へ。


 ある人は、斜めへ。


 ある者は、行く道に塞がる誰かを弾く。


 ある者は、遠ざかる。


 そして全てが、台詞を持つ。


 「チェックメイト!!」


 そして………――


 はじめから。


 それは夢ではない。


 作品を見て、

 腹を立てる観察者

 ――苦しむ傍観者。


 そして

 ――誰もが

 <意見>を言う

 ――動画「α」に向かって。


 その意見は届かない。


 そして

 ――誰もが……

 その動画映像は

 <自分の動かしているムーブ>

 である事を知らないものだ。


 ――――――――――――――――――――――――


 "ω" な<声>は明るく…

 ――場に在る照明の光度を上げ……

 動画「α」の映像を薄れさせる。


 そして――第四の壁を見せなくする。


 そして

 ――心地良き明るさの中では

 誰も、その動画を見る事は出来ない。


 機種が古いのだ。


 結果――

 現実が

 "それ" と

 <セイムである>

 と勘違いするのだろう。


 それは

 <アイソモーフィック>

 に過ぎない………。


 ――――――――――――――――――――――――




 "蜘蛛宇宙人" に、驚きはなかった。




 ライトを当て――見ていた。




 目を開けて――見ていた。




 上下瞼の差を

 ――可能な限り

 ――最大限に。



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