わたしは此処にいる
呟きを止めると、"蜘蛛宇宙人" は決断した。
スコップを引き抜き、踏み出す――外へ。
――――――――――――――――――――――――
地点には
「ˇ」
が刻まれた。
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"蜘蛛宇宙人" は、二十三で出来たトンネルを歩く――
「ω」
――を横目に。
そして――次の地点に足を踏み入れる。
変化はない。
そのまま…――休まない。
二十一を数える事で――次の地点。
再び、二十四を数える。
そして――
《先へ……》
十七。
《先へ………》
二十四。
《先へ……》
十三。
二十四。
九。
二十四。
五。
《――にじゅうし…》。
最後の二十四を数えて得た地点で立ち止まる。
トンネルは続いていた
――左へ
――正面へ。
ただ、左の道は長く続いているが――
正面の道は、そうではなかった。
正面に続くトンネルの壁には――
「ω」
――があった。
それでも
――その「徴」は
ただひとつだけであった。
"蜘蛛宇宙人" は
――踏み出し……
「ω」の記された箇所
――その横
に並んだ。
そしてライトを前に向ける。
先には――
空間
――が在った。
トンネルの口――
その高さと幅
――よりも広い領域。
そして――トンネルよりも奥行のない所。
その空間は、白マテリアによって囲まれてはいなかった。
そこは、灰色で覆われていた。
《地点(A)によく似ている………》
"蜘蛛宇宙人" は、コンクリートを両足で踏んだ。
そこは、部屋の様になっていた。
コンクリート製の壁
――天井
――床。
ただ――その場所は、地点(A)に似ていない点も多かった。
第一に、壁にフックがなかった。
そして――
地点の端に<V>の角度がなかった。
そしてそこには、誰もいなかった。
そこは、壁が丸い
――トートロジカルな表現だと
――<縦に立てた>
――円柱の形をした
部屋であった。
天井も――ヴォルト。
"蜘蛛宇宙人" は跪いた。
床に傾斜がある
――漏斗状に。
その傾斜は、地点(A)の床のそれと同じ程度であった。
そして、水気は、なかった。
そこまで調べてから、"蜘蛛宇宙人" は気がついた。
右に道が続いていない事
――左にも
――正面にも。
そこで、道が終わっている事。
――――――――――――――――――――――――
普通の人間であるなら、歩いた先が行き止まりである事を知ると、悲観したり、怒りを発散させたりするのだろう。
普通の人間が書いた普通の物語であるなら、チートでも使って脱出するプロットを立てて、誤魔化すのだろう。
此処を陳腐にさせる事は出来る
――"普通" に。
"普通" は、目の前に立ちはだかる壁に、握りしめた拳を叩き付け、
「……ちくしょう…」
「ちくしょぉぉぉぉぉ!」
――等と言って奥歯を
「ぎり……」
と噛みしめるのだ。
しかし、"蜘蛛宇宙人" は、そんな事はしない。
――――――――――――――――――――――――
ただ――それで終わりではなかった。
"蜘蛛宇宙人" はライトを壁に向ける。
コンクリートの壁が在るだけ。
しかし――
壁の上に小さな陰を見た
――気がした。
ライトを横方向ににスライドさせる。
光が
壁を
――撫でる様に
進む………
――そして壁の上の
――僅かな
――切れ目が屡入った
――直線的
――<蔭>たち
――を露わにしていく。
光の領域が次に移ると――それらはまた、闇の中。
"蜘蛛宇宙人" は立ち上がった。
再び壁に光を当て――ライトを横滑り。
陰はなかった。
見えなかった。
「見間違いだ」と片づける事はできた……
――"蜘蛛宇宙人" は、そうしなかった。
"蜘蛛宇宙人" は
――壁に近づき…
壁を撫でた。
自分の手で
――フェイクファーに包まれたその手で。
そこで知る。
《……壁には突起が在る》




