わたしは此処にいる
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「0」と「1」で物事を計るマシーンは
――数概念だけを含んだ数字的記号
――それ以外の意味領域的可能性を持つ記号が用いられた
高等で
上品な
<数学>の問題を解く事が出来ない。
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"蜘蛛宇宙人" は黒い "穴" の傍に立った
――身体の向きを斜めにして。
まっすぐ前には道がある
――進む事に躊躇はない。
《また<煩わしさ>があるだけだ…》
ただ――
目的がしっかりしていれば……
――<それ>は問題ではない。
"蜘蛛宇宙人" は進んだ。
二十一歩で、前に壁が出来た。
そこを左に折れた。
唯一の道。
進む………
――何も異変はない。
進む……
――攻撃もない。
白に囲まれながら…――
最後に、コンクリートを踏みしめた。
二十四歩であった。
これで
<ダンジョンのミステリー>
その端緒を掴んだ……
――そう思った
――"蜘蛛宇宙人" は。
舞い戻って来た地点(A)<そのもの>に変化は見えない。
素材。
大きさ。
形。
ただ
――そんな
無変化に見える場所には――
"鳥頭" がいた。
"鳥頭" は眠っている様だった。
地に座り
――壁に凭れて
項垂れていた。
嘴を胸に
――抱くようにして
動かなかった。
足はきちんと揃っていた。
目を
「ぱっちり」
開いている。
そして――瞳孔は、光に反応を向けない。
"鳥頭" が腰掛けている場所は、地点(A)の最も端であった。
ちょうど、最初にライトがかけてあった――
フック
――その真下
――その角。
"鳥頭" は何も言わない。
"蜘蛛宇宙人" も何も言わない。
"蜘蛛宇宙人" は、ライトの焦点を、ずらした。
そして………
――新たに光を当てた事で……
"蜘蛛宇宙人" は
――自分が
――最後に
――地点(A)にいた時
為した事を見た。
割れた残骸。
タブレットは――
「ばらばら」
――になっていた。
いくつかのピース
――いくつかのアンカウンタブル・ダスト。
大きさは、等分ではない。
"蜘蛛宇宙人" は腰掛け、欠片の集合に光を当てた。
「うん」とも「すん」とも言わない
――光は戻らない。
ただ、一番大きな欠片
――その表面
に、<文字の影>が見えた。
"蜘蛛宇宙人" は、傍に引き寄せ、ライトを当てる。
それは朧気なレター…――
「continuum hypothesis」。
そのピースには、
「Gottlob」
や
「a stranger」
さらには
「q.e.d.」
が、記されていなかった……
――それら文字
――それらを記したピースは
――"蜘蛛宇宙人" がいくら光を当てようとも
――見つける事は出来ない
――取り戻す事は出来ない。
"蜘蛛宇宙人" が目を逸らすと
――地面に水が溜まっている。
僅かな水――
澄んではいない。
"蜘蛛宇宙人" は
――その手に持っている物を、濡れそうもない場所に置き
――フェイクファーのガンを脱いでから
水をすくった。
口を付けた時、苦みを知った。
水道水や販売されている水に比べて――
泥水の様だった。
しかし――
渇いた者には――
一時の安逸。
吐き出す事はない。
"蜘蛛宇宙人" は貪る様には飲まなかった――
床の水を飲み干さなかった。
そして "蜘蛛宇宙人" が
――適度を得てから
手に埋めていた顔を上げた――
その時であった。




