わたしは此処にいる
"蜘蛛宇宙人" は、スコップを引き寄せる
――同時に "運転手" も
「一歩」
――引き寄せる事となる。
"蜘蛛宇宙人" は柄を掴み――
スコップの向きを逆にした。
同時に起こる事――
"運転手"――
「また一歩」
――その接近は止まらない。
"蜘蛛宇宙人" はスコップを武器としては使う事が出来ない
――"運転手" とは違うのだ。
それに
――たとえ使うつもりになろうとも…
片手はライトで塞がっている。
――――――――――――――――――――――――
スコップを地点から地点に持ち運ぶには、片方で十分だろう……
――それでも………
それを使用する為には、両方が必要である。
――――――――――――――――――――――――
"蜘蛛宇宙人" は
――背を向けて
急ぎ足となる。
トンネルの中――
光の輪が動く。
光は
――動く度に
――ダンジョンの表層である
<白>を剥き出しにする。
丸く
――黒の中から
浮かび上がっては沈む
マテリアの色。
光の動きはランダムだが……
――平均を取れば…
「8」の字の動きだ。
声がトンネルを木霊し――追いかけてくる。
「さぁて……どこまで――持ちこたえられるかな………?」
それは遠い――
"蜘蛛宇宙人"、"運転手" 間の距離は
――その時……
<t>より大きかった。
"蜘蛛宇宙人" は走り…――
行き止まり。
次の地点に到達したのだ。
――――――――――――――――――――――――
そこは、地点(F)に似た場所だ
――そしてそこを再び「地点(F)」とでも呼ぼう。
勿論、その地点は以前と同じではない――
<アポストロフィ>でも付けて、その差異を際立てようかと考えた――
が――
"蜘蛛宇宙人" は
――ダンジョンの中
同時に<違う地点>にいる事が出来ないのだ。
地点(F)という表現で十分だろう…。
――――――――――――――――――――――――
その地点から先は、行けなくなっていた――
前に壁があるのだ。
左に壁があるのだ。
直角に右へ折れる先も<行き止まり>に為っている。
ただ、右の壁だけは
――<前>と<左>のそれとは異なり……
壁龕の様な抉れがあった。
立ち止まり、"蜘蛛宇宙人" は考える。
《この抉れの中(「Ω」)に隠れるか?………》
《……だめだ――すぐに見つかるに決まってる!》
それでも、八方塞がりではない。
唯一…――
右へ斜め四十五度折れた道が在る。
――――――――――――――――――――――――
即ち、地形は以下の様になっているのだ。
(↑×)
地点(A) → 地点(F)(→×)
↙ ↓
↙ 「Ω」
地点(?) (↓×)
――――――――――――――――――――――――
《斜めの道を進むか…?》
"蜘蛛宇宙人" は、手に持ったスコップに目をやった。
――――――――――――――――――――――――
大勢は、復讐劇で溜飲を下げるのだろう。
直ぐに物語へ引き込む様な楽しさ――
勧善懲悪。
しかし、"蜘蛛宇宙人" は
――たとえ落ちようとも…
落とそうとはしない人間である!!
――――――――――――――――――――――――
その時だった!!!
「おい!! ライトを消したって無駄だぞ!」
声に引かれ、"蜘蛛宇宙人" は振り返った。
トンネルの中、大きな人型フィギュアが在る。
円を分かつ直線。
"運転手" はライトを前面に受けて――
引こうとはしない。
「ライトを消して逃げようったって
そう簡単にはいかないからな……」
それが――
「ぽつり」
――とトンネルに響いた。
そしてその人影は
――また一歩
踏み出した。
輪郭がすこし拡大した。
一拍遅れて "蜘蛛宇宙人" は<異変>に気がついた。
状況と言動の不一致。
"蜘蛛宇宙人" は自分の手元を見た。
ライトは灯ったままだった。
"蜘蛛宇宙人" はライトを
――左右に
――小刻みに
揺する………。
ほとばしる光が揺れる。
"運転手" は
――ただ……
踏み出す。
「かくれんぼでもしているつもりか?」
――笑い声が響いた。
その時、"蜘蛛宇宙人" は、はっきりと見た。
直立歩行する "運転手" は、目を開いていた――
そして、何も見てはいない。




