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わたしは此処にいる

 "運転手" は続けて語る――




 「俺は会社で

  ――何度も…

  優秀なヤツが弾かれるのを見てきた。




  見てきたんだ。




  追い出されて……――絶望に叩き落されるのを見てきたんだ。




  あんたの親の手でな!




  あんたを<優しく>抱いた手でな!!




  あるヤツは今でも苦しんでる………

  ――あるヤツは苦しみを終わらせた。




  知らなかっただろ?

  ――全部あんたが<努力>している間に起きた出来事。




  それでもな――俺は別に文句がなかった。




  他人がどうなろうと、知ったこっちゃない。




  でも――




  でもな……――




  あるヤツには、夢が在った。




  そいつにはな…――希望が在った。




  ……他人を押しのけてまで叶えたいと希望するヤツじゃなかった………。




  夢といったって、身の程知らずの傲慢な夢じゃなかった。




  ささやかな幸せ……――ささやかすぎる前進。




  あいつは――




  "あいつ" は…――




  俺は忘れない。




  "あいつ" が道を歩いている時、突然奇声を上げた事。




  そして突然叫ぶのを止めて、歌を歌い出した事。




  学生時代に流行った歌


  ――今は廃れて、誰も歌わない歌。




  "あいつ" は、何も文句を言わなかった――




  お前の親や、上司に関して、一言も零さなかった。




  俺は忘れない。




  "あいつ" は歩きながら――




  ずっと視線を逸らしていた事。




  すべてを見ない様にしていた事。




  俯かない――仰がない。




  左を見ない――右を見ない。




  後ろを見ない。




  前を向き――前さえ見ない。




  見ながら――何も見ようとはしない。




  見えるのに――何も見ようとはしない。




  俺は忘れない。




  そんな "あいつ" を、他のヤツらは気味悪そうに見て行った事。




  通り過ぎた事。




  避けた事。




  そして……――忘れていく事。




  弾かれたヤツらは、結果を出さなかった。




  何も。




  あんたの親の会社が結果を出せない様に仕向けたのだし――




  出しても評価をしないから。




  ああ、評価はあった――




  『あいつ、むかつく………』




  『調子に乗ってんじゃねぇよ!!!』




  『キモイ!!』




  ――ってな!




  そして、みんなで見ないフリをするんだ。




  みんなで、一緒に。




  その "みんな" の代表が、お前の親なんだよ!!




  それが人間の道なんだ




  ――それが人間の道なんだ!!!




  『<出る杭を打つ>社会なんて間違っている!!』




  ――とか

  偉そうに言ってるヤツだって、

  本当に出来るヤツが目の前にいたら

  攻撃するよ。




  無視すんだよ……――




  実際、偉そうにそう言いながら、そうしてたヤツがいたしな。




  そしてそいつは――




  『人間だもん』




  ――とさえ言えば、許されると思っている。




  行動と言動が矛盾している事がわかってないヤツは、わからないまま。




  わかってるヤツは――矛盾そのものを見ないフリする。




  現象とそれに対する自分の解釈

  ――そして行動

  ――そして矛盾

  全てを見ないフリするんだ。




  そして見ないフリをしている内に――忘れるんだ。




  たまに思い出すかもしれない。


  その時にはこう嘯く――




  『俺は悪くない!』




  そんで自分で瞑った目が<開いている>と思い込んでいるんだよ!!




  そして瞑った目で見る――自分の見たい物だけを。




  "あいつ" とは真逆のヤツら。




  そしてそいつらに、選択肢が与えられている…。




  馬鹿がストーリーと人間関係だけを読んで、それを補強するサブクラス情報を全て読み流すのと同じだ。


  それでも――あっっっさい<読んだ気>にはなる。


  そして――妄想が行間を埋めていく。




  今だって、一杯いる――


  自分は動かず、相手が出て行く事こそ『当然だ』と思っている。


  能力から云ったら、そいつが出て行った方がマシな<生産性>が得られるのに、な……」




 此処で "運転手" は

 ――鼻で笑い………

 一息ついた。




 しかし――すぐに語りを続けた。



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