わたしは此処にいる
コンクリートの壁にライトが光を描いた途端――
"蜘蛛宇宙人" の背に密着していた<手>が離れた。
フリーな "蜘蛛宇宙人" が立ち上がり――
間を取り――
動きに沿って、光が動く…――
振り返った。
最後にスポットライトを当てられた対象は
「さ」
と
――地に向かって
屈んだ。
そして――スコップの柄を掴んだ。
白い手袋が見えた
――"蜘蛛宇宙人" のものとは
――同じ色でも……
違う材質。
《あ》
と――
一拍。
"蜘蛛宇宙人" も続けて手を伸ばす………――
手遅れ。
直線を引き寄せながら、"運転手" は
――腰を上げ……
上体を起こした――
スコップを立てて。
フルレングス。
槍の様に見えた。
対峙する二人。
"運転手" の緩んだ口端――
スプリット。
"運転手":
「コンティニュームハイポセシスって
――ほら
あれだろ?
2の<エヌがぐにゃぐにゃにひん曲がった記号>1乗
イコール
その記号2ってやつだろ?」
"蜘蛛宇宙人" は、学問的進展情報を相手に与える事を控えた。
代わりに――
「知ってるじゃないですか」
「そうだよ
――知ってるよ」
だらしない唇。
ただ――
"蜘蛛宇宙人":
「因みに――
あんたがさっき
<エヌのひん曲がった>
と表現した記号は――」
「それは、口にしない
――敢えて。
この国では、別の意味として捉えられる事が多いから、口にしない。
あまりにも印象が良くない」
そう言って――
瞳孔を動かした。
その口――真一文字。
"蜘蛛宇宙人" は黙り込んだ。
ただ、ショックだった様だ…
――「continuum hypothesis」とダンジョンの関係を相手と議論しようとはせず
――此処で働いてる力は「generalized」のものか……
――「ω+1」は妥当か………
――「a」は基数か序数か……
――それらさえ話そうともせず
<以下>の様に切り出したから。
「…どうして頭の悪いフリなんか――」
単純な疑問
――ダンジョンとは何も関係のない話題。
"運転手":
「それが生きるという事なんだよ――お馬鹿さん」
"運転手" は作り笑いをしている。
指先で、スコップの柄をタップした。
「お金持ちのお坊ちゃん――
あんたの親なんだよ
――原因は。
あんたの親なんだよ
――頭が良い奴がキライなのは。
わからなかったのか?
――馬鹿だなぁ」
「ああ、その事なら知っている――」
と "蜘蛛宇宙人" が具体を補完しようとすると――
"運転手" が遮った――
空いた手の平を前に突きだして。
「あんたの親が、頭が良いヤツを憎んでいるんだよ
――だからこそ、隠さなきゃなんなかったんだ。
そんでな……
――だからこそ
あんたの親は誰よりも理解しているんだよ――
世間があんたを憎んでいる事を」




