わたしは此処にいる
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ドゥンケルハイト――ウバール。
ドゥンケルツィファー――「狼狽え」
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"運転手" が話し出す――姿なく。
「ちょっと "ルィェ" …さん?」
「どうしたんですか?」
「何したんですか?」
「<あれ>を割ったんですか?」
「なんで割ったんですか!?」
「ちょっと…… "ルィェ" さん?」
「聞いてますか?」
「聞いてるんですか!!?」
「いるんですか?」
「何も見えない………」
「そこにいるんですか?」
「返事をしてください!!!」
「何で明かりを消したんですか!!?」
「消えたんですか!?」
「エネルギー切れですか!!?」
「壊れたんですか!!!?」
「いるんなら返事をしてください!!」
"蜘蛛宇宙人" は動かなかった――
返事をしなかった。
ただ黒を見つめ……――
白を見つめ…――
考えていた。
可視的な物は、何もない。
物はあるが――フィギュアはない。
そんな闇の中で、動きがあった。
それは
――"蜘蛛宇宙人" の背後。
空を切る音がする。
そして――
「あ!」
水の音。
"蜘蛛宇宙人" は、自分の身体に水が掛かった事を知った。
上から下ではない――
下から上への動き。
それも……
――床から空間へ
――飛沫。
それも…――左から右への動き。
"蜘蛛宇宙人" は、飛沫の大部分を、背に受けた
――放射線状。
そして
――すぐに
――続いて………
何か強い<力>が
踵を打ったのを知った。
細長く――横に滑る物。
"蜘蛛宇宙人" には
――見えずとも……
スコップの柄が当たったのだ
――とわかった。
言う必要など、なかった。
それでも――
"運転手":
「"ルィェ" さん?」
「今――何か蹴ったみたいで…」
「たぶんスコップだと思うんだけど……」
「当たりました?」
「ちょっと………返事をしてください!!」
「どうしたんですか?」
「具合でも悪いんですか?」
「"ルィェ" さん……」
「もしかして、怒ってます?」
「俺…何かしました?」
「何かしたなら言って下さい」
「何を怒っているんですか?」
「言わなきゃわかりません!!!」
「黙っていたら何も伝わりません!!」
台詞。
台詞。
台詞。
台詞。
台詞ばかりの――小説。
そして "それら" は語り――何も語らない。
少し知識を見せつける――少し表現を工夫したつもり。
少し勉強になる――少し楽しむ事が出来る。
感動する。
多大に共感する。
すべて――
わかる程度の+α。
そして――
+βを拒否するのだ。
《α<β》
拒否するだけではない
――攻撃さえする。
攻撃しても潰れない場合は、見ないフリをする。
目を瞑って話し続ける。
塗り潰された黒の中――
ほとばしる――
イラつき。
《αの累積はいつまで経っても、ひとつのβと等号関係にはならない!》
その時、"蜘蛛宇宙人" は肩に<何か>
――オブジェ
が当たったのを知った。
軽く。
続けて、声がする。
「あ、いるじゃないですか!」
それは手だ――
背を撫でまわす。
「ほら、やっぱりいる」
「大丈夫ですか?」
「話せないんですか?」
肩を揉む。
「苦しいんですか?」
「どうしたんですか?」
「大丈夫ですか?」
背を叩く。
最後に発した
「か」――
その母音
――残響。
黒の中――
沈黙
となる。
それを破るのは――
"蜘蛛宇宙人":
「オレは此処にいる――あんたも此処にいる。
それ以上、何をお望みなんですか?」




