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わたしは此処にいる

 "蜘蛛宇宙人" は掘り続けた。




 地点(E)からずっと掘り続けた。




 まっすぐ。




 地点(D)から地点(E)に繋がるトンネル

 ――その先…

 その直線上。




     「F」

     ↑

 「D」→「E」→「?」




 掘る度に、壁が崩れゆく。




 "蜘蛛宇宙人" は

 ――崩れて落ちた物を

 すくい、脇へ投げる

 ――こうして地点(E)から地点(F)に向かうトンネルが埋まっていく。




 "蜘蛛宇宙人" は何処に向かっているのか予想がつかなかった。




 掘っても何も出て来ない。




 白の先には




 ――白がある。




 白が崩れると




 ――白がまた、顔を出す。




 財宝が出てくる見込みはない。




 ご馳走……

 ――<出口>………

 言うまでもない。




 掘っても目の前に在り続ける白い壁は、如何なる兆しも見せなかった。


 それでも "蜘蛛宇宙人" は掘り続けた。




 空腹だった

 ――しかし、掘る以外にする事があろうか?




 あまりにも空腹が深刻化した為、腹がおおきく音を鳴らす

 ――それも……

 ――小刻みに。




 しかし、腹の警告音は

 ――スコップが壁に突き刺さる




 「ˇ」




 ――と空中で衝突し…

 ――かき消える……。




 たとえスコップが突き刺さった後に

 ――タイミングをずらせて

 腹が

 ――個性的に

 ――声高に

 叫んでも――

 足場を失った白マテリアが雪崩れる時に発生する音――

 即ち、




 「パラパラパラ………」




 その裏に隠れてしまう……




 ――それだけだ。




 そして――




 腹の音は、ダンジョンの構成とは何も関係がない。




 何も関係がない!




 実際

 ――腹から出る音を止める為…

 "蜘蛛宇宙人" は、余所見をする事が出来る。




 前を見れば良い。




 脇を見れば良い。




 そこには一時の欲望を満たし、音を止める為に有効な素材がある。




 必要な事は

 ――ただ手を伸ばし

 口にするだけ――




 白マテリアは、エディブルであるのだから。




 「ぱさぱさ」して水分を含むと膨張する――白マテリア。




 味がない。




 噛み応えは在る。




 何にしろ――




 エディブル。




 ダンジョンで無限ループを辿るだけの者は

 ――皆

 白マテリアを食べて小腹を満たしていた

 ――満腹になろうとも、個人を絶対に満たす事のない食事を。




 そして感想を言う……




 ――「うん。まずい」




 ――「まずくはないけど………」




 ――「ちょっと塩っ気が足らないかな……」




 ――「フライパンで炒って、醤油をたらしたら美味しそう」




 ――「キライ!!」




 ――そして、ダンジョンを理解しようともしない。




 ダンジョンにいる時――

 "鳥頭" は、<それ>を食した。

 "骸骨" は、食さなかった。




 そして "鳥頭" は、小腹を満たしながら、無限ループを歩き続けた。

 "骸骨" は、"鳥頭" が現れる前から掘り続け、現れた後も掘っていた。




 これこそが「t」の差であった。




 しかし――




 食べる事は、ダンジョンの構造を<知る>事と何も関係がない。




 何も関係がない。




 "蜘蛛宇宙人" が為す事――


 それこそが




 <ダンジョンを拡張する>




 という事である。




 そしてこれこそ、"人間" が為してきた事だ




 ――そして "人間" の為す事である!!!




 地点(E)から

 ――地点(F)へ行かず

 まっすぐ掘り進める

 ――そして次の地点を探す。


 前に進む度に――

 掘ったばかりの物を別の場所に置き、

 掘ったばかりの場所にライトの光を当て直す。




 その作業は、何年もかかる事である。




 何年かかっても終わらない事である。




 ただ、このダンジョンでは時間が問題にはならない。




 だからこそ――




 だからこそ――




 ある時、"蜘蛛宇宙人" は

 ――それまでやってきた様に

 スコップを壁に刺した。




 すると、壁が崩れた。




 しかし、その崩れ方は

 ――以前の様な…

 ――白が白だけを見せる

 ――軽い崩れ方ではなく……

 より大規模なものだった。




 "蜘蛛宇宙人" は後退りをした。




 しかし――

 いくら大規模でも――

 壁が "蜘蛛宇宙人" に襲い掛かる様な事はなかった。




 よって、"蜘蛛宇宙人" は、後退りをし過ぎなかった。




 壁はただ崩れ――




 崩れたまま。




 そのスカートを見ていた "蜘蛛宇宙人" は、先を見た。




 壁には穴が開いていた。




 黒い穴だった。




 "蜘蛛宇宙人" は先を覗いた。




 穴の向こう側には、スペースが広がっていた。




 その空間に、光は微塵もない。




 ただ――

 その空間は、無限に広がっていた訳ではなかった

 ――それはライトの光を当てる事で分かるのだ。




 そこには闇の黒があったが、

 "蜘蛛宇宙人" が手に持ったライトを使うと

 ――黒の中

 そう遠くない場所に<白>が見えた。




 白マテリアの壁があるのだ。




 白マテリアが、その空間の有限性を保証しているのだ。




 "蜘蛛宇宙人" は、壁にあいた穴を

 ――自身、全身が楽に通る事可能となる程度まで

 スコップで広げる。




 それからその――

 壁の<向こう側の空間>に足を踏み入れた。




 ――――――――――――――――――――――――


 ちょうど同じ頃、地点(G)にて変化が進んでいた。




 前のエピソードで言及した

 ――地点(G)に新たに現れた

 人間の手は、

 "蜘蛛宇宙人" が地点(E)の先を掘り進めていた間も

 穴を拡張させ続けていた。




 そして遂に――




 手が穴の中に吸い込まれ――




 手の代わりに――




 顔を出した。




 そして呟く――




 「此処は………ドコ……だ…?」




 それは――


 誰も

 何も見る事の出来ない

 暗闇の中での出来事。


 ――――――――――――――――――――――――



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