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わたしは此処にいる

 三度目に同じ現象が起こった時、"鳥頭" は




 「かん! かん!!」




 に怒っていた。




 地点(B)にて

 ――スコップに縋りながら

 ――蹲り…

 腹を立てていた。




 ただ、腹だけを立てていた。




 しかし――




 真暗である事に変わりはない。




 そして

 ――地点(G)の方角から……

 生きた "骸骨" が

 ――ライトを持って

 やって来た時だった。




 "鳥頭" は手に持っていたスコップで、相手に襲い掛かった。




 現象の理由が――




 「絶対に」




 ――相手に在ると信じていた。




 信じていた。




 現象が、相手の姦計によるものだと信じていた。




 信じていた。




 確認なく




 ――確信していた。




 "鳥頭" にとって、


 <ダンジョンの構造がどうであるか?>


 は、どうでも良い事なのだ………

 ――それにも関わらず

 ――出口を求めるのだ。




 <出口>を求めるのだ。




 「大丈夫か?」




 と

 ――地点(G)から歩いてきた

 "骸骨" が言った。


 そして――

 蹲り

 ――項垂れ

 ――縮こまった

 "鳥頭" の肩に、その手を置いた。




 優しく、置いた。




 "鳥頭" は、それを振り払った――




 強く。




 強く。




 "骸骨" はバランスを崩し……

 ――壁に手を突き…

 ――身体を反転させてから……

 倒れた。




 仰向けに倒れた。




 ライトが手から離れた。




 そして――




 遠くへ飛んだ。




 地面に転がり――




 止まったライトは、二人とは別方向を照らしていた。




 暗闇の中、




 「舐めやがって!!!」




 ――"鳥頭" は叫んでいた。




 「俺の事、見下しやがって!!」




 ――そして柄を短く持ったスコップを振り下ろしていた。




 鈍い音がした。




 木霊が在った。




 光の向く方向が変わった時、"鳥頭" には相手が見えた。




 俯いたその人は、ライトを片手に持っていた。




 空いた方の手を、頭に当てていた。




 手の下から、<赤>が流れているのが見えた。




 何も言わなかった。




 項垂れていた "人間" が上を向いた。




 <赤>の傍に、目が在った。




 目が在った。




 たった二つの目。




 何の変哲もない眼。




 そして "鳥頭" は

 ――それと

 自分の目を、

 会わせ続ける事が出来なかった。




 直視する事の出来ない物――




 感情のない目。




 無関係の他人が見たら何でもない物だが、

 関係の渦の中にいる者には、別の姿に映る目。




 それは幼子が

 <暗闇の中にいるかもしれない………>

 と信じる妖怪の様な物だ。




 "鳥頭" は叫び声を上げながら、再びスコップで攻撃した。




 光が飛んだ。




 スコップは空を切った。




 ライトの光が遠ざかって行く。




 光の傍――

 微かに――

 痛手を負った "人間" が逃げる姿が見える――




 背中が見える。




 そしてそれが……




 ――小さくなるのが見えた。




 "鳥頭" は、後を追わなかった

 ――物理的には。




 ただ、逃げる "人間" の背中に向かって――

 罵りの言葉を――

 投げかけていた――

 

 それも、大量に。




 少ない知識の中から振り絞っても僅かでしかない語彙を尽くして、相手を追いかけた。




 言葉が相手を捕えたかどうはわからなかった。




 スコップを握るその手は




 「ぶるぶる」




 ――震えていた。




 ふるえていた。




 「お前は呪われている!」




 「あっちは呪われているんだ!!」




 呪いの言葉で、罵りは終わった。




 そして、辺りは真暗になった。




 何も見えない――完璧な黒。




 点ひとつ見えなくなった――黒以外。




 暫く、"鳥頭" はそこに立っていた。




 何も変化はない。




 暫くして、歩き始めた。




 地点(B)から左に折れ、

 地点(C)から左に折れ、

 地点(D)から左に折れ、

 地点(G)から左に折れる。




 それを繰り返した――




 暗闇の中でも、歩く事だけは出来たから。




 見えずとも、動く事は出来るものだ。




 わからずとも、意見だけは吐けるものだ。




 「無駄だ――」




 と。




 道中、"人間" に出会わなかった。




 そして――


 二度と会う事はない。




 そして――


 光を見る事はなかった。




 物を見る事はなかった。




 "鳥頭" は歩きながら、呟く――




 返事はない。




 歩きながら叫ぶ――




 返事はない。




 変化はない。




 ダンジョンはそこに在る。




 ある時、疲れ切り、眠った。




 目覚めると――




 "鳥頭" は、自分が動けない事を知った。


 ――――――――――――――――――――――――



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