わたしは此処にいる
さて、ライトとスコップを手に、"蜘蛛宇宙人" は地点(E)に辿りついた。
明るく照らされた地点(E)は――以前と様子が大分変わっていた。
白マテリア。
そこに、赤はない。
"足" は在った
――しかし、肉は付いていなかった。
そこには、骨があった。
そして骨は
――白マテリアの中
半分埋まっていた。
"蜘蛛宇宙人" は壁を見た。
以前見えた二つの円
――切断面
は、なくなっていた。
地点(E)に於いて<見える>すべての変化は、"蜘蛛宇宙人" がトンネル(D)―(E)を歩いている間に起きた訳ではなかった。
地点(E)にて、骨は動かない。
何も動かない。
"蜘蛛宇宙人" も動かず――
動かない物達を見つめていた。
骨は
――まるで何年もそこで
――その状態で
――在り続けていたかの様に
――静かに
在った。
"蜘蛛宇宙人" は骨を調べなかった。
骨を見ていた "蜘蛛宇宙人" は前を向いた。
ライトを向ける。
そこには壁があった。
道を左に曲がれば、地点(F)に向かう事が出来る…――
そして無限ループを歩く事が出来る……。
ただ――
無限ループをただ歩き続ける事は
――規模が違うだけで………
"鳥頭" がしてきた事と同じ事。
"蜘蛛宇宙人" は "鳥頭" と同じ事はしないのだ。
"蜘蛛宇宙人" はライトを地面に置いた。
そして、スコップを壁に刺した。
「ˇ!」
壁の一部は、やさしく崩れた。
そして "蜘蛛宇宙人" は
一度ですくう事が出来る分だけすくい、
すくった分を投げた
――トンネル(E)-(F)に向かって。
そして同じ事を繰り返す。
この繰り返しは無限ループではない。
結果的に
――大勢に
無限ループに見えようとも……――
"蜘蛛宇宙人" が行っている事は
無限ループではない――
断じて。
結果がついて来なくとも、それは<前進>である。
利益が出ずとも、それは<生産的行為>である。
そして掘り続け…――
"蜘蛛宇宙人" は次の地点に到達する。
しかし……――
掘って
――その場所に
到着するまで――
まだ時間があるから…――
別の話を入れよう。
――――――――――――――――――――――――
生前、"骸骨" と "鳥頭" はダンジョンの中で出会った
(この "骸骨" とは、
地点(B)でタブレットと共に横たわっていた
<あれ>の事である)。
"骸骨" に肉が付いていた頃、二人は互いを知っていた
――ダンジョンに来るずっと前。
ダンジョン以前は、特に仲が良かった訳ではなかった。
ただ、世界に相手が存在する事を知っていた
――その目で確認し
――その口から漏れる言葉で確認していた。
そんな二人はダンジョンの中で互いの存在を認めた。
はじめて。
そして――
一緒に歩き始めた。
勿論、トンネルは二人が横に並んで歩くに十分な幅はない。
よって、<一緒に歩く>と云っても、
必ず
どちらかが先であり、
どちらかが後であった。
二人の差を「t」としよう。
二人はダンジョンの中、何度も同じ道を辿り、探した
――何か新しい事を探した。
"鳥頭" は、<出口>を探していた。
肉が付いていた "骸骨" は、<先>を探していた。
道を掘り進めるのはいつも "骸骨" の方であった。
"鳥頭" は、後ろで見ているだけであった。
"骸骨" は、文句を言わなかった。
"鳥頭" は、いつも腹を立てていた。
"骸骨" は相手に助けを乞う事はなく……
――ただ掘っていた。
それを "鳥頭" は、ただ見ていた――
"鳥頭" は、見ている事を<努力>だと思い込んでいた。
何度も――
"鳥頭" は<出口>が見つからない事を嘆き、
"骸骨" は<先>が見つかる度に、その<先>を探した。
ある時、二人がトンネルを一緒に歩いている時、
「ふ」
と "鳥頭" が視線を外した。
次の瞬間。
前にいた筈の "骸骨" が消えていた
――忽然と姿を消していた。
"鳥頭" は呼びかけた。
「0I」
トンネルに声が木霊する――
木霊する――
返事はない。
だから、"鳥頭" は叫んだ。
より大きな木霊が在り――
返事はない。
"鳥頭" は必死になって探した。
傍にあれば、別に大切ではない――
傍にないと、何も出来ない。
トンネルの中を徘徊した――
ひとりで。
そして
――元の場所に戻った。
すると、探していた人物がいた。
そして、その人は言った――
「何処に行っていた?――突然いなくなるなんて…」




