わたしは此処にいる
そして "蜘蛛宇宙人" は地点(A)に戻ってきた。
23歩目であった。
"蜘蛛宇宙人" は<デッドエンド>に触れていた
――その手で…
――その足で……。
最早、その場所に水分を感じなかった。
<デッドエンド>は、そこに、固く在った。
白マテリアは
――触れると………
手がめり込む様な柔らかさを持っていた。
水を含もうが含むまいが、そうであった。
対して<デッドエンド>は、
――触れても崩れない
堅さが在った。
水を弾く、コンクリートの冷淡さ。
それは在り続けた。
それは、在り続けた。
"蜘蛛宇宙人" はタブレットを床に置いた。
何も音はしない。
タブレットに光は戻らない。
真暗。
"蜘蛛宇宙人" は、スコップを両手で握った。
何も変化はない。
"蜘蛛宇宙人" が変化する――
スペードの先を<デッドエンド>に当てたのだ。
場所に――
「かぁん!」
――と独逸語の響きがあり
――振動。
それは音が消えても残り……――
"蜘蛛宇宙人" は、手に在る痺れを握りしめた。
手袋の中の方は、痺れが早く消えた。
ただ、裸の方も、すぐに続いた。
"蜘蛛宇宙人" は、壁に手で触れてみた。
スコップが壁に突き刺さった様子はなく…――
「ˇ」
が刻まれた手ごたえが
――闇の中……
なかった。
二度。
三度。
"蜘蛛宇宙人" は当ててみた。
音がして――音が消える。
結果は同じであった。
"蜘蛛宇宙人" は暫く立っていた
――<デッドエンド>に立っていた。
そして
――<デッドエンド>に取り組むのを止め
最後まで残していた事を為そうと、歩き始めるのだ
――タブレットを残して。
歩く。
「にじゅうさん………」
を数え上げ、"蜘蛛宇宙人" は、自分が地点(B)にいると予想した。
それは間違ってはいない。
ただ、何も見えないのだ。
何も聞こえないのだ。
ダンジョンシステムが
――単純に……
――自動的に…
リカーシブなら、
奥から
――また
悲鳴が聞こえてもおかしくはないだろう。
「マーマー」
が
――再び
聞こえてきても、おかしくはない。
絶対的に
――常に
リカーシブでだけあるならば。
しかし、それらは、なかった。
二十三歩目から再び、
「いち……」
と "蜘蛛宇宙人" は数え始める。
そして、二歩目をすぐに続けるのだ――
同時に
――勿論
「ˇ」
――を刻みながら。
黒の中、見えない形で、刻みながら。
歩くという同じプロセス。
ただ、地点(B)からの歩みは、明らかに以前の物とは異なっていた。
地点(A)から地点(B)の間を歩いている時にはなかった緊張と注意深さが
――トンネルの中
――黒の中
に在り………――
それは歩き続ける "蜘蛛宇宙人" のフィギュアから噴出する物だった。
"蜘蛛宇宙人" がトンネルの半分のところまで来た時だった――
「いるのか?……」
と声をかけた。
音は震えて聞こえた。
返事はない。
また一歩。
「いるのか?…」
震えの波は浅い。
返事はない。
とうとう
《にじゅうさん……》
を踏んだ。
"蜘蛛宇宙人" はそこに立っていた――
「じ」
と立っていた。
音はない。
風はない。
動きの気配もない。
だから
――口内に溜まった唾を飲み込み………
《にじゅうし》
――を踏んだ。
何も起こらなかった。
「いないのか?」
何も起こらなかった。
静けさの中、"蜘蛛宇宙人" は前のめりになった。
手が壁に付いた。
壁は続いている。
しかし、右に道は伸びていない――行き止まり。
左にだけ、壁は続いている。
地点(C)だ。
その時だった。
「がった」
と "蜘蛛宇宙人" は爪先で何かを蹴った。
驚き――
動作を止めた。
そして……――
止まっていた。
何も起こらない。
足を動かし――蹴った物を探る。
また爪先に<何か>が当たった。
<それ>は動かない。
そして<それ>は、大きくない物…。
"蜘蛛宇宙人" は闇の中で腰を屈め、地面を這った。
<それ>を手で掴んだ。
それは棒状の物であった。
そして、それが何かわかった時
――"蜘蛛宇宙人" の指が適切な場所に触れ……
<それ>は、それが存在する上で求められている役割を演じた。
光が生まれた。
ライトの光はあまりにも明るく
――黒の中から
姿を現わした "蜘蛛宇宙人" は、目を細めた
――すぐに、また広げた。
そして、久しぶりのライトを使い、辺りを照らしてみた。
以前とあまり変わらない。
トンネルの中――白マテリア。
ずっと
――丸く
――白く
――続く
壁。
そして白い円の中に埋まった様に見える黒。
遠く
――先
を表す闇。
道には、足跡が在った。
壁には
「ω」
が見えた。
そして、"蜘蛛宇宙人" は
「Ω」
にライトを当てた。
そして――知った。




