わたしは此処にいる
優れた者に腹を立てるのなら、パソコンを使うのを止めた方が良い
――優れた者の<おかげ>で利用出来ているのだから。
優れた者に腹を立てるのなら、携帯電話を解約した方が良い
――優れた者の<おかげ>で利用出来ているのだから。
サイトだってそう。
それがわかっていないから、腹が立つのだ
――みんな、おんなじ。
みんな、おんなじ。
壁から足が出て――バタつきを続けている。
それは泳法のバタフライとは違っていた
――が…
その "効果" があった。
"蜘蛛宇宙人" は話しかけた――
「(壁から)出たいのか?」
急にバタつきが止まった。
そして、足は揃った。
揃ったまま――動かない。
だから、"蜘蛛宇宙人" は、余計なお世話をした
――壁から足を抜こうとしたのだ。
足は、地点(E)スペースで
――横に
直線を描いていた。
"蜘蛛宇宙人" は先ず、
タブレットを地面に置き、
スコップを突き刺した。
そして
――両手が空くと
"足" の脹脛を掴んだ。
途端!
蹴られた。
手首を
「ぴしゃり!!」
と――
足の甲で。
上から――蠅叩きの調子で。
"蜘蛛宇宙人" は手袋を嵌めた手で、ストロークの在った場所を押さえた。
痛くはない。
強く接触した印象が在る
――それでも…
耐えられずに悶え、呻き声を上げる程の激痛ではなかった。
"蜘蛛宇宙人" は慣れていたのだ
――行為の種類は異なって見えても
――それまで為されてきた事と
――同じである。
目の前、足はまっすぐ伸びたまま。
足の先は、鉤状だ。
そして二度目――
踝を掴むと
――"足" は
――今度は……
何もしなかった。
ただ、爪先が
「ぴぃん!!!」
と伸びていた。
両踝を合わせ、"蜘蛛宇宙人" は腋に挟む。
引っ張った。
びくともしない。
それでも引いた。
全然抜けない。
足は大人しく………――されるがまま。
ただ――緊張していた。
爪先が――
「ぴぃん!!」
と直線的。
何度繰り返しても、壁から "足" は抜けない。
そこで、
《スコップの先を壁に入れて、白マテリアを切り崩そうか?》
そこで、壁に
「ˇ」
が入った時!
突然、壁から生えた "足" が弛緩した
――そのまま
「ずるり!!」
と "足" が動いた
――"蜘蛛宇宙人" に向かって、前に。
そして、二本 "足" が壁から抜けた……
――折れる様に
――もげる様に。
そして――落ちた。
タブレットが動き――
光が動き――
地面を転がる音。
"蜘蛛宇宙人" は、仄暗い空間の中で、赤が飛ぶのを見た。
そして、空間は赤を消し――
黒を濃くした。
"蜘蛛宇宙人" は
――それまでずっと続いていた
――故に慣れた
<黒>――
それに近い状態の中にいた。
――――――――――――――――――――――――
"足" が壁から分離した時、"足" には <'>記号が付く…
――数学的には。
――――――――――――――――――――――――
タブレットは地面に伏していた
――光が
――地面の上
――タブレットの形に縁取って在る。
"蜘蛛宇宙人" は取った。
そして、光をシーンに当てた。
赤が広がっていた。
赤は、白マテリアを刻々と染め続けている。
そして赤は、"足" の太腿から出ていた。
"蜘蛛宇宙人" は、タブレットを壁に向ける
――足が生えていた場所に向ける。
そこには、二つの赤い点があった
――ただ、完全な丸ではなかった。
赤が
――同じ色の
――涎の様な
染みを
――下に向かって
長くしていたから。
そしてその時 "蜘蛛宇宙人" はその色が自分に掛かっている事を知った。
拭ったが
――伸びるだけで
落ちなかった。
勿論 "蜘蛛宇宙人" は驚いていた――
それまで
――実験こそ
――何度も
――行っていたが……
<人間の太腿>
その断面を
――生で
見た事がなかったから。
壁にある赤い二つの点は、動いていた。
点の位置が動いていた訳ではない
――点の内部が動き続けていた。
元の形を保持したまま、円周を更新し続けていた。
色の分布は
――壁の上………
拡がっていたが、二つの点はひとつになる事がなかった。
"蜘蛛宇宙人" は下を見る。
"足" は地面に転がっていた
――二本とも。
動きはしない
――痙攣もない。
ただ、赤の領域を拡大させていた
――意志なく。
――――――――――――――――――――――――
助けようにも助けられない
――それに……
――助けようとも無駄である。
足が壁から離れたという事は
――ダンジョンの中…
上半身が活動を停止した
という事なのだ。
そして後は
――それぞれ
骨になるだけ。
白を取り戻すだけ。
人はそう言うのだろう。
痛みが在ったかもしれない…
――悩みが在ったかもしれない……。
しかし、そんな事は詳しく記さない
――どうせまた、"鳥頭" は現れるのだから。
名前を変えても、現れるのだ。
そしてそんな "鳥頭" の人生は、ダンジョンシステムと何も関係がない。
――――――――――――――――――――――――
"蜘蛛宇宙人" は同じ場所に立ち、目の前の様子をただ見ていた。
場所に動きはない
――変化がある。
場所は変化を続けていた。
そして、タブレットも変化を続けていた
――"蜘蛛宇宙人" が気づかぬ間に。
ただ、気付く時が来る。
"蜘蛛宇宙人" は、目の前の光景が見え難くなっている様に思った。
タブレットを見ると、変化はない。
「てんから上へ 24………」
と書かれたラインはそこに在るのだ
――ただ、ラインを見せる光の量は明らかに減っていた。
そして "蜘蛛宇宙人" が見ている間――
突然、
文字が消えた。
文字が黒の中に沈んだのだ。
タブレットは沈黙し――
地点(E)は絶対的暗闇だけとなった。
そこには白が在る。
そこには赤が在る。
しかし――ただの黒。
そこにはスコップが在る
そこにはタブレットが在る。
そこには "足" が在る。
そこには "蜘蛛宇宙人" が在る。
しかし――見える物はただの黒。
凹凸のない、ただの<黒>。
そして "蜘蛛宇宙人" は
――そんな中……
――再び…
歩き出す。
再び――
何も見えない空間をアイソモルフィック・マッピングする。
此処まで来れば、"わからない者" はあらかた消えた筈。
どうせ読めないのだ。
意見があっても
――読んでいませんから。
苦しむ者は読むべきではない
――最初から、<対象>ではないのだから。




