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わたしは此処にいる

 ただ――

 "蜘蛛宇宙人" が、四十六で出来た道をすべて戻る必要はなかった

 ――途中で、視界が変化したから。




 変化に気付き――




 ずっと歩いていた "蜘蛛宇宙人" は、歩を止めていた。




 一筋の光だ




 ――それも、下からやって来る。




 見えない事に慣れていた "蜘蛛宇宙人" は最初、何が起きたか分からなかった。




 ただ、立っていた。




 それは

 ずっと続いていた状態

 ――同じ黒が続いていた常態

 の中に生まれた

 ――ひとつの

 ――ただの

 異変だった。




 最初、"蜘蛛宇宙人" は、




 《地面が光ったのか?》




 と思った――




 《暗闇の中で白マテリアが浮かび上がったのか?》




 ――と勘違いした。




 ただ

 ――長時間を要さずに

 その<異変>は "蜘蛛宇宙人" が胸元で抱くタブレットから起こっているとわかり、"蜘蛛宇宙人" は胸元を見た

 ――そして

 ――胸に押し付けていた物を遠ざけた。




 タブレットの面に光が立っていた

 ――淡い光。




 そして、光る表面に、文字が見えた。




 そこには、以下の様に、記されていた。




 ――――――――――――――――――――――――


 「てんから上へ 24

  せんを描いて 1となる


  てんから上へ 24

  せんを描いて 2が出来る


  てんから上へ 24

  せんを描いて 3となる


  てんから上へ 24

  4とは為らず 2に戻る


  てんから上へ 24

  3とは為らず 2のままで


  てんから上へ 24

  1を跳び越し 0となる


  ひとつが増えるとひとつが減る

  ひとつが減るとひとつが増える」


 ――――――――――――――――――――――――




 以上は、"蜘蛛宇宙人" の母国語で、書かれていた。




 以前あった

 ――象形文字の

 文字列は消えていた。




 上の文字は――上書きしたかの様にある。




 そこに在る。




 どちらにしろ、数学的内容である事に変わりはない。




 因みに

 ヘッダーとフッターを彩る――


 「Gottlob」


 と


 「a stranger」


 と


 「q. e. d.」


 それらは

 ――光の中…

 残されたままだった。




 "蜘蛛宇宙人" は文字を読み終えると、

 読む為にタブレットに近づけていた自分の顔を遠ざけた

 ――顔のせいで上から封じられ

 ――押し留められていた

 ――タブレットの光が

 ――黒い空間に拡散する……

 ――自由に。




 極めて弱く。




 弱く。




 それによって

 ――さらに縦であったそれを傾ける事で…

 "蜘蛛宇宙人" は<見る>事が出来た――




 久しぶりに………――




 トンネルを……――




 白マテリアの白さを…――




 手袋の白さを……。




 さらに見る事が出来た。




 トンネルに突起的異物がある

 ――"蜘蛛宇宙人" から見て左手に

 ――白マテリアの中………

 ――白マテリアとは異なる物……

 ――それでも

 ――白い物。




 それは骸骨である

 ――最初にトンネルを通過した時、目撃した<骸骨>である。




 しかし、以前見た時と、様子が変わっていた

 ――それは

 ――ライトの光と

 ――タブレットから漏れる光の量が

 ――異なるからではない。




 頭蓋骨が欠けていた。




 頭蓋骨がなくなった訳ではない。




 前頭が大きく窪み、穴が開いていた




 ――真っ黒な穴。




 穴は、目のソケットと繋がっていた。




 "蜘蛛宇宙人" が最初に目撃した時にはなかった

 ――大きな

 穴だった。


 ――――――――――――――――――――――――


 新たに穴のあいた<それ>は、

 "鳥頭" の隣を

 ――前を…

 ずっと歩いていた……

 ――ずっと

 ――<いっしょに>………

 ――歩いていた

 骸骨である。


 骸骨であり……――元・人間である。


 そしてそれは――"鳥頭" に終わらされた人間。


 終わらされた後――ただ黙り込んだ者。


 そして骨となった後も攻撃される<人間>である。


 それは

 ――"蜘蛛宇宙人" がやって来るまで

 ダンジョンを掘り進めてきた人間であった。


 ひとりで、ダンジョンを拡張させた人間であった

 ――"蜘蛛宇宙人" がやって来るまで

 ――ずっと。


 そしてその人は――道化ではなかった。


 <道化>ではなかった。


 大勢は言うだろう――


 「骸骨など、皆同じ。

  塵に為れば皆同じ。

  ヒトは平等に肉を失くす」


 ――少なくとも、その骸は<道化>ではなかった。


 人を笑わせなかったのだ。


 ただ掘り進めただけだ


 ――ただ掘り進めただけだ。


 そんな骸骨を見た時、あわれ "鳥頭" は言うのだ――


 「俺は悪くない!」


 ――そして無限ループを歩き続けるのだ。


 ――――――――――――――――――――――――


 "蜘蛛宇宙人" は骸骨を持ったりはしない

 ――頭蓋骨を持ち、人生を儚んだりしない。


 悲しんだりはしない。


 "蜘蛛宇宙人" はしない――


 骸骨の目の陥没

 ――ソケット…

 その奥を覗きこみ、<真理>を得ようなどとはしない

 ――ただ黒く拡がる目の前を

 ――想像で

 ――勝手に

 ――埋めたてる作業をしないのだ!!


 ――――――――――――――――――――――――


 そんな骸骨がある地点(B)は、地点(C)からちょうど24歩目に当たる場所であった。



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