わたしは此処にいる
"蜘蛛宇宙人" には光源が見えない
――それでも「コイツ」という指示語が何を対象としているか
――予想がついた。
そして――発話者と「コイツ」との関係も。
"蜘蛛宇宙人" は、あまり発話者の発話
――その意味
を考えない
――聞こえた物は、単なる<陰謀論者のレトリック>だ
――そして…
――その……
――<テンプレ>だ。
"蜘蛛宇宙人" は
――トンネルの中
光を直に浴びて立っていた。
しばらく立っていた。
相手はやって来なかった。
光だけが来ていた。
先程、相手は言葉による攻撃を仕掛けてきた
――しかし、地点(B)から先に進もうとはしない。
いつまで経っても。
それは、仕方のない事でもある………
――フィジカルでも、そう
――マインドでも、そう。
言葉だけがトンネルを木霊し……――動いていた。
間があった。
遂に "蜘蛛宇宙人" は背を向けた。
「待て!」
と声が引き留めようとする。
「待て!!」
背に光が当たる
――温かくはない
――冷たくもない。
「待てって!!!」
"蜘蛛宇宙人" はそれでも歩き出す
――スコップを、片手に
――タブレットと手袋を、片手に。
「待てって言ってんだろ!!」
「さくり!」
と "蜘蛛宇宙人" がスコップを強く地に刺した後――
一瞬だけ――
静寂が生まれていた――
時が止まったかの様に。
そして――
「ˇ」
――が残る…
――形を
――「くっきり」
――残したりはしないが……。
"蜘蛛宇宙人" の前には道が続いて見えた
――闇が続いて見えた。
丸い暗闇。
白に包まれた黒。
「そっちへ行くな!!」
とまた声が追いかけてきた。
"蜘蛛宇宙人" は振り返らない。
円から "蜘蛛宇宙人" の表面(片面)全体をマイナスした分の光が
――"蜘蛛宇宙人" の視界の中
揺れ動いていた。
それは蝋燭先の炎の様な――………頼りなさ。
「お前の為を思って言ってるんだ!!!」
それが最後だった
――その時、追いかけてきた、最後であった。
"蜘蛛宇宙人" が地点(A)に辿りつく頃には、光はほとんどなくなっていた。
周囲は暗い。
しかし、少しは
――地点(B)にて発射され
辿りついたものがあったのだろう……
――周囲は…
――完全な黒では……
――なかったから。
"蜘蛛宇宙人" は、地点(A)に立つ
――その先に続くトンネルを見る。
真暗。
光が微塵もない闇。
その時
――"蜘蛛宇宙人" は
「ふ」
と胸元を見た。
タブレットがある――光が消えかかっている………。
<文字>が、黒の中、沈み込んでいた。
――――――――――――――――――――――――
世の中には「序破急」という三分割システムがある
――そのモデルをアイディアの基礎として使って考えると……
多くの<読まない者>は「序」「急」だけを見て、解釈する――
わかった気になる。
その様に
――楽に
物事を済まそうとする者の為に、物事を簡単にしてやる必要はない。
だから、此処に
――始めと終わりではない
――この場所に
このダンジョンを解く鍵を
――ひとつ
置いておこう。
情報が足らない者の為に。
知ろうと努力する者の為に。
探そうと苦戦する者の為に。
<簡単すぎる>事ではあるが…。
"骸骨" が抱いていた
――そして
タブレットに映っていた<文字列>に関してだが、
あれは数学的プロセスのひとつ
<自乗>
という物を説明している
――それも、簡単に。
数学的自乗構造を別シンボルで変換して利用したモデルは
――基本的に
――多くの場合
――たとえば……
「お, お, お, お, お, お, お, お, お,
お, お, お, お, お, お, お, お, お,
お, お, お, お, お, お, お, お, お,
お, お, お, お, お, お, お, お, お,
お, お, お, お, お, お, お, お, お,
お, お, お, お, お, お, お, お, お,
お, お, お, お, お, お, お, お, お,
お, お, お, お, お, お, お, お, お,
お, お, お, お, お, お, お, お, お,」
で理解されているであろう(「上の「お」に意味はない――「x」でも「y」でも「z」でも構わない)。
しかし、
――誰もが知っている様に………
上記<「お」だけが一辺倒に繰り返されるモデル>では、
自乗と根計算の複雑化に伴い、不確定要素が生まれてくるのだ
――そして
――<どこから食い違っていくのか?>
――<どこで計算が合わなくなるか?>
――が見え難くなる。
あの
――象形文字で書かれ
――「おるのこりんたろう」という九文字に直して残した
タブレットに記された文字列モデルは、<それ>を避ける為のものだ。
計算時、自乗プロセスを通過すると自動的に発生する<それ>。
あの「おるのこりんたろう」文字列構造を念頭に置けば、このダンジョンシステムは不可思議でもなんともない。
不可思議でも何でもない。
ここまでやっても理解出来ない者はただ言うだろう――
「意味わかんない!!」
「つまんない!」
「呪われている!!」
「陰謀だ!!!」
――そして続く結果はわかっている。
今迄だってそうだった……――教えてやっても、腹を立てる。
これからだってそう…――
人はただ、腹を立てるのだ。
――――――――――――――――――――――――
タブレットに灯る光の具合を目で確認してから、
"蜘蛛宇宙人" は手袋を見る――びしょ濡れ。
表面を覆っているフェイクファーは倒れていた
――水を含み
――立つ事はない。
"蜘蛛宇宙人" はスコップとタブレットを立てかけた。
<デッドエンド>に立てかけた。
両手が自由になってから、手袋を搾る
――搾る。
水気を少なくしてから、"蜘蛛宇宙人" は手袋を着用した。
中はまだ濡れていた
――しかし、それは濡れていても
――"蜘蛛宇宙人" の手の甲の文字を消す事はないのだ。
その時だった。
タブレットに点っていた光が
「ぱち」
と消えた。
真暗。
その時はもう
――いつの間にか……
地点(B)から伸びていたライトの光
――その裾
も消えていたのだ………。
だから――真暗。
そこは――真暗。
"鳥頭" も動き出した様だ。
"蜘蛛宇宙人" は手探りでタブレットとスコップを手に入れると、手探りで地点(F)に向かうトンネルを探し当て、そして歩き出した。




