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わたしは此処にいる

 花の季節は終わり――散るだけ。

 地点(B)に到達しても "蜘蛛宇宙人" は足を止めない

 ――すぐに右折する。




 真暗。




 右折するや否や

 ――"蜘蛛宇宙人" は

 ――グライヒ…

 地へ座りこんだ。


 地点(G)のある方角に、その背を向けていた。




 そこは地点(A)と地点(B)の間だった。


 そして

 ――そこにいる

 "蜘蛛宇宙人" の目には、何も見えない。




 何も見えない。




 自分すら、見えない。




 真暗が見えるだけ。




 喘ぐ。




 喘ぐ。




 真暗の中、"蜘蛛宇宙人" は自分の

 ――声にもならない

 ――言葉にもならない

 <音>だけを聞く――




 はっきりと。




 そして息を飲む。




 息は――




 途切れ……――




 途切れ………。




 その<区切り>に……――何も声は挿入されない。


 耳を澄ませど…――足音は聞こえない。




 待つ "蜘蛛宇宙人" の臀部は湿気ていた。


 膝も湿気ていた。




 指先を揉むと、




 「ぼろぼろ……」




 とマテリアが零れる………

 ――しかし、その白は不可視のまま。




 真暗。




 "蜘蛛宇宙人" が縋る事が出来る物は、三つ。


 一、道の粉っぽさ。


 二、そしてスコップの柄。


 そして、


 三、フェイクファー。




 すべては見えないが、そこに在る

 ――その様に思われた。


 皮膚だけが、それを保証する――担保無く。




 "蜘蛛宇宙人" は待った




 ――足音は依然として来ない




 ――声は依然として聞こえない。




 その時、"蜘蛛宇宙人" は

 ――暗闇の中でも

 上下こそ、わかった。


 前後こそ判別がついた




 ――しかし、左右を見失いかけていた。




 それでも手と足と頭を使い

 ――這いながら

 地点(B)から地点(G)へのトンネルの奥を見ようとする。




 そして、


 黒の中――




 点が見えた。




 闇の中に




 「ぼん……やり」




 と浮かぶ点。




 白い点。




 小さすぎもせず、大きすぎもしない点。




 「ちか…」




 「ちか…」




 ――動いている。




 そして――




 止んだ。




 真暗。




 "蜘蛛宇宙人" は、黒を睨んでいた。




 ぼう漠たる黒を睨んでいた。




 憎しみ無く、睨んでいた。




 しかし、いくら睨もうとも、対象が浮かび上がる事は無い

 ――未だ。


 その時だった。




 「ぶるぶるぶるぶる……」




 と音がする

 ――そして壁の白マテリアが微かに崩れ落ちる音がする。


 怒涛の雪崩れではない――剥片。




 音のする方角は、先程遠く見えた


 <白い点>


 とは反対にあった。




 "蜘蛛宇宙人" が顔の向きを変え、音源の方を見ると、


 光


 があった。




 "蜘蛛宇宙人" の目線の高さ

 ――平行線上

 そこから

 天井斜め上に向かって、

 光を放っていた。




 そしてその<光>は角張っている………


 ――四角なのだ。




 "蜘蛛宇宙人" は<光>に近づく。




 そして気付く


 ――《タブレットだ》


 あの――

 表面に

 ――極僅かの記号的文字以外

 何も書かれていなかった

 ――地点(B)に埋もれていた

 ――骸骨の

 ――肋骨の

 ――下にあった

 <物>だ。




 "蜘蛛宇宙人" はスコップから手を離す

 ――手袋は捨てない……

 ――既に中身が剥き出しであろうとも…

 ――世界に向けて剥き出しであろうとも。




 "蜘蛛宇宙人" は手を伸ばす。




 光迸る<タブレット>を掴み、引き寄せた。




 そして "蜘蛛宇宙人" は

 ――また

 地点(A)から地点(B)を繋ぐトンネルに身を隠す

 ――直角こそ隠れ蓑……。




 "蜘蛛宇宙人" の手の中で――

 <タブレット>の表面が光っていて

 ――光の中

 それまでには無かった<文字>が映し出されていた。




 暗闇の中でも、それはよく見えた

 ――暗闇の中だからこそ、よく見えた。




 以前


 「Gottlob」


 と書いてあった場所

 ――タブレット表面のヘッダー的部分………

 その上に小さく

 ――新たに




 「a stranger」




 と書いてある

 ――「Gottlob」を残したまま。




 「Gottlob」がブロック的<硬さ>を持っているなら、

 「a stranger」はイタリック的――斜め。




 フッターの部分の


 「q. e. d.」


 ――も残されたままであった。

 ただ、その「q. e. d.」の文字上に引かれた


 「¬」


 は、見えなくなっていた。




 「q. e. d.」


 それを邪魔する者は

 ――その時点では

 いないのだ。




 そして

 ――ライトを当てる限り

 ヘッダーとフッターの間、大きく空白であった場所

 ――凹んでいた場所

 には、新たに文字列が生まれていた。




 "蜘蛛宇宙人" には

 ――その時

 <それ>が見えた。




 それは<象形文字>で編まれた<文字列>であった。




 それを此処にうつすのは難しい

 ――此処は、書けない場所であるから。




 此処は並び替える場所なのだ。




 勿論、書いた物を置く事は出来る。

 しかし、それは<置き換える>だけだ

 ――そして、そうしてやるだけの義理も義務も無い。




 義理も義務もない。




 よって、<文字列>の文意を残して

 ――改変してから

 此処に置く

 ――それで十分だ……

 すると、以下の様になる。




 「お, る, の, こ, り, ん, た, ろ, う,

  る, の, こ, り, ん, た, ろ, う, お,

  の, こ, り, ん, た, ろ, う, お, る,

  こ, り, ん, た, ろ, う, お, る, の,

  り, ん, た, ろ, う, お, る, の, こ,

  ん, た, ろ, う, お, る, の, こ, り,

  た, ろ, う, お, る, の, こ, り, ん,

  ろ, う, お, る, の, こ, り, ん, た,

  う, お, る, の, こ, り, ん, た, ろ,」




 そして


 この<文字列>こそが


 <白マテリアのダンジョン>


 そのシステム


 ――「S」…


 そして


 点(E)から点(F)への直線に対して

 左へ直角に曲がる道の<不可思議>


 即ち


 点(F)から先が点(A)に繋がっていた事――


 <それ>を端的に指し示しているのだ……。



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