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わたしは此処にいる

存在すると仮定した時に自動的に消える場所。

 シャベルが手に入り、"蜘蛛宇宙人" は

 ――より詳しく

 調べてみた。




 何の変哲もないシャベルだ。




 指の部分の亀裂は、それぞれの指と指の間に沿って、入っていた。




 シャベルの指を

 曲げたり

 捻ったり

 する事は出来ない。




 しかし

 ――指はそれぞれ

 少し動いた。




 根本が弱り始めた歯を摘んで左右に動かすと――




 「ぐらぐら」




 ――するのと同じ程度。




 "蜘蛛宇宙人" は、指を引っ張ってみた。




 抜けなかった。




 押してみた。




 足の中に埋まった。




 音はしなかった。




 もう一度、埋まった指の頭を押してみた。




 飛び出た。




 親指を押してみた。




 親指が埋まると――




 「ザァー…」




 「ザァー……」




 「ズゥゥ………」




 ――と音がした。




 音はすぐになくなった。




 しかし、音はあった。




 それは、何も音のしない空間を録音して再生した時の音だ。




 それは連続していた。




 埋まった親指は出て来なかった。




 "蜘蛛宇宙人" は、耳を澄ませる。




 足の<裏>から音がしている。




 "蜘蛛宇宙人" は、足の<裏>を耳に当てた。




 「……聞こえるか?」




 と声がした。




 「…聞こえているか?」




 誰かの声。




 その声は、"ω" ではなかった。




 その声は、"鳥頭" ではなかった。




 その声は、

 "摂"氏 でも、

 "華"氏 でも、

 "アルブス" でも、

 "蜘蛛宇宙人" の家族でも

 なかった。




 誰とも似ていなかった。




 そして――




 使われている言葉は、"蜘蛛宇宙人" の母国語ではなかった。




 それでも――




 "蜘蛛宇宙人" は、

 語りかけられた事を理解する事が出来た。




 別に魔法ではなかった

 ――単なる言葉であった。




 "蜘蛛宇宙人" が努力して獲得した言語だ

 ――努力した者だけが理解出来るものだ。




 "蜘蛛宇宙人" は、

 足の<裏>からの問いかけに対し、

 何も言わなかった。




 すると――




 「別に聞こえてなくてイイ……」




 ――と声が続いた。




 「別に誰かが聞いていたって、理解するとは思わない。

  これまでずっとそうだったし、これからだってそう」




 "声" は、空間に、響いていなかった。




 それは、"蜘蛛宇宙人" の耳にだけ、届いた

 ――それは、幻聴とは、関係がない。




 次の言葉は――




 「キエロ………」




 ――だった。




 "声":

 「ああ……。

  わたしが死んだ後

  ――肉が落ち

  ――骨となり

  ――骨さえ砕けて<物>ではなくなる時

  <EF問題>を解く者は現われるのだろうか?

  それとも、どこかの誰かが既に、相応しい証明を与えたのだろうか?

  知りたい…」




 暫しの間の後、すぐに言葉が継ぎ足された。




 「……知りたい………。

  ずっとひとりで問題に取り組んできたのだ……。

  助けになる者などいなかった!

  みんなでやる共同作業など、<問題>の取り組みですらない…

  ――単なる計算だ。

  足踏みだ!!

  もう頭の悪い者による便宜や助けなど必要ない!!!

  そんな物、証明の役には立たない!!

  お追従も、生産性のない人格攻撃もいらない!

  わたしは自分の頭を使って理解したい!!

  ただ知りたいのだ……」




 無言が終わってから――




 「キエロ!!!」




 ――と再び

 ――突然

 スペイン語が入った。




 そして――




 "足の<裏>":

 「わたしは納得のいく解き方が欲しい!!

  名声が欲しい訳ではない。

  尊敬が欲しい訳ではない。

  解けた時に味わう興奮が欲しい訳ではない。

  問題が片付いた時に得られる安心が欲しい訳ではない。

  キエロ!」




 "蜘蛛宇宙人" は、ただ耳を傾けていた。




 普段、

 他人の戯言に耳を傾けない "蜘蛛宇宙人" の鼓膜は

 ――その時

 ――実際

 澄んでいた。




 "足の<裏>":

 「わたしは玩具を持っているのだ………

  ――とても大切な玩具だ。

  それは、子供にも大人にも遊べない玩具だ

  ――"それら" には、使う方法がわからないのだ。

  そして、その玩具は楽しくない。

  その玩具は、多くに、悩みだけを植え付ける。


  それでも――その玩具は、貴重な物だ。


  それは、金を使えば、より近づく事が出来る

  ――それでも…

  ――金を使えば誰にでも手に入る物ではない。

  勿論、努力すれば必ず手に入る物でもない……

  ――それでも

  ――努力しなければ必ず手に入らない物だ。

  キエロ!!」



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