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わたしは此処にいる

 高すぎる能力は、需要に応じないもの

 ――知性は抑々、"需要" にそぐわないもの。


 "蜘蛛宇宙人" はスコップを手に取り、"鳥頭" の直ぐ傍に立った。




 最後の一歩を踏みしめた時、"鳥頭" は固まっていた。


 しかし、攻撃が加えられない事を理解すると

 ――安心し

 頭を左右に動かした。

 ――小刻みに。


 早く――




 と急かす事はしない。




 そして、頭の運動を止める。




 そしてその瞳を見開いて――




 待っていた。




 嘴の先は、"蜘蛛宇宙人" の脛へ到達範囲内だ。




 "蜘蛛宇宙人" はライトを傍に

 ――地面に

 置いた

 ――それを "鳥頭" が見ていた

 ――注意深く。


 "鳥頭" の身体が埋まっている壁のあたりに向かって

 ――地面から

 ――大きく

 光の輪が投げかけられた。




 "鳥頭" は驚いた様子で、頭を左右に動かしていた。




 搾られた光の中、対象はより明瞭だ。




 "蜘蛛宇宙人" はスコップを浮かせ

 ――白マテリアに向かって

 ――斜めに

 突き刺す。




 「ˇ」




 ――白マテリアの破裂

 ――拡散。




 "鳥頭" は顔を背けた。


 「ぺ!」


 「気をつけてくれ!!

  ――顔にかかるじゃねぇか!!!」




 怒声を耳にし、"蜘蛛宇宙人" が手を止めると、


 「気をつけてくれ」


 明らかに

 ――二つ目に発された同じ台詞は

 勢いが削げていた。




 掘る

 ――「ˇ」が残され

 ――白の壁から

 嵩が減る。


 面積は減らない――

 一向に減らない。




 掘った分だけ、減った分は別の場所に移動する。




 何はともあれ、ここから<掘る>時間が始まり――

 時間は経過する


 ――その<正確な><厳密な>時間は記さない

 ――その作業時間全体を仮に…

 ――単純に "N" とでもしておこう……


 経過する


 ――ダンジョンシステム "S" に於いて必要な証明の長さを考えればそうなるのだ

 ――ほら、"スピードアップ" セオレム………。

 しかし、 "N" 時間の経過は、<掘る>事を完成させない

 ――"N" は

 ――"蜘蛛宇宙人"

 ――そして "鳥頭" を含む……

 ――その二つの当初の目的

 ――その達成を表さない。




 時間を戻そう――




 "N" の内、始めから何番目か [自然数である] に於いて、"鳥頭" は

 ――しばしば

 言葉を挟んでいた。


 X:「いやぁ、たすかった助かった」


 X:「つい、『うとうと』眠ったらこうなったんだ」


 X:「最初からこうだった訳じゃない」


 X:「うわ!! [白マテリアが] 目に入ったぞ!」


 X:「気を付けろ!!」


 X:「俺だって最初は歩けたんだ」


 X:「此処に来たばっかの頃は歩けたんだ」


 X:「あんたみたいにな」


 X:「そのスコップだって、もとはと云えば、俺が使ってたんだ!!!」




 勢い余って、"鳥頭" はその嘴を "蜘蛛宇宙人" の脛に刺した。




 その時、"蜘蛛宇宙人" は手を止めた。




 "鳥頭" を見下ろす。




 "鳥頭" は、項を緊張させていた。




 "鳥頭" の目のある位置では、"蜘蛛宇宙人" の表情を窺い知る事は出来ない。




 "蜘蛛宇宙人" は壁に刺さったスコップを引き抜いた。


 "蜘蛛宇宙人" は何も言わない。




 "鳥頭" が問題を誤魔化すつもりか、話し出す――


 「まぁいいんだけどさ…どうせ、どっかにあったんだろうから……」




 "蜘蛛宇宙人" は、成果を見る。

 "鳥頭" の隣、壁は少し凹んでいた

 ――しかし、手も足も出ていない

 ――胴体………

 ――言うまでもない。




 スコップを持ったまま、"蜘蛛宇宙人" は後退りをした。




 地面に置いていたライトを掴んだ

 ――"鳥頭" の顔が闇の中に

 ――漸次的に

 ――沈んでいった。




 消えた訳ではない。




 それまで無心に作業をしていた "蜘蛛宇宙人" が作業をそれ以上しない様子を見て、"鳥頭" が焦る――


 「おい、もしかして、もうやめちゃうのか?」




 "蜘蛛宇宙人" は後退りを続けた

 ――身体を斜めに捻り

 ――正面の方角を変えながら

 ――ライトの向きを上にしながら。




 「おい、何処へ行くんだ!!?」


 黒に沈んだ "鳥頭" の首が前後する

 ――嘴が前後する。




 爪先の向きが変わり――

 背を向けて三歩も行かない内に、"蜘蛛宇宙人" は足を止めた。




 地に座った

 ――スコップを立てたまま。




 それを "鳥頭" が見ていた

 ――必死に。




 背中を、見つめていた。




 「休むのか?」




 「ずっと歩き通しだったんですよ」


 ――そう、"蜘蛛宇宙人" が返事をしてやる。




 "蜘蛛宇宙人" はライトを、来た道に向けていた

 ――ちょうど地点(G)と(B)の間のトンネルだ。




 気紛れに――くるくると。




 トンネルの中に見える物に変化はない。




 道の先には黒があり、その周りには白がある。




 そして沈黙があった

 ――しかし "鳥頭" がそれを破る。


 背後から破ろうとする

 ――"鳥頭" は、刺激をしているのだ。


 Y:「俺な……」


 Y:「俺な……」


 Y:「俺な……この壁の中でもな、足から先は埋まってないんだよ……」


 Y:「宙に浮いているカンジなんだ」


 Y:「足の甲は伸ばしたり出来るんだよ……」


 Y:「そんでな……」


 Y:「俺な……」


 Y:「俺な……」


 Y:「あと……背中も、なんもないみたいなんだ」


 Y:「で、手と腕と足、つまり太腿な、そこらへんが埋まっちゃって全然動かせないんだ」


 Y:「そんで何をしても、動けないんだ……」




 以上、11行の台詞はすべて同じ意味を担っている


 ――「休んでないで早く掘れ!」


 ――「休んでないで俺を助けろ!」




 "蜘蛛宇宙人" が立ち上がった

 ――そして

 ――再び

 ――ライトを削掘箇所付近

 ――地面に置き

 ――壁を掘り始めた。


 Z:「あ、近い!!」


 Z:「感じる!!!」


 Z:「気をつけろ!!」


 Z:「そこらへんに指があるんだからな!」




 "鳥頭" の指示通り

 ――丁寧に

 壁を掘ると、<指>が出た

 ――人間の中指。


 指にエアーを感じたのか、

 "鳥頭" は叫びながら、頭を振り回した

 ――狂ったように

 ――左右に。


 「やった!!」


 「あんたよくやった!!!」




 何度か嘴が "蜘蛛宇宙人" の脛を掠った。




 納まってから

 ――さらに

 "蜘蛛宇宙人" が掘り進めようとする。

 すると、


 「ちょっと待て!!」




 ――壁の中、それまで埋まっていた指いっぽんが

 ――ライトから迸る光を浴びていたのが見えた。




 光の中、指は上下に動いている

 ――勿論

 ――可動範囲は角度九十度。




 「次はもっと優しく掘れよ…!」




 「お前も "あいつ" と同じで使えねぇなぁ……――ホント」




 "蜘蛛宇宙人" は手を止めた。




 "蜘蛛宇宙人" はスコップを宙に浮かせたまま、


 「じっ」


 ――としていた。




 "蜘蛛宇宙人" の頭に、ひとつのイメージが浮かんだのだ。




 そしてその、頭に浮かんだ対象は――


 骸骨


 ――だった。




 <骸骨>だった。




 "蜘蛛宇宙人" は呟くように、相手の頭に言葉を投げかけた

 ――確認する為

 ――可能性の範囲を狭める為に。



 「あの骸骨、もしやあんた ["鳥頭"] が………」



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