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美味しいコーヒーの淹れ方

美味しいコーヒーの淹れ方

作者: 伊藤

皆さんは喫茶店のマスターに憧れた事はないでしょうか?


今の時代の人とは違うかもしれませんね。


私は子供の頃から漠然となれたらいいな、ぐらいの気持ちで居ましたが、ひょんなことから喫茶店をはじめ、そして気付けば20年。


見るとやるとは大違いでしたが、私の人生も後半に入り、せっかく美味しいコーヒーの淹れ方を開眼したのに、誰にも教えず死んでいくのは心残りなので、ここに遺書代わりに書いて残そうと思います。





さて、コーヒーの淹れ方にも色々ありますが、私の場合はドリップしかできません。ですのでドリップに限った話なんですが、あくまでこれは私のやり方というか流儀というか、流派といってもいいかもしれません。ですので他人からの質問はありですが否定はなしです。


さてここでいくつか薀蓄を。


コーヒーの美味しさの5要素をご存知でしょうか。

それは

 苦味

 甘味

 香り

 コク

 酸味

になります。


この五つの要素をどう引き出すかがカギになりますが、お気づきなように完璧なんて存在しませんし、人の味覚はそれぞれなので正解なんてありません。それにこれは淹れ方のほかにもブレンドとか焙煎とか、普通の人にはできない部類の話も入ってきます。私もできませんし。

ですので本当のことを言えばおいしいコーヒーを望むならば、生豆の仕入れから焙煎、ブレンド、そしてその管理。一から十まで自分の望むことを形にしなくてはいけません。ですがそれは一人では無理ですので、できる限り自分の理想に近い豆を探していくことになります。

ここで管理といいましたが、焙煎した豆は一月ほどで香りが抜けてしまいます。ミルで細かくした豆は半日ほどで抜けます。ですのでコーヒー豆はできるだけ豆で買い2週間以内に使い切るようにし、淹れる直前に挽いたほうが良いということになります。


ここで豆のことを書いてしまいましたが、こんなことは当たり前なことなのでここまで。それでは美味しい淹れ方の奥義といきましょう。

奥義といいましたが、私にとってコーヒーを淹れるということは茶席でお茶をいれるのと同義、つまり茶道と同じだということです。

茶道には色々な流派があり、私は私なりの流儀で、自分流のひとつの流派の真理にたどり着いたということです。たとえそれが間違っていたとしても、これ以上は無理であり、私のひとつの結論としておきます。



淹れ方に決まりはありません。蒸しとかお湯の落とし方だとか器具とか。どれを使ってもいいでしょう。紙とネルでもどちらでもかまいません。

ただしそのやり方をとことん繰り返すことがまず大事。

私の場合ですと師匠に教えてもらったやり方を10年続けました。

色々なものを試すより先に、ひとつのやり方をとことんつきつめます。意識はありながらも無意識でできるようにしなくてはいけません。

そして奥義。

お湯を入れるときには雑念を捨て、心の水面をできる限り穏やかにしなければいけません。

そう、無の境地です。


これでは禅のようですが、茶席がなぜあのような形になっているのか。なぜ外界と隔絶した空間になっているかを考えれば、あながち間違ってもいないと思います。

奥義は会得しても体現できなければ意味がありません。私はこれに気付くのに15年かかり、体現できぬまま5年が過ぎ、店をたたみました。どうやったら体現できるのかわかりません。それこそ滝に打たれたり座禅を組むのもいいかもしれません。


ちなみにこの奥義はすべてのものにいえるのかもしれないと自分では思っています。私はゴルフ好きですが、球を打つ前に無の境地に入れたら曲がらないのではと。こちらは確かめるすべはないんですが。



折角の奥義なので誰かの心のスミにでも残ればいいなと思っています。

もちろん、私も残りの人生でまだ見ぬ境地へといたりたいですが、どうなりますかね。


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