表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二周目の転生勇者は魔王サイドにつきました。  作者: さな
二周目の転生勇者は魔王サイドにつきました。
8/55

アマギと魔王

異世界逗留 2週間目、


私は魔王城に辿り着いた。王都からひたすら馬をとっかえひっかえしながらとばし続け、船で海を渡り、魔大陸で怪鳥に乗り換える。ハードな旅路だった。全身筋肉痛ではあったが、魔王にこんな情けない状態を知られるわけにはいかない。必死で無表情を張り付けた。


今、私は謁見の間の前にいた。

中では魔王はもちろんのこと側近、将軍、隊長格まで魔王軍の手練れが集められているのだ。さすがの私も緊張するが、教会を完膚無きまでにぶっ潰す私がこんなところでつまずくわけにはいかない。


まもなくして扉がゆっくりと開いていく。


砦といった方がいいくらいの殺風景で、頑丈なつくりの城は玉座までもシンプルだ。

五段上に玉座が置かれており、そこには冴え冴えとした美貌の青年がいた。白に近い白金の髪は長く、その瞳は紅。上位の魔族によくみられるように瞳孔は針の如く細長い。纏う魔力も威圧感があり、並々ならぬ貫禄があった。


―――これが、魔王


私は威圧的な魔力を無視して前に踏み出す。

魔王の傍には宰相が立っており、四段目にはシェイドを含む三人の側近、三段目には濃紺のラインが入った軍服を着こんでいる四人の将軍、二段目に深緑のラインが入った軍服の十人の隊長が控えていた。

本来なら側近は四人、将軍は六人、隊長は十二人だとシェイドから聞いている。


私は所定の位置まで進むと、普通は膝をつくことになっているが、まっすぐ魔王を見上げた。


「私の名は天城―――貴方と協力関係を結びたい」


そして、私は一気に切り出す。


魔族たちは一様に驚きを露にして、困惑気味に玉座を仰いだ。

私に応えたのは老人の風貌をした宰相だった。


「ヘマをした側近を助けたくらいでいい気になるではない。人間風情が我らに何の利益をもたらそうか」


「―――何でも。望みのものはすべて私なら叶えられる。今、貴方たち魔族は王都を囲む結界に阻まれ、同族の奪還に手こずっているようだけど……その結界、私なら解除できるわ」


「その様な力が貴様にあるというのか」


結界には魔族たちが反応した。しかし、宰相はあまり食いついてこない。真偽を証明しようとしても、私が王都の結界を構築したキールの生まれ変わりだなんて誰も信じないだろう。


「私の目的は教会を完膚無きまでにぶっ潰すこと。そして、二度と腐った教会が権力を持たないよう王政を復活させ、さらには魔族と不可侵の契約を成したい―――そのためには必要最低限として不可侵の契約を取り付けさせてもらう、貴方たちは囚われた魔族を私が取り返すのを見ていればいい」


私は高慢に言って魔族を挑発した。魔族を奴隷に貶めた人間が人間の手により救われる。ある意味筋の通ったことだが、魔族側にすれば自ら人間に制裁を与えたい。人間によって同族が助けられるのを指をくわえて見ていることなどできはしない。


私は睨み付けてくる魔族を無視して踵を返した。


「―――貴様は人間の王の使者と見てもよいのか」


かかった。魔族たちにとってキールの結界は最大の難所であったのだ。真偽のほどはおいといてその結界を解くことができるらしい私を逃すには惜しい……というのが魔族側の本音だろう。……真面目に結界作っといて良かった。


「勿論。私はミラコスタ国王ジェラールと既に話は通しているわ。ついでに魔族を奴隷にしている調べもついている。先ほども言ったように私の要求は教会を潰すための協力と―――」


「魔王様!」


突然大きな音をたてて扉を開けた女の魔族に私の言葉は遮られた。入ってきた彼女が纏うのは濃紺のラインの軍服、将軍だ。


「騒がしい、何事であるか」


「ご報告致します。アフガント隊長が部下二人を連れて人間の大陸に侵入したことが先ほど連絡が取れず調査した際に発覚いたしました。私に彼らを連れ戻す許可を頂けないでしょうか」


どうやら、キールの結界に阻まれ業を煮やした一部が暴走したようだ。それにはシェイドも含まれる。魔族側では新たな捕虜を増やさないためにも魔王の命令以外で人間の大陸に侵入することが禁止されているらしい。


「―――丁度よい。貴様が軍の規律を乱す馬鹿を連れ戻せ。死なぬ程度に痛めつけても構わん。これで貴様の実力を示して見よ。できないならば二度と顔を見せるな。我らは弱き人間に協力する気などない」


宰相は試すように私を見据えた。魔王は彼の決定に口出すつもりはないのか傍観を決めこんでいる。


「わかったわ。私が戻ってきたのなら詳細を詰めさせてもらうわよ」


「それだけの実力が示せるのならな。――シェイド、貴様も行け」


私の他にはシェイドがつけられるようだ。軍規違反した彼に対する罰であろうか、それとも私を連れてきたことによる責任だろうか。


―――私は魔王城を出立した。


◇◇◇◇◇

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ