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二周目の転生勇者は魔王サイドにつきました。  作者: さな
三周目の偽物賢者は教会サイドにつきました。
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ソーマと災厄



俺は王城の一室で過ごしていた。

カレンは臥せったままだが、もしゆきをカレンの元に連れてくることができたなら、どうにか立ち直ってくれるんじゃないかと、思っている。それには、ゆきの動向を掴まなければいけない。

ゆきは裏ボス的存在であるアシュマと共にいるらしいが…。


「どうやって接触しようか…。」


ただ会いにいって、すんなり話ができるのだろうか。そもそもゆきは、キールの憑依から解放された影響はなかったのだろうか。俺が話しかけても、誰だ?とか返されたら悲しすぎる。


ただ悩んでいると、目の前にミーアが現れた。


「いい情報よ!郊外で王家に不信をもつ救済軍が結成されつつあるらしいわ。その中に、ミーヤがいるの!それに救済軍の真偽を確かめるためにキールがミクラに派遣されるのよ!」


ひどく興奮した様子でミーアが捲し立てる。俺はただそれに気圧された。


「はぁ、派遣されついでに殺されてきてはくれないかしら」


だが、恋する乙女の如く頬に手をあてながら、物騒きわまりない発言をするのはどうかと思うぞ。そんなミーアに俺は尋ねた。


「ミーヤって異世界から来た賢者って人?」


なんでそんな人がまたこの世界に?ってか、どうなってんだ時間軸は…。


「そうよ、アマギがミーヤを喚んだみたいなの。彼が来たならもう勝ったも同然よ!」


ミーヤか…。このミラコスタ王国の建国に尽力したって聞いたからには、相当な実力を持っているってことか?

だが、ミーアの話が本当なら、キールについていけばミーヤに…ひいてはゆきに会えるんじゃないか?


「キールに俺もついていくことはできるのか?」


「んー、どうかしら?ジェラールに聞いてみるわ」


そう言うなり、ミーアは姿を消した。出てくるのも突然だったが、去るのも一瞬だな。




こうして、キールをはじめとする勇者一行が結成されることとなった。

メンバーは、キールの他に俺とリィーヤ、エレナがついていく。男1人に女3人、まさにハーレムだ。でもこんな状況じゃあ、あんまり嬉しくないけどな…。


勇者一行はすぐに王宮を発った。

目指すは、港町ミクラにある教会だ。そこが救済軍の噂の出処らしい。

それにしても救済軍なんて、何を救済するのだろうか?

救済するのは、腐敗政治か行方不明の教皇か。どちらにしろ王家に反発する勢力ってのはわかる。

でも王家に反発したところでゆきになんの得があるのだろうか?ゆきは、妖精を抹殺すべく動いているのに、何故教会に身を寄せているのだろうか。


答えの出ないまま、旅は順調に進み、とうとう港町ミクラにたどり着いた。ここの宿で一晩過ごした翌日に、教会に突撃するのだとキールが言う。正面突破で大丈夫だろうか。救済軍というからには、相手は武装しているかもしれないのに…。

そして、ミーヤとゆきは本当にここにいるのだろうか?


一人部屋で考え込む俺は、コンコンと扉がノックされた音に顔を上げた。


「少し、いいか?」


訪ねてきたのは、リィーヤだった。


「リィーヤ?どうした」


もう夜中に近いというのに、何の用だろうか?俺は扉を開けて、彼女を迎え入れる。


「アマギのことで聞きたいことがある」


「ゆきのこと?」


「私は王都でアマギに会った。キールと瓜二つの彼女は、どこに行ったのか…。それともアレがアマギなのか、おまえなら知っているだろう?」


建国祭前、俺が教会で留め置かれている間、リィーヤが姿を消した時期があった。その時にゆきに会ったのだろう。そして、リィーヤは教会を粛正する側に立った。


「アマギ…ゆきは、キールに体を乗っ取られていたんだ。今、本来の姿を取り戻したゆきは、キールや他の妖精たちを殺そうとしている」


俺は俺の知る限りのことをリィーヤに聞かせた。彼女は、キールに疑心を持っているようだったから、ゆきを連れ戻す際に味方になってくれることを願って、俺はありのままに話したのだ。


「そうなのか…」


リィーヤはそう言ったきり、しばらく黙り込んでしまった。そりゃあ、妖精なんて災害じみた化物の存在を聞かされたら、戸惑うしかない。


「……私は、もう一度、彼女に会いたいと思う。あれほどまでに私を惹き付ける人はいなかったから…。アマギに会ってからというもの、彼女のことが頭から離れないのだ」


……………へ?


「あの統率力に、暗い瞳に燃える復讐心は実に美しかった。それに剣の腕とて一級品で見惚れるほど綺麗だった…」


突如として、恍惚とした表情で語りだすリィーヤに俺は驚きを隠せない。本当になんという告白をしてくれたんだ。リィーヤの後ろに白百合が咲いている気がする…。


それから夜が明けるまで、リィーヤのゆき談義は留まることを知らなかった。……ドン引きだわ。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




翌日、キールはまっすぐにミクラの教会に突撃した。

すぐにその教会の長だというヘルマンが出てくる。脂ぎったおっさんで、本当に清貧な聖職者かと疑うほどのでっぷりとした腹を抱えていた。


「これはこれは、キール様!ご無事で何よりです。王都の教会でのことは聞き及んでおります」


ヘルマンは、卑しい笑みを浮かべて媚びる。教会の目の前で遣り取りするものだから、ミクラに住まう人々がキールに気づいて集まってきた。


「そう、なら知っているよね。魔族と人間の戦争はすべて教皇が引き起こしたことなんだ」


キールはずいぶんと直接的だった。普通は遠回しに相手をゆさぶって、言葉を引き出したりするものではないか?


「そうなのですか…?」


ほら、ヘルマンも突然そんなことを言われれば、困るしかないだろう。


「私は、とある御方より、此度の戦争の原因は、妖精の仕業だと伺っております」


「それ、誰に聞いたの?」


「エルネスト様を救いし御方にございます。その功績により近々、聖人の称号を授けられる御方でもありますな。かの御方は、災厄をもたらす妖精を長年追っているそうで、この国に入り込んだ妖精の存在を教えてくださいました。妖精とは、人間を魅了し、意のままに操る術を得ているとか…キール様はご存知ではありませんか?」


ヘルマンはある程度何かを知っているようだった。そして妖精の存在も…。彼の言う”御方”って、ゆきかミーヤのことではないのだろうか?

それにしても、キールは妖精であることは秘密のはずだ。ここまで聞かれて、キールはどう交わすのだろう。

人々が固唾を呑み込んで見守る中、キールはあっさり肯定した。


「もちろん知っているよ!だって私は妖精だからね!でも、勘違いしないでほしいな、悪い妖精の教皇から私が皆を助けてあげたんだよ?」


嘘だろう…。自分が妖精って言ってしまうのか!?しかも教皇と同じ妖精であるといいながら、自分は善で教皇は悪なんて自分でわけても、説得力ねぇよ!

キールって馬鹿じゃないのか?そう俺がそう思って、周りの人々の様子を伺った時だった。


「----だから、君たちは私に感謝するべきなんだよ!」


キールがそう言った瞬間に、人々が突如として泣いて喜び、キールを讃えだしたのだ。あまりにも突然のことで、俺はキールを崇めだしたことに困惑するしかない。リィーヤとエレナも事態を呑み込めていないようだ。それに、ヘルマンたち教会側の人間だって困惑している。


これでは、先ほどヘルマンが言った”妖精とは、人間を魅了し、意のままに操る術を得ている”を証明したも同然ではないか。

これが魅了…。俺は無意識に息を呑んでいた。俺たちが無事なのは、魅了の対象から外れていたからだろうか。


魅了についてはミーアやサラから聞いている。でも、初めて人が魅了される瞬間を見た。これほどまでに、人を意のままねじ曲げてしまうものなのかと、俺は戦慄し恐怖した。頭の中に警鐘が鳴り響く、妖精は危険だと----


「化物…!」


聖職者の一人が思わずといった風に声を漏らした。同感だ。

ただただ、気持ち悪い。人を息をするように躊躇いなく、自分の都合の良いようにねじ曲げてしまうその神経が理解できない。


「あれ?どうしたのさ?」


俺たちの視線の意味に気づかないキールの傍らに、シヴァが顕現した。彼は、キールに寄り添う。

それすら魅了の力によるものなのだろう。強制的にシヴァは、こんな妖精に愛を捧げさせられているのだ。


「キール、まずは妖精を知る御方について尋ねなければ」


そっとシヴァがキールに耳打ちする。


「それもそうだね。ねぇ、ヘルマン、君の言う御方って誰なの?エルネストもそいつと一緒なんだね?」


忘れていた俺の目的は、ミーヤやゆきに会うことだ。”御方”がどちらかであることを願う。


「はい、キール様。かの御方の名を”ミーヤ”と申します。エルネスト様もご一緒でございます。しかし彼らの居場所は私にはわからず…」


ヘルマンは言葉を濁したが、今彼はミーヤと言った。俺は彼に会ってゆきのことを聞き出さなければ…。

今、ゆきは何を思い、何を為そうとしているのか、俺は知りたい。


「ミーヤ?聞いたことがあるけどなんだっけ?」


「ミーヤ様といえば建国の賢者と同じ名前です」


「あ、そのミーヤかあ!通りで聞いたことあると思ったよ!!彼が来ているんだね」


シヴァと少し遣り取りした後、キールは上機嫌に笑う。


「ミーヤってばなにしてるんだろう?早く私に顔をみせるべきなのにねー」


どうしてそんな心底ふしぎそうな顔ができるのだろう。キールは、世界は自分中心で動いていると本気で思っているような振る舞いをする。いや、本気で思っているのだろう。魅了を使えば全部自分の思い通りにことが運ぶのだから----


そして、キールは用は済んだとばかりに踵を返すので、俺もそれについていった。

妖精なんて碌なもんじゃない。まさしく災厄だ。







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