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二周目の転生勇者は魔王サイドにつきました。  作者: さな
二周目の転生勇者は魔王サイドにつきました。
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アマギと教会殲滅

建国祭が始まった。教会派の目を盗み、アガレスと共にパレードに紛れ込む。

そして、パレードが動き出すと同時に国王ジェラールの隣に立った。


あとはキールたる私の存在を民衆に広めさせるだけだ。


あまり時間をかけず、一気に教会の前まで進んでから、パレードを止まらせる。



「---今日この時を以て、我ら人間と魔族における戦争の終結をここに宣言する。」



私たちが術式で声と映像を王都中に届ける準備を整えると、ジェラールが口を開いた。


当然、民衆は戸惑うだけだ。それでも教会を攻撃する材料を並べ立てねば、後々国を立て直す際に不利になる。


私は教会に目を向けながら前に出た。


「--さて、この戦争を仕組んだ者共の名を告げようか。魔族と人間が争っていた原因は、---教会にある。前魔王を操り、私に殺させ、そして私を害したのはすべて教会の仕業である。さらに教会は前魔王に放逐させた力の弱い魔族を攫い、この国の貴族に奴隷として売りつけた。前魔王が死んだ後、当然魔族は自らの同族を救うためこの国に乗りこんでくる……これに何も知らぬ国民が対抗して出来上がったのが、人間と魔族の戦争だ。」


あたりはしんとして、私の言葉に呑まれたように静まりかえっている。


「そして、教皇モードレッドの予言はすべて自演自作であり、国民の信頼と金を奪うための手段にすぎない。国王にかわり実権を握り、美しく頑丈な魔族の奴隷を渡し貴族を懐柔し、教皇はこの国を掌握した。教会内部は既に腐敗し、もはや欲にまみれた愚者しか存在しない。この国はもう腐っている。だからこそ、今ここで私は、教会を完膚なきまでにぶっ潰す!私の邪魔をする者は同罪と見なし切り捨ててやろう。」


酷薄な笑みを浮かべてやると教会側が俄にざわつきだした。だが、教皇は何の反応もみせず、微動だにしない。それに苛立ちが募る。


次にアガレスが私を下がらせ、教会を見据えた。


「--我が名はアガレス、魔王だ。既に魔王軍が奴隷にされた魔族を回収する許可は得ている。無論貴様ら教会の聖職者どもの捕縛の許可もな。よって、実力行使で始めさせてもらおう。」


唐突すぎる魔王の登場に驚く間もなく、王都のあちらこちらから悲鳴や怒号があがり始める。


「我が騎士団もそれに続け。教会の者達を一人残らず捕らえるのだ。抵抗する者に容赦はいらない。」


国王の命により馬車のまわりにいた騎士達が教会に乗り込む。その先頭に立つのはバレクだ。騎士達には、聖職者の拘束を命じている。抵抗するなら殺してもいいとも。

聖職者たちが逃げ惑う中、エルネストが声をあげた。


「何をしているのです。ゲイル、教会を侵そうとする者共を始末なさい。」


民衆に紛れていた武装した集団が騎士達に襲いかかる。しかし、それは予想していたことだ。

私もまた戦闘に参加する。歯向かってくるギルドの者どもを切り捨てて、教会を目指す。


いつの間にか、教皇がいなくなっていた。だが見当はついている。振り返ってアガレスに目で合図を送ると、私は正面から教会に切り込んでいく。


教会内に侵入すると、聖職者が逃げ惑っていた。それを無視して、私は進む。

闇の精霊たちに地下通路を探索させた結果、この教会を中心に東西南北に4つの通路が存在していることが分かった。そのうちの1つは、王城と繋がっている。

クラウンにかけられているティタニアの呪いにより、精霊が一切教会の地下空間に近づけなかった。そのため私は王城と繋がっている通路に直接穴をあけて、乗り込むことになっている。

4つの通路にはそれぞれ人を置いており、誰も逃がさぬよう教会は既に包囲済みだ。


私は目的の場所に辿り着くと、術式で足下を破壊し、地下通路に降り立った。そして、教会の中心へと向かう。


「我が君、ハイネから連絡がありました。ソーマ様を保護したとのことです。」


影より出てきたシヴァが、言った。アガレスもまた地下通路のひとつに配置していたのだが、そちらに何故か蒼馬がいたようだ。


「そう。それよりもあなたはここまでなら近づけるのね。」


「はい、しかしこれよりは我が君に御付きすることが叶いません。どうかお気をつけて。」


そう言ってシヴァが立ち止まった。私はひとつ頷き、先を見据えて歩を進める。

少し進むと、扉が見えてきた。視線の先でその扉が内側から開く。


扉を開けたのは、教皇モードレッド。前魔王イフリートが憑依した姿だ。

イフリートは、肉体強化に特化していた。対してキールが得意としているのは、術式だ。ただジンの仕業でイフリートに術式が弱められてしまう。

圧倒的に私が不利だ。


「オベロン様に仇なす不届き者よ。凝りもせずまた刃向かうか。」


「当然でしょう。私は貴様らを潰しにきたのよ。それに私を喚んだのは貴様ら教会の仕業でしょう?」


私はイフリートと対峙しながら、間合いを計る。


「それはオベロン様のご意志であらせられる。その意思を汲み取るのが正しい姿だと何故分からぬか。」


「なんて阿呆らしい。盲信するのもいい加減にしてほしいわ。」


どうにも話が噛み合ないのは、クラウンの魅了に長年かかり続けてきた影響か。


「アンタと話していても、埒が明かない。クラウンはその奧にいるのでしょうし…。」


体中に仕込んだナイフを袖口から覗かせ、私は間合いを詰める。


「愚かな者だ。所詮、異教徒はオベロン様の祝福を理解せぬ。」


みしり、みしり、と音を立てて、教皇の右腕が歪に変化していく。肩から先が膨れあがり、伸びていくだけにとどまらず、誰かの肉体をとってつけたかのようなグロテスクな腕には、顔らしきものが犇めき、赤黒い鋭利な爪が私に狙いを定める。私は脚に魔力を回し強化し、速度を上げる。


そして腕が振り下ろされた。私が狙うのはカウンターだ。体を捻り、間一髪で腕を避け、頸動脈を狙う。

スパッとナイフで切り裂くと、鮮血が吹き出した。


さらに仕込んでおいた特別製の短剣を取り出し、イフリートの動きが止まった隙をついて、首を刎ねる。

続いて醜悪な腕を、残った片腕を、両脚を、胴を、切断していく。できるだけ細かく、切断するたびにその肉塊を結界にそれぞれ閉じ込めた。


切れ味が悪くなったら、新しい短剣を出す。そして作業を繰り返す。肉塊が元に戻ろうと蠢いていた。やはり妖精はこれだけしても死なない。

すべてを切り刻んだ後、最初に飛ばした頭を踏みつぶし、作業は終了する。これで結界を解かない限り、イフリートが元に戻ることはないだろう。

この肉塊は、あとでクラウンから引き剥がし次第、影の空間に閉じ込める手はずだ。


それにしてもずいぶんと呆気なかった。いや、冷静でありさえすればこんなものだったのだろう。

顔に付いていた血を拭い、私は猟奇殺人現場と化したこの場を後にした。







ーーーー私は扉を開けて、教会の中心と言える空間に足を踏み入れる。

とうとうクラウンとのご対面だ。








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