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二周目の転生勇者は魔王サイドにつきました。  作者: さな
二周目の転生勇者は魔王サイドにつきました。
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アマギと教会

私は再び召喚された。

それも二人の幼なじみと共に………

藤崎カレンと緒方蒼馬、それが私の幼なじみであり唯一言葉を交わす同年代だ。

藤崎カレンはイギリス人のクォーターでアッシュブロンドに碧眼の美人

緒方蒼馬は茶髪のちょいヤンキー風なイケメン

私は黒髪眼鏡の地味子だ。

幼なじみ二人は西洋仕様の人々に囲まれて唖然としていた。

いや、ここって教会かよーとか内心悪態ついている私がおかしいのか。


私にとって教会は仇だ。

勇者キールは教会によって勇者に仕立て上げられ魔王を倒した途端、用なしとばかりに殺されたのだから

確か勇者を殺した元仲間である聖職者の名はエルネスト……ああ、目の前にいやがった。


「ようこそ、アストラッドへ―――勇者諸君」


プラチナブロンドの色ボケナルシ野郎、もといエルネストが両手を広げて歓迎する。

そして、ウインクをかましやがった。


「…ゆ、勇者?」


蒼馬がおうむ返しに聞く。

何故また勇者なのだろうか

エルネストの容姿がさほど変わっていないことから前世の私が殺されてまだ数年しか経っていないように思うのだが……


「この世界の名はアストラッド、ここはミラコスタ国王都クルースにある神殿だよ」


「異世界……なのか?」


「そう、キミたちは魔王を倒すために選ばれた勇者」


「これってなんかのドッキリだったり……?」


蒼馬はカレンと私に問うた。


「私たち三人のためにこんな大がかりなセットを用意するなんてご苦労なことね」


私は投げやりに言い放つ、カレンはわなわなと拳を震わせたあと―――


「そ、そんな……!わたし、今日マンガの新刊買いに行きたかったのに!」


カレンさんよ……異世界トリップして一番最初に考えることがマンガとは、いかがなものかと思うぞ?


「だって!完結刊なんだよ!?クライマックスまっただ中なんだよ!?3ヶ月前から楽しみにしていたのにーー!!」


…………ご愁傷さまです。

世界を渡るには多大な魔力と膨大な術式を必要とする。

当然、簡単には帰れない

けれども、私にとって異世界トリップは願ってもない行幸だ。

前世の恨みつらみ…今ここで晴らしてやろうではないか!


◇◇◇◇◇


私たち三人がこの世界の説明を受けたあと、聖職者たちは何やら大きな丸水晶を持ってきた。

これは魔力測定器で一人ずつ触らされた。

最初はおっかなびっくりとひけた腰で蒼馬が水晶に触れる。

すると水晶は淡く緑色に光りだす。

そしてその表面に数値が表れる。

――1200

確か一般人が300前後、魔術師が500くらいだったはず

次にカレンが好奇心いっぱいに水晶に触れた。

水晶は青色と白色の二層に分かれ、数値は――1700

蒼馬は純粋な風属性の魔力、カレンは水と光属性の魔力を持っているようだ。

私はといえば、日本では感じられなかった魔力がどうなっているのか全くわからないためできる限り魔力を抑えて水晶に触れた。

水晶はみるみる黒く染まり数値は500を示した。

聖職者たちにはあからさまにがっくりと肩を落とされていた……


◇◇◇◇◇


私たち三人は教会で丁重にもてなされた。

聞くところによると今は前勇者が魔王を倒してから十七年が経っており魔界の残存勢力の中から新しい魔王が出現したそうだ。

聖職者どもが言うには魔王を倒せば元の世界に帰ることができるそうなのだが、本当に帰してくれるのか確証はない。

両親のいない兄と二人で暮らしている私だって元の世界には色々と未練があるし、カレンや蒼馬帰してやらないと、彼らの家族や友人が待っている。

いざとなったら私が逆召喚を行うことになるだろう。


………とりあえずは教会も私たちに魔王を倒すために力をつけさせることにしたようで、ひとまずの生活は確保されていた。


はずだったのに―――


異世界アストラッド逗留3日目の真夜中

私は聖職者どもに追われていた。

聖職者どもが言うには他の二人に比べ魔力の少ない私はいらないとのこと。


ふざけんじゃねぇよ、テメェらが召喚しといて都合が悪いから殺すだァ?


……ってな具合で内心ぶちギレてるが、カレンや蒼馬はまだ教会で生活が保証されているので、私のことが二人にバレるのは得策ではない。


暗殺者の気配に気付いた瞬間

私は異世界に共に持って来てしまっていた学校鞄に制服を詰めこみ、そのまま窓から飛び出した!

……ちなみに私に与えられていた部屋は二階である。


現在では地味子でも身体は鍛えている。

前世の記憶があるから戦闘経験は豊富だ。

っていうか、負ける気がしない。


教会内で不正の証拠を掴んでからと思っていたけれど……仕方ない、私はあっさり教会に背を向けた。


いくら闇属性の魔力を持っていたとしても闇の精霊と契約しない限り、属性付加魔術は使えない。

つまり、今の私は基本の無属性魔術しか使えないのだ。

結界と肉体強化――このふたつで逃亡するしかない。


いつの間にか十数人に増えた暗殺者兼魔術師たちは私を教会の正門に追い詰めていた。

無論、門は固く閉まっている。


―――私は構わず正門へと突進した。

魔力で脚力を強化して半透明の立方体…もとい、結界を門の前に作り出す。

そして、結界の前で強く地を蹴って飛び、そのまま結界の上に着地する。

それと同時に結界に弾力をつける……要するに、結界をトランポリンにしたのだ。


強化された脚力も手伝って私は大きく跳躍し、門を飛び越える。

着地時にも衝撃を緩和させようと、トランポリン結界を作ろうとしたが……できなかった。


下には黒い穴があいていた。

そのまま私は穴の中に吸い込まれていった。


◇◇◇◇◇


落ちているのか、上がっているのか。

上下左右、四方八方、闇しか広がっておらず感覚が狂う。


だけど、私はこれを知っているのだ。


「いるのでしょう?――シヴァ」


私の声に応えるように金色の、一対の瞳が現れた

それは宝玉の如く美しく、見る者全てを戦かせる。


「ご帰還、お祝い申し上げますよ――我が君?」


甘くとろかす美声が届くと共に、景色が一変する。

私はいつの間にか嘯洒な一室に佇んでいた。

そして、目の前には浮き世離れした美貌の青年、勇者キールと契約を交わした闇の精霊がいた。


「貴方には分かるのね。――私がキールの生まれ変わりだと」


「もちろんです。貴女とは魂の契約、それも互いに魂の半分を預けていますからね」


黒髪に金の双眸を持つ美青年は十年経っても変わらず如才ない笑みを浮かべている。


「なら、契約は引き続き有効なの?確かに私はキールの記憶を持ってはいるけれど、キールじゃない。……それでも貴方は契約に従うの?」


美しい闇の精霊は私のもとに跪く。

これは契約主に忠誠を表す行為――


「この五大精霊が一人 シルラーヴァが唯一と定めた至上の魂を持つ御方、まだ前世からの約束は果たされておりません。私が貴女を手放すとお思いですか?」


魔王を倒したとはいえ、すぐに殺された私はまだシヴァとの約束を果たしてはいない。


「今の私は天城ゆきよ、私は教会を潰す。貴方との約束は後になるわよ」


闇の精霊は深く頭を下げた。




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