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二周目の転生勇者は魔王サイドにつきました。  作者: さな
二周目の転生勇者は魔王サイドにつきました。
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ソーマと再会

俺たちはとある村にやってきていた。そこは、魔族が出没する村らしく、俺たちはその魔族を退治して勇者の株を上げようという魂胆だ。


王都の教会からは俺たちに至急帰還するよう連絡がきたが、カレンは頑として帰ろうとしなかったし、俺としてもこのままなんの収穫もなく帰るのは嫌だった。

聖職者のアルカが強く帰還するよう言わなかったのも大きい。


そういうわけで、現在。俺は村のまわりで張り込んでいた。

張り込んで数日の真夜中、唐突にカサリと葉が擦れる音がした。

アルカとアシュマが即座に身構える。


足音の数は3つ。


全く隠れる様子もなく、彼らは月明かりの下に姿を現した。


いつぞやのまだらな金髪の魔族が二人。彼らは白いラインが入った魔王軍の軍服を身に纏っている。

しかし、俺は紅いラインの軍服を着こなしたもう一人から目が放せなかった。


白い髪は長く、切れ長の瞳は透き通る紅。人形の如く冷たく整った美貌は隠されることなく月下に曝されていた。


「………ゆき?」

「………キール」


俺とアシュマの声が重なった。


「―――私は、アマギ。魔王軍側近の一人だ。私の目的は一つ、商人アシュマの身柄だけだ。速やかに私に従うのなら危害は加えない」


静かに、簡潔に、アマギは言い放つ。

髪と瞳の色が何故か変わっていたが、紛れもなくゆきだった。ゆきは俺を一瞥しただけで、アシュマを見据える。


「ゆき!…だよな?魔族に連れ去られたって聞いたけど、やっぱゆきは無敵だな。ゆきは……」


他人のようなゆきの態度に俺は焦った。目の前にいるのがゆきだという確証が欲しくて、俺は言い募る。

けれど、それはアシュマに手で制された。


「―――俺に手を出す意味がわかってんだろうな?」


そう言ってアシュマは湾刀を引き抜く。


「無論。私はティタニアの思い通りには動かない。それに、情報が少なすぎる。ジン以外にもう一人………妖精がいるはずだ」


二人は何を言っているのだろう?

立っている舞台が違う。そう明確に示されるようなそんな会話だ。

そもそもアシュマはゆきを何と呼んだ?


(……キール、戻ってきた……)


サラが声を届ける。


(……天城ゆきは、キール……)


どういうことだろうか?十数年前に死んだとされた勇者キールが、ゆきに何かしたのか?

詳しく尋ねようとしたが、それは叶わなかった。


「シェイド、シェリル、援護しなさい」


袖口からナイフを取りだし、アマギが動く。魔王軍の二人も抜刀した。

アマギが一気に距離をつめ、ナイフを薙ぐ。アシュマは湾刀で防ぎ、二人の力が拮抗する。

その間に魔王軍の二人がアシュマの側面にまわりこみ、剣を振り下ろす。


「ニール!ルーナ!」


「「はいはーい!」」


しかし、間一髪、アシュマは精霊を呼び出し、あたりに勢いよく霧を吹き出させた。魔王軍の三人は一旦、距離をとる。


明らかにアシュマが不利だった。


「どうする?このあたりに出没していた魔族ってあれらのことじゃないの?」


アルカの言葉に俺は当初の目的を思い出す。

ぼけっとしている場合じゃない。まずは、アシュマを助ける。それから詳しい話を訊けばいい。

俺は、覚悟を決めて剣を抜く。そして、アシュマと魔族の間に割って入った。


アシュマへと放たれたナイフを弾く。


「邪魔をするなら容赦しない」


新たにナイフを取りだしたアマギは一気に加速し、俺の目前に迫ってきた。

はっとした俺は慌てて剣を振る。しかし、それはフェイントだった。さらりと剣をよけ、アマギが側頭部に回し蹴りを撃ち込んでくる。

当たる…!と、思ったが、襟首を掴まれ後ろに引っ張られた。アマギの蹴りが宙をかいた。


「何してる。あいつはキールだ。おまえじゃ敵わんだろ」


アシュマが俺を背に庇う。


「それでも、俺はゆきがキールなのかアシュマに訊きたいことがある。このまま魔王軍に連れていかれる訳にはいかない」


近くでアルカがアマギ以外の魔王軍二人を結界内に捕らえ足止めしていた。

俺はアシュマの隣に立ち、剣の切っ先をアマギに据える。その傍らにサラを顕現させた。


「―――シヴァ、同調」


アマギが何か呟いた瞬間、黒い魔力が彼女から放出される。紅の瞳が金色に染まった。


「何をしたんだ?」


禍々しい魔力に圧迫され、俺は戦慄した。


「同調だ。契約精霊を自分に取り込んだんだ。……来るぞ!」


アマギの影から伸びる巨大な黒い腕が襲いくる。

サラが風でそれを吹き飛ばし、ニールとルーナがそれぞれ風と水の弾をアマギに放つ。彼女は腕を振り払うようにして造作もなくそれらを消し去った。

そして、俺は気づいた。アマギの頭上に巨大な魔方陣が浮かんでいることに―――


「……ヤバいな」


同じく気づいたアシュマが精霊を引っ込めた。視線の先で魔方陣は薄暗い光を帯びていく。


「サラ!蒼馬を連れていけ!逃げろ!!」


アシュマが叫びながら、両手に魔方陣を纏う。

サラが俺の腰に抱きついたかと思えば、凄い勢いでその場から飛び去っていく。


「アシュマ!!」


俺が叫んだと同時に黒い雷が落ちた。轟音と共に吹き飛ばされ、サラを巻き込み地面を転がる。


土埃が収まった頃には、巨大なクレーターができていた。そこには、何者も残っていなかった。



◆◆◆◆◆


村の入口に戻ると、吹き飛ばされたらしいアルカがいた。そして、沈鬱な表情をしたリィーヤとエレンが待っていた。


「………カレンは?」


俺の問いにリィーヤは重い口を開いた。


「―――カレンが……何者かに連れ去られた」


次々に起こる衝撃的な事態に俺は途方に暮れた。





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