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二周目の転生勇者は魔王サイドにつきました。  作者: さな
二周目の転生勇者は魔王サイドにつきました。
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カレンと商人

お久しぶりです。カレンです。

異世界に来て一ヶ月が過ぎました。

わたしは今、蒼馬くんたちと一緒に魔族の討伐に出掛けています。先日、国境付近で襲われている商隊を助けようとして魔族と戦ったのですが、逆に商隊の人たちに助けられてしまいました。一応勇者なのに恥ずかしい限りです。


国境付近の魔族はいなくなり、わたしたちは王都へ戻ることとなったのですが……このまま引き下がっていては勇者の名が廃る!と思ったので、別の魔族が出没したところに行くことになりました。


商隊のアシュマさんたちも一緒行くようで、わたしは今馬車に揺られています。


「ねぇ、蒼馬くん。一度負けた勇者にはパワーアップイベントが必要だと思うの!」


「……マンガの読みすぎだ」


真剣に言ったのに、なぜか蒼馬くんはがっくりしたようでした。ここはファンタジー世界なんだから王道展開があってもいいと思うのですよ。


「一気に強くなるなんて都合がよすぎだろ。日々鍛練を欠かさないことで強くなっていくんだから」


なんとも現実的なお言葉………。蒼馬くんは道場の跡取りで日本でも毎日鍛えているだけに、いっそう現実味があります。

そして、それでも蒼馬くんがゆきちゃんに一度も勝てたことがないことに、涙を誘います。努力では才能を越えられないのです。


なんて可哀想な蒼馬くん――と、慰めてあげようとしたら、頭をはたかれました。

「気色悪い」ってひどい!


「あらぁ、仲いいわねん。アタシもアシュマと仲良くしたいわぁ」


ルーディさんがアシュマさんに流し目をおくります。うへぇってアシュマさんは鳥肌がたったようで、腕をさすりました。


「……マジでやめてくれ。俺は女の子がいいんだって言ってるだろ」


「失礼しちゃうわぁ。アタシの目利きのおかげで商売成り立ってるのに」


「―――ところで、勇者たちは本当に王都に帰らなくていいのか?」


アシュマさんが頬を膨らませるルーディさんを無視して、話題を変えました。


実は、王都の教会よりすぐに帰ってくるようにと連絡がきたのです。でも、何の成果もないまま帰ってしまうなんてできません。なんたって今のわたしたちは勇者なのですから!



◇◇◇◇◇



長時間、馬車に揺られてやって来たのは、ファミネ村という教会がある港町ミクラに近い田舎の村です。

最近、このあたりに魔族が出没するらしいのです。

魔大陸に最も近いのが、港町ミクラなので、密かに渡航した魔族が村を襲っているのかもしれません。


わたしたちは村の歓迎をうけて、その村に泊まることになりました。


部屋分けはもちろん、男女別です。

サバイバルメイドのエレンとギルド所属剣士のリィーヤと一緒に荷物を整理します。


「魔大陸って、どれくらい人間の大陸と近いの?」


わたしはふと疑問に思い、尋ねて見ました。


「とっても近いんです。港町ミクラから目視できますよ」


「今はそれほど動きはないが、常に見張りが灯台につめているな」


エレンとリィーヤがそう答えました。


「見張りがいるのに、魔族がこっちの大陸に渡ってきてしまったんだね」


船で渡ってきたら、すぐに見つかってしまいそうなのに……魔族ってば泳いできちゃったりするのかな?


◇◇◇◇◇


魔族の出没は夜かららしいのです。

わたしたちは村のまわりに三方に別れて待機します。


一つはわたしとエレン、リィーヤ

次に蒼馬くんと聖職者のアルカ、商人のアシュマさん

最後はルーディさんたち傭兵さんのグループに別れました。


あとはひたすら木陰に潜み、魔族を待ちます。

…………………言ったらダメなんでしょうけど、かなりヒマです。そして、おしり痛い。



夜の張り込み生活が、5日目に突入してしまいました。魔族はちっとも現れません。

三日月が真上にのぼった頃、カサリと葉が擦れる音がしました。わたしたちに緊張が走ります。

ザッザッと誰かが近づいてきているようです。足音は一つ。

リィーヤがわたしとエレンを手で制止しました。

足音は迷わず、わたしたちのところに向かってきています。


黒い輪郭がどんどんはっきりしていきます。その何者かの姿を月が照らしだしました。

その者は白い髪をなびかせたたいへん美しい少年でした。多少暗くったって、美形オーラでわかります。気だるげな琥珀の瞳なんて最高じゃあないですか!………おおっと、鼻血が……なんとかこらえました。

美少年はわたしを見据えて、口をひらきます。わたしはその声を脳に刻みつけんと、耳をダンボにします。………あれ?なんでわたしを見てるんでしょう?


「――――ティルカ、時間だ」


美少年が言った瞬間、まばゆい光があたり一帯を包みこみ、目が開けられません。

そして、浮遊感がわたしを襲いました。


「行こうか、カレンちゃん?」


最後に聞こえたのは、わたしと契約した精霊…ティルカの声でした。





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