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アマギと召喚
私は俗に言う転生者であるようだ。
今世での名前は天城ゆき、普通の女子高生をやっている……が、困ったことに私には前世の記憶があった。
キールという異世界人の記憶があったのだ。
前世の彼女、キールはファンタジー世界で勇者と呼ばれる存在だった、しかし魔王を倒したはいいが疲労困憊のところを仲間に裏切られあえなく死亡……というなんとも報われない人生だったせいか転生してしまったらしい。恨みつらみって実に恐ろしい。でも……
はっきり言って迷惑だ。
何が悲しくて異世界の辛酸をなめつくした若人の記憶があるのか。
ものごころついた時よりあるこの記憶は当然私を早熟にさせた。
もちろん同年代の子たちとは話が合うはずもなく、私はずいぶんと悩まされたことだった……が、今この状況を思えばそんなこと些事に過ぎない。
―――私は再び異世界にやって来ていた。
それもまた勇者となるためにだ。