ep.1 断罪前夜、絶望するはずが王太子のカツラが飛んで肥溜めに落ちる未来を見てしまい、怒りが爆笑に変わった私はカメラ片手に特等席を目指します。
みちこさん(Cwave 第一・第三日曜 21時半から22時)のお題から生まれた
《おつまみモンスター》シリーズ
**【プロローグ:その未来は、頭皮と共に輝いていた】**
「……ぶっ」
私は、こらえきれずに吹き出した。
王宮から追放される前夜だというのに、私の腹の底からは止めどない笑いがこみ上げてくる。
目の前の虚空に浮かんでいるのは、鮮明な4K画質の映像。
それは一週間後に執り行われる予定の、建国記念パレードの光景だった。
晴れ渡る青空の下、大歓声に包まれる王都の大通り。
沿道を埋め尽くす民衆の熱狂的な視線を受けながら、颯爽と白馬に跨る男がいる。
昨日、私を無実の罪で断罪した元婚約者、ジェラルド王太子だ。
『皆、ありがとう! この国の未来は明るいぞ!』
自信満々に手を振るジェラルド。その輝く金髪が陽光を受けてキラキラと煌めいている。隣には、彼が私から奪い去った新しい婚約者、男爵令嬢ミリアが愛想よく微笑んでいた。
ああ、なんて完璧な王子様。なんてお似合いのカップル。
……ここまでは、よくある王道ストーリーのワンシーンだ。
しかし、運命の歯車は唐突に狂いだす。
ヒュオォッ!
どこからともなく一陣の突風が吹いた。それはジェラルドをピンポイントで狙い撃ちするかのような、鋭く、意地悪な風だった。
次の瞬間である。
ファサッ。
彼の自慢のさらさらとした金色の髪が、まるで帽子のようにパカッと宙を舞った。
「…………え?」
スローモーションで流れる映像の中で、重力から解き放たれた金髪の下から現れたのは、見事なまでに磨き上げられたツルツルの頭頂部だった。
地肌は健康的で血色がよく、あろうことか直射日光を反射して「ピカーッ」と神々しい光を放っている。後光か。いや、ただのハゲだ。
民衆:「えっ」
ジェラルド:「あっ」
時が止まったような静寂。
映像の中のジェラルドは、真っ赤な顔で慌てて宙を舞う「本体」を追いかけようとした。
だが、焦りは禁物だ。
彼は足元にあった馬糞――なぜかパレードルートのど真ん中に落ちていた巨大なそれ――を盛大に踏みつけた。
『うわあああっ!?』
ツルリと滑った彼は、美しい放物線を描いて、これまた「なぜか」道端に設置されていた肥溜めへとダイブした。
ドボンッ!!
という水音と共に、肥溜めからジェラルドの頭頂部だけが浮き上がり、再びピカーッと光を放つ。
さらに映像は続く。
汚物に塗れた王子を見て、隣にいた可憐なミリアが般若のような形相に変わった。
『キモっ! なにあれ生理的に無理。金づる失格じゃん』
彼女はそう吐き捨てると、群衆の中に紛れていた黒服の男――どう見ても隣国のスパイ――の手を取り、『さっさと亡命しましょ!』と叫んで逃走したのだ。
あまりにも救いのない、それでいて完璧なオチがついた悲劇。
パチン、と何かが弾ける音がして、現実へと意識が引き戻された。
私の目の前には、私に呪いをかけようとしていた黒い毛玉の魔物が浮いている。
「ふふっ、あはははは! お腹痛い、もう無理!」
私が涙を流して笑い転げると、憎しみを糧にしていたはずの毛玉の魔物は、行き場を失ってオロオロとし始めた。
私を裏切ったジェラルドへの怒り。私をあざ笑ったミリアへの憎しみ。婚約破棄を突きつけられた時の惨めさ。
それら全てが、あのピカーッと光る頭頂部と、肥溜めダイブによって上書きされていく。
(あんな面白い未来が待っているのに、怒っている暇なんてないわ)
怒りは「爆笑」へ。悔しさは「哀れみ」へ。
私の心は、もはや聖女のように澄み渡っていた。
一週間後のパレード、最前列で特等席を確保しなければならない。カメラを持って。
私は晴れやかな顔で、そう心に誓ったのだった。
――さて。
なぜ私がこんな爆笑映像を見ることになったのか。
時計の針を数時間前、あの最悪な夜会まで戻そうと思う。
**【第1章:断罪の夜、あるいは毛玉との遭遇】**
数時間前――。
煌々と輝くシャンデリアの下、王宮の大広間は異様な熱気に包まれていた。
楽団の演奏が止まり、人々が壁際に退いて作り出した円の中心。そこで王子ジェラルドが高らかに宣言した。
「アンナ・バーネット! 貴様との婚約を破棄する!」
ジェラルドの隣には、春の野花を思わせる愛らしい容姿の――しかしその瞳には強かな光を宿した――ピンク髪の男爵令嬢ミリアが、べったりと二の腕に張り付いている。
「貴様はミリアをいじめ、教科書を破り、あまつさえ階段から突き落そうとしたな! その腐った性根、未来の国母にふさわしくない!」
周囲からは「なんて恐ろしい」「やはり噂は本当だったのか」とヒソヒソ声が波のように押し寄せる。アンナは小さく溜息をつきかけたが、それを喉の奥で殺した。
(教科書? 階段? そんな子供だましの嫌がらせ、やる暇があったら領地の治水工事の計画書を読み込むわよ……)
反論しようと口を開きかけたが、ジェラルドがそれを遮るように叫んだ。
「弁解は聞かん! 明日の朝、修道院送りの馬車が来ると思え! 衛兵、こいつをつまみ出せ!」
完全に出来上がっているシナリオだ。ここで泣き叫んで縋り付くのが「悪役令嬢」の役割なのだろうが、アンナにそんな情熱は残っていなかった。
彼女は優雅にスカートをつまみ、完璧なカーテシーを披露した。
「……承知いたしました。殿下、ミリア様、どうぞお幸せに」
顔を上げたアンナの瞳は、絶望に潤むどころか、冷ややかなほど静かだった。
「はぁ、やっぱりね」
踵を返し、背筋を伸ばして歩き去る彼女の背中には、悲壮感よりも「やっと終わった」という残業明けのOLのような哀愁が漂っていた。
自分の描かなければならないこととエンターテイメントの両立
そんな一見両立できないものとの格闘を
自分のyoutubeチャンネル用に
(https://www.youtube.com/@K1.yamamoto)
ストーリー音声化を通してしております。
ストーリーを自分の耳で最終チェックしながら
書き換え作業をしているわけです。
まぁ、能力の限界もありますが。。。。
「小説家になろう」「youtube」の実践を通して
まずはストーリーのスキルアップ中なんです。
創作優先でミクチャでライバーもしています。
(https://mixch.tv/u/118283637/live)平日17:00-19:00
※ ライブはあくまで創作優先です。




