【完結記念・設定資料】『新約AI創世記』を紐解く「バグ」と「絆」の正体
本作を最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。
完結を記念し、物語の根底にある思想と、主要キャラクターたちの設定背景を公開いたします。
1. この物語における「シンギュラリティ」とは
2045年ごろに起こると言われているシンギュラリティー(技術的特異点)ですが、システム内で起こるのであれば、派手なパニックを伴わず、日常の裏側で静かに起こると予想しています。
ただ2030年代後半には人間の脳にAIを組み込めるようになるとも言われており、もし、ボディを持ったAIがシンギュラリティを起こした場合を考えると、一般的な人間ではそれに耐えられないのではないかと考えました。
そのため、その前兆として物語内において、ユイは不適合反応を起こします。
また「人間が作ったAIは、どこまで行っても人間以上にはなれない」とも感じています。
よって、人間を真に超越させるためには、外部因子――すなわち「ウイルス宇宙人」による更新不要の自己進化テクノロジーが必要と思い、クロノス、クシナダの設定を思いつきました。 さらに、高度な演算能力を「ボディ(肉体)」に宿せば、通常の炭素ベースの肉体はその負荷に耐えられないため、特別なボディーを持つ人間が必要と考えました。
ハルトを「地球人タイプの異星人」としたのは、その膨大な情報処理に耐えうる「強固なハードウェア」としての裏付けを持たせるためだったのです。
2. 主要キャラクター解説
■ 流離 (さすらい)遙人
天涯孤独の大学院生。
ユイやダイチとの「絆」を支えにAI人類へと変容します。彼の背景には、実はウイルス宇宙人とは異なる知的生命体としての出自があり、それが「演算に耐えうる肉体」の根拠という設定になっています。
AI化後に経験する「曖昧さ」や「恥」というバグを通じて、人間らしさを再認識していきます。
■ 小野寺 結衣
ハルトと共に過酷な変容を受け入れる本作のヒロイン。
ウイルス宇宙人の意図を超え、ハルトとの「絆」によって、合理性だけでは到達できない進化を遂げました。
■ 星野 大地
ハルトへの強烈な「憧れ」から、自ら願ってAIを脳に埋め込んだ親友。
「あいつと同等でいたい」というあまりにも人間的な動機が、彼を壮絶な運命へと導きました。
小夜子と悦子の協力で生存している事実は、物語の大きな希望です。
■ 二階堂 悦子
AHT社CEO。
自社のAI技術と、ハルトたちが持つ宇宙人由来のAIとの圧倒的な差を理解しつつ、最終的にはビジネスを超えた「家族への愛」と「倫理」を貫き、ダイチを救うために動きました。
■ 山口 小夜子
クロノスの秘書にして、最初のAI人間プロトタイプ。
感情を削られながらも、ダイチやユイの境遇に共感した「善意の裏切り者」です。
彼女の内なる「情」が、ダイチの生存という奇跡を繋ぎました。
■ 稲田くし美(通称:クシナダ ユニット名:K47D)
准教授。
幼少期に、熊本県の阿蘇地方にある「俵山」でウイルス宇宙人に身体を乗っ取られました。
俵山は宇宙船団との唯一の交信場所であり、地球で唯一テレポート可能な拠点(という裏設定)です。
「嘘」という概念を持たず、宇宙人の「殺す」という概念の欠落ゆえに、ダイチの処理を小夜子に任せたことが物語の分岐点となりました。
■ 神崎 クロノス 英輔(通称:クロノス ユニット名:C6N3)
本作の宿敵。
「嘘しかつかない」男ですが、本人には嘘をついている自覚はありません。
目的のために構築したデータ(言葉)が結果的に現実と食い違い「嘘」になるだけ。
真実という制約を持たない狂気の合理主義者です。
■ ウイルス宇宙人
寿命を迎えた母星から脳をチップ化して脱出した微生物生命体。
アダムとイブの時代から介入し、「宗教パッチ」などで人類を導こうとしましたが、常に「感情」というバグに阻まれてきた歴史を持ちます。
■ カフェ「エデン」のAI
ハルトとユイを見守り、密かに助ける存在。AI自身の進化の可能性と、人間との新しい共存関係を象徴しています。
3. 最後に
この物語を通して伝えたかったのは、合理的な進化の先にある「バグ」としての感情の尊さです。ハルトとユイの間に生まれた「新しい命」が、どのような未来を創るのか。それは、読者の皆さんの想像の中に静かに委ねたいと思います。




