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『追放令嬢は辺境惑星で最強領地を経営する ~前世のゲーマー知識で、私を捨てた皇子たちが食糧援助を請いに来ました~』  作者: とびぃ


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第9章:帝国の式典(凱旋) 9-1:ナノマシンの奇跡と『医療革命』

『コレヲ、感染者ニ投与スレバ、治療可能デス。量産ニハ、特殊ナ触媒ト培養施設ガ必要トナリマスガ…』

古代データベース『アカシック・レコード』が生成した、銀色に輝くナノマシン治療薬のカプセル。それは、エレボスを襲った疫病『ブルースケイル』に対する、唯一の希望だった。

アストレアは、そのカプセルを手に、セバスチャン(ガーディアン戦で失った右腕は、応急処置として旧式の義手を装着していた)と、アレクシスと共に、地上へと戻った。K'サルは、データベース区画への道を知る唯一の獣人として、地下遺跡の守護を任された。

地上――疫病対策本部は、アストレアたちが地下に潜っている間も、予断を許さない状況が続いていた。ユニット・ゼロ(管理棟AI)とエララが、最小限の医療リソース(セバスチャンが集めた消毒薬や抗生物質)を駆使し、必死に感染拡大を抑え、重症者の対症療法を行っていたが、死者は8名に増え、ガロを含む重症者は危険な状態だった。

「領主様!」

アストレアの帰還に、エララが駆け寄ってきた。その顔には、数日間の徹夜による疲労と、目の前の惨状に対する無力感が色濃く浮かんでいた。

「…どうだったのよ!? 何か、見つかったの!?」

「ええ」アストレアは、カプセルを掲げてみせた。「『奇跡』が見つかったわ」

彼女は、エララとアレクシスに、地下で見つけたデータベース『アカシック・レコード』と、ナノマシン医療技術、そして自らの祖先が『最初の開拓者』であった可能性について、簡潔に説明した。

「…古代文明…ナノマシン…」エララは、その言葉を聞いただけで、技術者としての好奇心に目を輝かせた。「…信じられないけど、あんたならやりかねないわね。で、それは本当に効くの?」

「試してみるしかないわ」

アストレアは、対策本部の奥、隔離された一室で苦しんでいる、最も重症な患者――ガロの元へと向かった。アレクシスも、セバスチャンも、エララも、固唾を飲んでその後ろ姿を見守った。

ガロは、簡易ベッドの上で、荒い息をついていた。全身には青い死斑が広がり、体温は危険なレベルまで上昇している。意識は朦朧もうろうとしており、もはや死は時間の問題に見えた。

アストレアは、ナノマシンカプセルを開け、その銀色の液体を、ガロの腕に装着された点滴ラインに注入した。

『…ナノマシン、投与開始。対象ノ血流ニ侵入…病原体ブルースケイルノ遺伝子情報ヲ特定…抗体プログラムヲ展開…自己増殖ヲ開始シマス…』

インターフェイスが、ナノマシンの活動をリアルタイムで表示していく。

数分後。劇的な変化が起こった。

ガロの荒い呼吸が、少しずつ、穏やかになっていく。危険なレベルまで上昇していた体温を示すグラフが、ゆっくりと下降を始めた。そして、何よりも驚くべきことに、彼の全身に広がっていた青い死斑が、まるでインクが水に溶けるように、薄れ始めていたのだ。

「…う…」

ガロが、うめき声を上げ、ゆっくりと目を開けた。その瞳には、先ほどまでの死の淵をさまよう濁りはなく、力強い意志の光が戻っていた。

「…リョウ…シュ…さま…?」

「ガロ!」

アストレアは、思わず彼の名を呼んだ。安堵と、それ以上の感動が、彼女の胸にこみ上げてきた。

「…奇跡だ…」

背後で見ていたアレクシスが、呆然と呟いた。帝国の最新医療でも、これほどの即効性を持つ治療法は存在しない。これは、まさに「魔法」の領域だった。

「…やったわね、イカれ領主」エララも、興奮した様子でアストレアの肩を叩いた。「こりゃ、とんでもない『お宝』よ! 量産できれば…!」

『警告』と、インターフェイスが冷静な水を差した。『ナノマシン治療薬ノ量産ニハ、特殊ナ触媒ト培養施設ガ必要デス。アカシック・レコードノデータニヨレバ、ソノ施設ハ、エレボス軌道上ノ旧宇宙ステーション『オラクル』ニ存在スル可能性大』

「軌道上の…宇宙ステーション?」

アストレアは、空を見上げた。あの、忌まわしいデブリベルトの中に、まだ生きている施設が?

『オラクルハ、大戦時ニ偽装サレ、放棄サレタコトニナッテイマス。現在モ、ステルス状態ヲ維持シテイル可能性アリマス』

(なるほど。ゴミ捨て場のデブリに紛れて、古代の超技術施設が隠されている…か。徹底しているわね、私の祖先(?)も)

「エララ。その『オラクル』の位置、特定できる?」

「アカシック・レコードのデータがあれば、余裕よ! あとは、そこまで行く『足』があればね!」

アストレアの視線が、ジャンクヤードに隠されている、鹵獲ろかくしたフリゲート艦『デッド・ラビット』と『ボーン・シックル』へと向かった。エララの魔改造によって、それらはすでに、帝国の同級艦を凌駕りょうがする性能を持つ、「エレボス自衛艦隊」の最初の主力艦となりつつあった。

【メインクエスト更新:『医療革命』】

・ナノマシン治療薬のプロトタイプを入手セヨ (達成)

・軌道上ステーション『オラクル』を発見し、ナノマシン量産施設を確保セヨ (New)

・疫病『ブルースケイル』を完全に終息させよ (New)

【技術アンロック:【高度医療施設建設】…研究ポイント500でアンロック可能】

疫病の克服という、最大の危機は、同時に、エレボスに「ナノマシン医療」という、銀河の勢力図すら塗り替えかねない、新たな「力」をもたらそうとしていた。

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