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『追放令嬢は辺境惑星で最強領地を経営する ~前世のゲーマー知識で、私を捨てた皇子たちが食糧援助を請いに来ました~』  作者: とびぃ


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第4章:仲間(傭兵と技術者) 4-1:絶望的な戦力差

ピピピピピピピピ!!

管理棟のコントロールルームに、耳をつんざくようなアラートが鳴り響く。アストレアのインターフェイスにも、視界を覆い尽くすほどの巨大な【警告】ウィンドウが強制的にポップアップ表示されていた。

『軌道上ヨリ、多数ノ降下艇ヲ確認!』

『降下予測地点、アルファ(当管理棟)、ベータ(セクター7-ガンマ農業プラント)!』

ユニット・ゼロの合成音声が、切迫した叫びのように響き渡る。

「領主様! アレハ!」

K'サルが、建設中だった居住区の屋根から空を指差す。灰色の分厚い雲を突き破り、地獄の業火のように燃え盛る光点が、数十、いや、百を超える数で降り注いでくる。

「総員、戦闘準備!」

アストレアは、公爵令嬢だった頃には決して発することのなかった、鋼のような声で叫んだ。彼女の脳は、恐怖よりも先に、この理不尽な「イベント」の分析を開始していた。

(シミュレーションゲームなら、最序盤にいきなりラスボス級が殴り込んでくるようなものよ! 理不Gクソゲーがすぎるわ!)

彼女はコントロールルームに駆け込むと、メインスクリーンに敵の戦力分析を表示させた。

【脅威判定:宇宙海賊『クリムゾンファング』】

【戦力(推定):降下兵力300名以上。降下艇20隻。重機動兵器ウォーカー『スレッジハンマー』級、少なくとも1機】

【対する自軍戦力】

【領主:アストレア(戦闘能力ゼロ)】

【執事:セバスチャン(軍用サイボーグだが旧式、ジェネレーター不調)】

【領民:灰色のアッシュ・ファング族 50名(勇敢だが、装備は槍とナイフのみ)】

【防衛施設:小型発電機x1(非武装)、簡易居住区(非武装)、管理棟(隔壁のみ)】

「…ふざけてるわね」

アストレアの口から、乾いた笑いが漏れた。

インフラレベル1、農業レベル1、そして防衛レベルはゼロ。人口はたったの52。それに対して、重武装の海賊が300名。絶望的、という言葉すら生ぬるい。

「領主様、命令ヲ!」

K'サルが、その狼の顔に不屈の闘志を浮かべて駆け込んできた。

「俺タチガ、ヤツラヲ食イ止メル!」

「無駄死によ」とアストレアは即座に切り捨てた。「槍で降下艇の装甲が抜ける? レーザーライフル相手に、毛皮で突撃するつもり?」

「シカシ!」

「これは戦争じゃないわ。『迎撃』よ」

アストレAの思考は、前世のゲーマー「ミキ」のそれだった。タワーディフェンスゲームの最難関マップ。手持ちのコマは、あまりにも少ない。

「セバスチャン!」

「はっ! お嬢様、このセバスチャン、ジェネレーターの不調など、忠義の前には些事! この老骨に代えても、お嬢様を…」

「いいから、その腕力でメインゲート前の瓦礫を動かして。バリケードを築くわよ! 敵のウォーカーの射線を遮る!」

「御意!」

「K'サル! あなたの民で、最も足が速く、隠密行動が得意な者を10名選出して!」

「分カッタ!」

「残りの者たちは、管理棟の地下メンテナンスシャフトへ! 戦える者は、シャフトの入り口で槍衾やりぶすまを構えて。残りは、非戦闘員(老人や子供)を守って、一番奥に隠れなさい!」

アストレアは、矢継ぎ早に指示を飛ばす。彼女のインターフェイスが、管理棟の立体図と、獣人たちのステータス(【スキル:隠密】【スキル:俊足】)を照合し、最適解を叩き出していた。

「ユニット・ゼロ! 農業プラントのガロと通信は!?」

『接続シマシタ! ガロ氏、応答アリ!』

「ガロ! 聞こえる!? 敵がそっちにも向かっているわ! 戦ってはダメ! 収穫したばかりの(ごくわずかな)食料と、ポンプの予備パーツを持って、全員、地下水脈の奥に隠れなさい! 敵が去るまで、絶対に出てこないで!」

『リョ、領主様!? ダガ、俺タチノ畑ガ…!』

「畑はまた作ればいい! あなたたちが死んだら、『労働力リソース』がゼロになるのよ! いいわね、これは『領主命令』よ!」

『…クソッ! 分カッ、タ!』

通信が切れる。アストレアは、最悪の事態(全ロスト)だけは避けられたことに、わずかに安堵した。

ゴゴゴゴゴゴ…!

凄まじい地響きと共に、管理棟のわずか数百メートル先に、敵の降下艇が着陸し始めた。

「K'サル、選抜した10名は私と来なさい!」

アストレアは、自らも護身用のレーザーピストル(第3章でスキャンしたチタン合金を使い、メインクエスト報酬の【ジャンク修理】スキルでセバスチャンが修理したもの)を抜き放ち、コントロールルームを飛び出した。

「お嬢様!? ご無理を!」

「司令官が安全な場所にいて、どうやってリアルタイムの指揮が取れるのよ!」

彼女が向かったのは、管理棟の屋上、旧通信アンテナの基部。そこは、ジャンクの山に隠れつつ、敵の降下地点を唯一見渡せる高所だった。

「来たわね…」

ハッチが開き、武装した海賊たちが、獣のように雄叫びを上げながら飛び出してくる。彼らは、明らかにここを「抵抗勢力のいない、ただのジャンクヤード」だと思って油断しきっていた。

「K'サル、あなたの仲間は、この星の『地形』を知り尽くしている。違う?」

「アア。目ヲ瞑ッテモ走レル」

「セバスチャンが作ったバリケードで、敵の進軍ルートは一本化されているわ。あの、古いコンテナが積み上がった狭い谷間を通るしかない」

アストレアのインターフェイスが、その谷間を赤くハイライトする。

「あなたたちは、あの谷間の上、瓦礫の中に潜んで。敵が谷底を通過する瞬間、合図と共に、上から一番巨大な『瓦礫ジャンク』を突き落としなさい。あなたの民の腕力なら、テコの原理を使えば可能よ」

「…フフ。ソイツハ面白イ。狩リ、ダナ」

K'サルが、獰猛な笑みを浮かべた。

「最初の部隊ファーストウェイブは、それで潰すわ。でも、本命はその後よ」

ズゥゥゥゥン…!

地響きが、さらに大きくなる。海賊たちの後方から、それは姿を現した。二足歩行の重機動兵器。全高10メートルはあろうかという、無骨な鋼鉄の巨人。『スレッジハンマー』。

「セバスチャン!」

「はっ!」

「あなたは、管理棟のメインゲート前で待機! 最初の『落石』で敵が混乱した瞬間、飛び出して、海賊の『指揮官』を叩きなさい!」

「指揮官…でございますか?」

「ええ。あの、赤いマントを羽織っているバカよ」

アストレアのインターフェイスが、敵部隊の中でひときわ偉そうにしている男をズームアップしていた。【対象:クリムゾンファング中隊長 "ブル"】。【ステータス:短気、慢心】。

AIユニット・ゼロの分析通りなら、彼らは統制の取れた軍隊じゃない。頭を失えば、残りは烏合の衆よ。セバスチャン、あなたの軍用サイバネティクスなら、あの程度の護衛、一瞬で突破できるわね?」

「…お任せを。お嬢様の『信頼』という名のバフ、確かに受け取りましたぞ」

老執事の目が、軍人だった頃の赤い光を宿した。

「作戦開始!」

アストレアの号令と共に、すべてが動き出した。

海賊の第一波が、油断しきった顔で谷間に入ってくる。

「ヒャッハー! 何もねえゴミの星だぜ!」

「お宝はあのデカい建物の中かァ!?」

彼らが谷の真下に来た瞬間、アストレアは通信スイッチを入れた。

「…『今』よ!」

「「「ウオオオオアアア!!」」」

K'サル率いる10名の獣人たちが、巨大な戦艦の装甲版や、コンテナの残骸を、渾身の力で谷底へと突き落とした。

「グワァァァ!?」

「ナ、ナニゴトダ!?」

轟音と共に、十数名の海賊が、瞬時に鉄クズの下敷きになった。

「奇襲ダ! 敵ガイルゾ!」

敵部隊が混乱に陥る。その瞬間。

「そこですなァァァ!!」

管理棟のゲート脇の瓦礫の山から、セバスチャンが飛び出した。そのサイバネティクスの脚部ブースターが一瞬だけ火を噴き、老執事の体は砲弾のように加速する。

「なっ…サイボーグ!?」

「ボスヲ守レ!」

護衛が慌ててレーザーを乱射するが、セバスチャンの戦闘予測アルゴリズムは、そのすべてを最小限の動きで見切り、弾幕を突破する。

「図が高いぞ、賊がァァァ!」

セバスチャンは、中隊長ブルの目の前に着地すると、その軍用アーム『タイタン・アーム Mk-III』を、リミッター解除のまま叩き込んだ。

ゴシャァ! という鈍い音と共に、ブルの体が、その貧弱な強化装甲ごとくの字に折れ曲がり、瓦礫の山に叩きつけられた。

「「「…」」」

一瞬の静寂。

「…ボスが…一撃で…」

海賊たちが、信じられないものを見た目で硬直する。

「今よ! K'サル、第二波! 撤退するフリをして、彼らを地下のシャフトへ誘い込みなさい!」

アストレアの冷静な声が響く。

だが、その時だった。

ブオオオオオオン…

重低音が響き渡る。生き残った海賊たちが、蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う。

「…ウォーカーよ」

『スレッジハンマー』が、谷を塞いだ瓦礫を、その巨大な鉄槌のようなアームで粉砕しながら、前進してきたのだ。

「セバスチャン! 戻って! 地下へ!」

「しかし、お嬢様!」

「いいから! その旧式サイバネティクスで、ウォーカーに勝てると思って!?」

ウォーカーの頭部センサーが、屋上にいるアストレアを捉えた。

【警告:敵性兵器ニ、ロックオンサレマシタ】

「まずいわ…!」

ウォーカーのショルダーミサイルポッドが開く。

「お嬢様ァァァ!」

セバスチャンが、アストレアを庇おうと屋上へ跳躍しようとした、その瞬間。

ウォーカーは、アストレAではなく、管理棟の「足元」――彼らが建設したばかりの【小型発電機】に向けて、ミサイルを斉射した。

ドッゴオオオオオン!!!

凄まじい爆発が起こり、アストレアが必死で守ろうとした、なけなしのインフラが、一瞬で木っ端微塵に吹き飛んだ。

管理棟の照明が消え、アストレアのインターフェイス以外のすべてが、再び暗闇に沈んだ。

『…電力、ロスト。AI、スリープモードニ移行シマス…』

ユニット・ゼロの声が、弱々しく途絶えた。

「…!」

アストレアは、歯を食いしばった。ウォーカーは、アストレアを殺すことより、この拠点の「機能」を奪うことを選んだのだ。

(なんて的確な判断…! さっきの指揮官ブルとは違う。本隊に、本物の『指揮官』がいる…!)

ウォーカーは、もはや抵抗する者もいないと判断したのか、ミサイルを撃ち尽くすと、ゆっくりと踵を返し、母艦の方へと戻っていく。

「…撤退…した…?」

K'サルが、瓦礫の陰から顔を出す。

「いいえ…違うわ」

アストレアは、インターフェイスに残った最後のログを見て、戦慄していた。

『…敵性部隊、一時撤退。…ダガ、軌道上ノフリゲート艦ヨリ、高エネルギー反応ヲ感知…』

「…本拠地ここを、直接、艦砲射撃で更地にするつもりよ…!」

AIはスリープし、電力も失った。獣人たちの戦意は高いが、武器が槍ではどうにもならない。セバスチャンは消耗している。

「…ダメだわ。このままじゃ、全滅よ」

アストレアは、この「ゲーム」で、初めての「詰み」を意識した。

「…防衛レベル0じゃ、勝てない。こうなったら…」

彼女は、インターフェイスのタブを切り替えた。それは、彼女がまだ使っていなかった機能。

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「こうなったら、賭けよ! この星に、まだ『仲間』がいる可能性に賭けるしかない!」

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