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第4話・幽閉城デュナミスと城巨人エネルゲイア②

 幽閉城デュナミスの変形工事に、突如支障が発生した。

「親方! オレたち、城のあのエリアには近づきたくありません。あのエリア、やっぱりナニかいます! 虫みたいなモノに刺されました!」

 職人たちの話しだと、頻繁(ひんぱん)に工事が妨害されているという。

「工具が無くなっていたり、怪しいモノがチラチラ見えたり……とにかく、職人たちが怯えています」


 その時──一人の職人が顔色を変えて、ペンライトたちがいる部屋に駆け込んできた。

「出たぁ! 褐色肌で銀髪のフェアリーの大群に仲間が襲われて慌てて逃げてきた! あれは悪魔だ! もう、あのエリアには近づきたくねぇ!」

 怯える職人の話しを聞いていたペンライトが、超科学の錫杖を手に椅子から立ち上がる。

「とにかく、その場所に行ってみましょう……ペン」


 工具が床に散らかり、工事が中断されたエリアにペンライトたちはやって来た。

「ふんっ、別に何もいないではないか」

「でも、空気の流れが違いますよ……壁の隙間から暖かい空気が流れ込んできます?」


 壁に近づいたペンライトは、軽く壁を叩いて反響する音を確かめた。

「やはり、壁の向こう側に空洞があります……少し離れていてくださいペン」

 ペンライトは、錫杖を構えると石附(いしづき)側で壁を弱い超振動波で突く。

 石積みの壁が崩れ、崩れた二重壁に六角形の蜂の巣状のモノが、びっしりと張りついていた。

 驚くスターライト。

「なんですか!? これ?」


 その時、フェアリー羽を羽ばたかせた、銀髪のモノが六角形の巣から一斉に飛び出してきて、ペンライトたちを取り囲んで飛び回る。

 渦の中から、声が聞こえてきた。

「この城から出ていけ! 後から来てオレたちの城を奪うな!」

 ペンライトたちの体に、小さな切り傷がいくつも発生する。

 銀髪で褐色肌のフェアリー群の渦の中から、一体のリーダーらしい女性フェアリーが飛び出してきて、ホバーリングをしながらペンライトを睨みつけて言った。


「勝手にやって来て、オレたちが長年住んでいる城に。断りも無しに変な工事はじめやがって! ふざけるな!」

 デュナミス城には、すでに居住者がいた。


 小さき妖精(フェアリー)たちに、頭を下げるペンライト。

「城に先住者がいたのを知らずに、勝手に工事をはじめてしまったコトは、お詫びするペン」

 老職人とスターライトは、少し意外な表情で小さなフェアリーに向かって詫びる、男娘の魔女皇女を見る。


「わたくしたちも、行くところが無いペン。このデュナミス城に住まわせてもらいたいペン……あなたたち『スプライト』と共存居城させてもらいたペン……お願いするペン」

「ダメだ! でっかいヤツらの言うことは信用できない! 語尾に変なペンペンつけて、オレたちをおちょくっているのか、人間と共存居城なんて……おまえ、今何て言った? オレたちを名づけて呼ばなかったか?」


「会話をするのに名前が必要だと思ったペン……スプライトは仮称ペン、本当の名があるなら。教えてもらえれば、その名前で接するペン……わたくしの名前はイザーヤ・ペンライト、本名だペン」


 スプライトと名づけられてしまった褐色肌の銀髪フェアリーたちが、一斉にペンライトの前にかしずく。

 リーダー格のフェアリーが、悔しそうな声で呟いた。

「ちくしょう、オレたちの種族が名前をつけた者に千日間、従順しなければならない決まりがあるコトを知っていて名づけたのか……さあ、なんでも命令しろ! オレたちの負けだ、命令されればこの城を出ていってやる!」


 ペンライトは、スプライトと同じように片膝を床につけて屈むと、静かな口調で言った。

「では、わたくしと友人になって欲しいペン……この城で共存居城して力を貸して欲しいペン……デュナミス城を動かすには、あなたたちの力も必要です……お願いするペン」


 意外そうな表情で、魔女皇女を見るスプライト。

「それでいいのか? あんたみたいな人間、初めて見た……城を動かすとか言ったな、どういう意味だ?」

「それは、わたくしの部屋で、みなさんと北方紅茶でも飲みながら説明するペン」



 ペンライトの部屋で机の上に広げられた設計図を見せられた、スプライトのリーダーは呆れた口調で言った。

「とんでもないコトを考えるな、あんたたち人間は……でも、オレはこの計画嫌いじゃない。変形して移動する城なんて面白いじゃないか」

 部屋の中を飛び回っている、スプライト族たちはすっかりペンライトの部屋に馴染んで。

 遊んだり、焼き菓子を食べたりしている。

 リーダー格のスプライトが、仲間のスプライトに向かって注意する。

「おまえたち、部屋を汚すなよ……まったく、こんなに、はしゃいでいる仲間を見るのは初めてだ」


 ペンライトが言った。

「リーダーのあなたが、許してくれるのなら個別の名称で呼びたいペン……会話を続けるのに、その方が親しみやすいペン」

「オレは構わないが……そこの一つ目のメイドと、気難しそうなジイさんの名前はまだ聞いていない……オレたちと親しく会話をしたいなら、自己紹介で名乗ってくれ」

 北方地域では名前や語尾に魔力が宿っていると信じられていて、個人名称は特に重要視されている。


 悪魔種族と単眼種族の混血のラブラド種メイド『スターライト』が、貴族のような仕種で、メイド服のスカートを軽くつまみ持ち上げて会釈しながら言った。

「スターライトと言います……ペンライトさまに名づけてもらった名前です」

 

 尖耳鉤鼻(かぎばな)の老職人が、無愛想な口調で言った。

「ふんっ、儂の名前は今は『偏屈ジジイ』でいい……名乗れない事情があるのでな、儂の焼き菓子を食べてもいいぞ……腹は減っていないのでな」


 偏屈な老職人は、ペンライト同様に妖精たちに頭を下げる。

「工事で迷惑をかけるが。この幽閉城を動かすためには、城を知り尽くしている者の協力は不可欠だ……よろしく頼む、おまえたちの生活に支障がでないように配慮した工事をすると、エルフの血にかけて誓う」


 エルフの血にかけて誓うと聞いた、スプライトたちが敬意の整列をする。

「ならば、オレたちも妖精(フェアリー)も、尊厳を持って、友として応じよう」

 スプライトたちは、腰の短剣を引き抜くと頭上に掲げた。

 短剣を鞘にもどして、スプライトのリーダーが言った。

「あんたたちに見せたいモノがある、ついてきてくれ」


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