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凍てつく北の大地の魔女皇女〔男の娘〕【イザーヤ・ペンライト】は超科学を操る  作者: 楠本恵士
最終章・雪原の決戦……そして、さらなる狂愛へ
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第10話・雪原の戦いは……中央地域の暗黒城【ゴルゴンゾーラ城】へ〔ラスト〕

 雪上を二足歩行する、城巨人エネルゲイア──室内でペンライトたちが、軽食を食べながら会話をしていた。

「今、思い出してもあの『雪山の妖怪』は、派遣将軍フリュ・ギアにしてやられたペン」


 炒めた肉の具材を、柔らかいパンの袋で包み込んで焼いた、北方地域の郷土料理を食べながら。

 一つ目メイドのスターライトが言った。

「山岳民族の村人が、あたしたちに協力を申し出て一緒に戦ってくれると、言った時は嬉しかったですね……でも迷信深い村人たちの前に『雪山の妖怪』が現れて、恐れた村人たちは一目散に逃げて行った」


 体が温まる北方酒を数滴垂らした、紅茶を飲みながら偏屈職人のディライトが言った。

「ふんっ、あんなのは雲粒や霧粒に光が散乱されて、フリュ・ギアの影が妖怪のように見えた大気光学現象だ……怪異でもなんでもない、戦略家の派遣将軍フリュ・ギア……悔しいが実力を認めるしかない」


 北方紅茶を飲み干して、立ち上がったディライトが言った。

「ペンライトさまに、少し見てもらいたいモノがある」

 ディライトに案内された部屋には、雪上六輪車輪が付いた北方地域では見たこともない、箱形の乗り物〔装甲車〕が置いてあって数人の職人が近くに立っていた。

 装甲車には、カラクリの金属アームが付いている。

「これは、なんですかペン?」

「西方地域を旅した冒険家が書き残した『西方見聞録』という書籍に図解入りで書かれていた、アチの世界の兵器らしい──西方地域のある場所には、どんな経緯でそこに放置されているのか不明のアチの世界の大戦兵器の残骸がゴロゴロ転がっている谷があるらしい……挿し絵を元に北方地域にある材料で再現してみた……外装には鉄板を張りつけてある」


 職人たちと、ディライトがオリジナル装甲車に乗り込む。

 ディライトがレバー操作をすると爪アームが動いた。

「ふんっ、動力は職人たちの足こぎで走行する」

 上部の円形搭乗口を開けて、ディライトがスターライトを手招きする。

「???」


 スターライトは、不思議そうな表情で、メイド服姿で装甲車に乗り込み、ディライトの指示で搭乗口から上半身を覗かせた。

 ディライトが、一つ目のスターライトに言った。

「おまえさん、悪魔と単眼種族の混血のラブラド種じゃろう……まだ、一度も特殊な力を見せていないな」

「それは……危険な力ですから」

「おまえさんが、争いを好まないのはわかっておる……だがな、これから予想されるデス家との激しい戦いになると、そうも言ってはいられない……おまえさんの力も必要になる、防寒具を身につけて儂らと一緒に戦ってくれ……頼む」


 少し考える素振りを見せてから、答えるスターライト。

「わかりました、あたしの力が必要な時にはいつでも言ってください……ところでペンライトさま、城巨人はどこに向かって歩いているんですか?」

「雪原にある、最近デス家が支配に成功した。二つの自治区州小国だベン」


 デス家の支配下になった雪原の自治区州小国──到着したペンライト一行は、食堂兼の宿屋に入った。

 郷土料理の雪中を泳ぐ雪鮭(ホワイトサーモン)のスープを、テーブルに運んできた店主が言った。

「デス家の支配下にはなっていますが、あっしら民衆には普通に日常が送れればそれだけで十分でさぁ」

「そんなもんなのペン」

「あっしらは内戦には慣れているので、誰が国を支配しても関係無いでさぁ」


 その時、一人の中年女が慌てた様子で食堂に飛び込んできて店主に言った。

「あんた、大変だよ! 学校から帰ってきた子供が、いきなりデス家の公用語をしゃべり出してて、デス家文字を書きはじめたよ!」

「なんだって!?」

「それだけじゃない、市場に行ったら使える紙幣がデス家紙幣(しへい)だけになっていた……これから両替してくる」

「なんてこった……まさか、こんなに早く管轄が進行したのははじめてだ」


 ディライトが、アルコール度数が高い火酒を飲みながら言った。

「ふんっ、まずは子供の意識洗脳と市場の貨幣価値からか……基本的な戦略だな」

 その時、食堂に片手に手紙をベルトでくくりつけた奇妙なメイドが入ってきた。

 体にパワーアシスト兵器サイバァを装着させれられた、黒髪のメイドの口には棒状の猿ぐつわが咥えさせられている。

 メイドは寒さで意識を失っていた。


 サイバァ兵のメイド女は、ペンライトのところに進み手紙がくくりつけられていた、片手を差し出す。

 ペンライトは、ベルトで固定されていた手紙を外して目を通した。

 ペンライトに訊ねる、フェアリーのエンジェライト。

「誰からの手紙だ?」

「犯罪卿アルメ・ニアからだペン」


 アルメ・ニアの名は、フリュ・ギアから聞かされて知っていた。

 寒さで意識を失っている黒髪のメイドは、、サイバァに操られるままに寒い雪道を帰っていった。


「デス家軍が、この先の大雪原に集結して、戦いを挑みたいそうだペン」

「ふんっ、罠かも知れんぞ」

「だとしても、挑戦を避けるワケにはいかないペン……デス家の血判署名つきの挑戦状だペン」

 エンジェライトが、手の平に拳を打ちつけて言った。

「おもしれぇ! ケンカ上等だ!」


 ◆◆◆◆◆◆


 小一時間前、雪原のデス家軍雪の出城──アルメ・ニアとフリュ・ギアの前にゲートを通って現れたのは、闇外科医の『キリル・キル』だった。

 外科的処方で繊細な女性の腕と、たくましい男性の腕を自分の体に移植した六本腕で。

 自分の本来の目の真横に、補助用の目を自己移植した計四つの目を持っている。

 ゲートから出てきた、キリル・キルが言った。


「魔女皇女との決戦の場は……北方地域から、中央地域の暗黒城【ゴルゴンゾーラ城】に移します……すでに、デス家兵士とサイバァ兵それと影武者女王の群は、昆虫騎士『ピクトグ・ラム』さまが提供してくださった決戦の場に、ゲートを使って移動しています」


「なぜ急に、場所の移動をピョン? 挑戦状はメイドのサイバァ兵に持たせて、魔女皇女に渡すために町に向かわせたピョン」


「理由は二つあります、一つは北方地域でデス家軍が大規模な戦闘を行えば、損害が大きいコト……戦争は消耗戦です、橋とか道を損壊させたら後々直すのに使われるのは、デス家の資産金ですから」


 キリル・キルが四つの目を瞬きさせて、話し続ける。

「もう一つの理由は、北方地域の厄災デモンストレーションです、他の地域の厄災に影武者女王デス・ウィズさまの存在を誇示するため」


 前髪をいじくりながら、犯罪卿が言った。

「なるほど、自国外での戦闘は理にかなっている……あたしは、この出城に留まって。もどってくるメイドのサイバァ兵を待たないといけないから……お兄ちゃん、頑張って」


 派遣将軍が長剣を掲げて言った。

「母さん、ゴルゴンゾーラ城に行くよ……魔女皇女と決戦だピョン」

 アルメ・ニアを残して、キリル・キルとフリュ・ギアは暗黒城に繋がるゲートに消えた。


 ◆◆◆◆◆◆


 指定された雪原にやって来た城巨人エネルゲイアの前には、巨大なゲートが出現していた。

 バルコニーから、城巨人が通過できるサイズのゲートを眺めながら、ディライトが言った。

「ふんっ、やっぱり罠だったか……どうする?」

「行くしかないペン、ゲートに付いている紋章は中央地域にある、暗黒城ゴルゴンゾーラ城の紋章……おそらく、ゴルゴンゾーラ城に繋がっているペン」

 ペンライトが超科学の錫杖で、ゲートを示す。

「いざ、ゴルゴンゾーラ城へ」

 城巨人エネルゲイアは、ゆっくりとゲートに入って行った。


   ◇◇◇◇◇◇


 数時間後──北方地域の雪原で常冬の星空の下、幽閉城デュナミスで星空を眺めるペンライトたちの姿があった。

「結局、デス家との決着はつかないまま……北方地域に逃げられたペン」

「ふんっ、最初から厄災は決着を望んではいないからな、他地域の者たちとの交流は発明の刺激になる」

 ディライトが、防寒具に身を包んだスターライトに言った。

「あの目から出た光線が、おまえさんの能力だったんだな……恐ろしい力だ」

「お恥ずかしい限りです」

 スターライトは、手にした立方体のパズル遊具をカチッカチッと動かす。


 ペンライトが言った。

「デス家との戦いは……まだ終わりそうにないペン……それにしても、きれいな星空だペン」

 ペンライトたちは、オーロラのカーテンが流れる北の夜空を、いつまでも眺め続けた。


最終章・雪原の決戦……そして、さらなる狂愛へ~おわり~


北方地域の物語は、一旦ここで完結です(他のエピソードで続き書こうと思えば書けますが疲れる)

異界大陸国レザリムスの物語は基本、歴史が流れていくように終わりがありません。 


各地域の厄災と、守護者との闘いの物語です。

ダラダラとネバーエンディングな物語書き続けるのが嫌いなので、適当なところで切っちゃいます。

無理して続編続けても、全部が全部、良い物になるとは限りません。




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