長い廊下
どこまでも続く長い廊下。歩けど歩けど景色は変わらない。
そういえばここへ来た日もそうだった。暗く長い道を鈴の音を頼りに進んだ。その音が消えた時、視界が開けてみんなと出会った。
きっとどこかへ導いてくれているに違いない。だが、この屋敷は私をどこへ連れて行きたいのだろう。右へ曲がり、左へ曲がり。ただ目の前に現れる道を進む。
疲れてきたところに、扉が現れた。少し開いているドアの隙間から、冷たい風が足にまとわりつく。
寒くないはずの体が身震いを起こした。引き返せばいいものを、私はゆっくりとドアノブに触れる。
「失礼します」
きしむ音を立てる扉は、今にも取れてしまいそう。
手を添えてしっかりと、押さえて一歩踏み込む。
「あのー、誰が居ますか?」
頭だけ部屋へ入れて、辺りを見回すが誰も居ない。
かちっ、かちっと規則正しく進む秒針の音の向こうでかすかに何か聞こえる。
その音もまた規則正しく進む。耳を澄ませて何の音かを考えてみる。さらさらと流れるような何か。
知りたくてもう一歩踏み込むと、心臓が止まるかと思った。
「何やってんだ?」
「あ、怪しい者ではありません」
顔の前で手をぶんぶん振り、無害な事を示した。たが意味の無い事だった。
若干引き気味の美鷹が目の前に居たのだ。
「脅かさないでよ」
「俺は声を掛けただけだろ」
たしかにその通りだ。分かっているが、バクバクとせわしなく動く心臓。文句の一つでも言わなければ、この感情のやり場が見つからない。
「それで、ここで何やってた?」
「鈴の音に着いてきたの」
言い訳にしか聞こえないだろうが、本当のことだ。証明出来ないのがもどかしい。
「嘘じゃないの。確かに聞こえたんだから」
「とりあえず戻るぞ」
「なんで?」
「ここは化け物が出る」
辺りを警戒するようにキョロキョロする。そんなに恐ろしい化け物のが居るのだろうか。
腕を引かれるまま、その場を後にした。美鷹が焦っているように見えた。彼は私に何を隠そうとしているのだろう。