声のする方
窓の方に向かおうとした時、左の方からうめき声が聞こえてきた。
「どこにいるの?」
暗闇に問いかけるも、返事はない。けれど確かに声がした。勇気を出して、誰かが待っているであろう場所を探す。本当は明るい方が見つけやすいが、急に眩しくなるのは嫌だろう。私もよくカーテンを閉め切った部屋に居たから分かる。
朝が嫌い。太陽の眩しさが憎い。だから、夜が好きだった。人も動物の気配が分からなくなるような静かな夜が。だから、カーテンはそのために必要だ。多少見づらいが、このまま探すことにしよう。
目をこらし、耳を澄ませゆっくりと見渡す。もう一度声が聞けるまで、急かさず待つ。すると、またうめき声が聞こえた。今度ははっきりと方向が分かった。おそらくあのベッドの下。
視線を合わせるように床に膝と手をつき、しゃがみながら近付く。
「来るな」
低く響くような声。けれど、どこかで聞いたことがある声。どこかの廊下で聞いていたのだろうか。もしかしたら、ずっと前から呼んでいたのかもしれない。
来るなとは言われたけど、ここで引き返したくはない。次いつこの部屋に見つけられるか分からない。嫌がることはしたくない。けれど、ここで手を伸ばさなければ、もう二度と会えない気がした。
「ごめんなさい。私、ここに居るからお話しませんか?」
「出て行ってくれ」
「私はきみ。あなたの名前は?」
その人が居る方へ手を伸ばすと、咆哮が部屋を揺らした。けれどそれは威嚇とは違う感じ。
それでも、やはり大きな音は恐怖を感じる。動けないままでいると、ベッドの奥で二つの光がこちらを捉えていた。




