叫びの声
暗い顔をした自分しか想像できない。夢みた景色はきっと描けない。私が願った未来はどこにいってしまったのだろうか。望んだ普通は難しいものだった。
腹の底から笑ったのはいつだっただろう。涙が出るほど笑った日。何を見て、誰といて、何を思っていたのだろう。
思い出せない。遠い過去の記憶だ。感情に鈍くなり、何も感じなくなっていく。嬉しいも悲しいも分からなくなって、感情が涙となって流れてしまう。
「私、なんで生きてるんだろう」
分からなくなった。何も感じない。ただ進む時に流されているだけ。生きている実感がわかなくなった。
こんなこと言っても、シロを困らせるだけ。それなのに口にしてしまった。
「ごめん、なんでもない」
「なんでもないなら、言葉にしないはずです」
「違うから。忘れて」
「あなたの心の、助けを求める叫びでしょう」
その目はしっかりと私を見ていた。聞こえない振りをすることも出来た。背を向けることも出来た。それなのに、シロは私の声をすくい上げてくれた。目をそらすことなく、しっかりと私を見てくれた。
「ちゃんと届きましたよ」
だから安心してと言うように、優しく微笑んだ。
助けなんか求めない。そんなものあてにならないから。いくら優しいことを言う人だって、結局は突き放す。自分には荷が重いと。他を頼ってくれと。
そんなことが繰り返されれば、諦めてしまうものだ。声を上げても、誰にも聞こえないからと。
だから、救いを求める声は誰にも言わないと決めていた。それなのに、シロの前では心が弱くなってしまう。




