表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/44

見えるもの

 左右対称のお城はどれだけ見ても飽きない。じっと眺めていると、シロも一緒に見上げる。

「とても美しいですね」

「うん」

「上からの景色が見てみたいのですが」

「行ってみよう」

 私の想像がどこまで作り込まれているか分からないが、中へ行ってみることにした。


 意外にもしっかりとした造りになっていた。古い内装は、昔見たお城と似ている。足を進める度に軋む床や、風が吹くとガタガタと揺れる壁。そして、果てしない階段も。まるで、観光にでも来たみたいだ。

 一緒に行ってくれる友達がいたら、楽しかったのだろうか。ひとりでいることに慣れた今、想像してもよく分からない。けれど、シロの隣での城内見学はいいなと思えた。

「本当に立派なお城ですね」

 シロは辺りを見渡しながら、ゆっくりと階段を登る。おかげで、息を切らさずにすんだ。


 展望台に着いた時には、足がぷるぷるしていた。けれど、シロは顔色ひとつ変えずに私に手を差し出した。

「ありがとう」

「どういたしまして」

 まただ。シロの瞳の奥が不意に歪んだように見えた。ふとした瞬間に見せる表情。けれど、すぐにいつもの彼に戻るから何も言えないでいた。

 じっと見ていると、目が合った。不思議そうなの顔で、頭をかしげる姿はなんだか可愛かった。


 私が何もの言わないでいると、シロは窓を指さした。

「景色を見に行きましょう」

「うん」

 そこから見える景色は、どこまでも続く花畑。流れる川は輝いていて、汚れているものは何もない。目に見えるもの全てが、心地いい。

「あなたには好きなものは沢山あるのですね」

「そうだったのかな」

 好きなもの、大切にしていたこと。確かにあった。けれど、時が経つにつれて褪せていく。覚えているのに、あの時感じたものが思い出せなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ