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夕食時

手を洗っている間も、居間から2人の声が聞こえてくる。なんだかんだいって彼らは仲良しだ。だから、止めに入る必要ない。

 最初の頃は慌てて仲裁に入っていた。けれど、これが彼らの会話なのだと教えられてからは見守っている。

 もちろん言い過ぎれば止めに入るつもりだが、そんな心配はいらない。


 ふと目を向けた鏡に写った顔は、自分の意思に反して楽しげだった。疲れた顔には変わりないのだが、笑う力が戻ってきたのかもしれない。

 染みついたクマが消えるまで、どれくらいかかるだろうか。いつか昔の私に戻れたら、心いっぱい笑いたい。

 両頬を引っ張り笑って見せる。ぎこちないけれど、練習はこの辺にしておこう。

 私を呼びに来た美鷹が、変な顔をしていた。

「あー。飯の準備出来たぞ」

「すぐ行く」

 若干微妙な空気が流れたものの、彼はすぐに居間に戻っていった。


 変なところを見られた。けれど彼は笑ったり馬鹿にしたりはしない。特に声を掛けないことが、彼の優しさだと知っている。

 愛想笑いでもしてくれればいいのに、知らん顔。冷たく見えるけれどその冷たさが心地よかったりする。

 

 そろそろ居間に戻らないと。美鷹がそわそわしているに違いない。彼はぶっきらぼうにみえて、かなり他人に気を使ってしまう人だから。早く大丈夫だと伝えに行こう。

 それにお腹がすいた。昨日はお出汁の染み込んだ肉じゃが。糸こんにゃくが多めで人参が少しだけ。

 私好みの配分だった。きっと私と同じ糸こん好きがいるのだろう。


 今日の夕飯は何か想像しながら、廊下を歩いた。洋館のような内装はとても好きだ。どこか現世から離れているように思える。

 窓の外はいつもの景色。だけど、ほんの少しだけ彩って見えるのが不思議。この屋敷に守られている時だけは、肩の力を抜ける気がした。

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