なかま
夕日が沈むのと同じくらいに家に着いた。辺りはちょうど暗くなり、窓から明かりが漏れている。ステンドグラスがはめ込まれたドアは、暗がりの中てきらきらしていた。青や赤、黄色の淡い色は心をほぐしてくれる。
その明かりを少しだけ眺めて、ドアノブを引くと心地よい鈴の音が聞こえる。そして、そこに皆の笑い声が混ざった。
「おかえりなさい」
「ただいま」
「遅かったね。まさが残業してきたの?」
兎月は心配そうに駆け寄ってきた。彼は誰よりも心配そうに赤いまん丸な目をで私を見る。
「違うよ」
私はニヤリと手元の袋を見せた。
「でかしたぞ」
奥の椅子で満足気に頷く美鷹。彼はあんななりで甘いものが大好きだ。なかでも、最寄りからひとつ先の駅近くにある団子が好物。
中身を見せてみろというように手招きをする。しかめっ面でつり目の顔が少しだけ緩む。
「俺の好物ばかりじゃねえか」
「美鷹のご機嫌取りなんてしないでいいよ」
少し怒り顔の兎月は美鷹を威嚇するように唸った。まあまあと2人をなだめ、洗面台へと向かった。
古いような新しいような不思議なところ。まだ見慣れないのに懐かしく感じる場所は、私たちの家。
家族でも友達でもない関係。私たちをひと言で言いあらわせる言葉があるのなら、きっとここには集まってはいないだろう。
つかず離れず、けれどそこに居る。そんな関係が心地よかった。彼らのことは深く知らない。
彼らもまた私を知らない。過去のことなんて知ってもらわなくてもいい。ちゃんと、今の私を見てくれるから。
だからこのままでいい。このままがいい。