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最後に貴方と。  作者:
6/9

番外編③

「君と話してみたかったんだ」


 

その後わたしは彼に返事もせず無視して走ってお迎えの車に乗った。

たぶん彼の目の前でのわたしは真っ赤な顔をしていただろう。よくわからないけど、彼からの言葉に動揺した自分がいた。意識してしまった自分がいた。




お迎えの車で屋敷に帰ると、すぐに部屋に帰りワンピースに着替えた。

そして音楽室へ行き、ピアノを弾いて気分を紛らわせた。



パチパチパチ。


拍手の音。


「相変わらずピアノが上手だね」


この声は………


「ハリス様?」


「うん、久しぶりだね、パトリーナ」


ハリス様は隣国の公爵家の子息でわたしのお兄様と同じ歳。


「お久しぶりです、今日から来られたのですか?」


「うん、予定より早く来てしまったんだ。パトリーナに会いたかったからね」


「わたしに?」


「そうだよ」


ハリス様はそう言って微笑み、私の手を取って優しく手の甲に唇を落とした。


「……!」

わたしは驚いて言葉が出なかった。


「パトリーナ、今回は守るからね」


「??」

その言葉に違和感を感じたが、彼に聞き返すことが出来なかった。


ーー今回??






◇ ◇ ◇




俺が前世を思い出したのはパトリーナと出会った時だった。


隣国に留学することが決まり、試験のためにパトリーナの屋敷に泊めてもらうことになった。


パトリーナの侯爵家は母上の従姉妹の嫁ぎ先で、留学する1年間お世話になることになっていた。だから試験のためと前もっての顔合わせも兼ねて半年前にパトリーナの屋敷へと訪れた。


パトリーナの兄のバースと俺は同じ歳ですぐに意気投合した。学校の用事で遅れて帰ってきた妹のパトリーナを紹介された時のこと。


「パトリーナ、彼がハリスだ」


「ハリス様、初めましてパトリーナと申します」


彼女と握手した瞬間、ピリッと衝撃が走った。

前世の記憶が突然頭の中に流れ込んできた。


ーーそう百年以上前……俺は彼女と同じパトリーナという女性を愛した。そして独身を貫き死の間際……

生まれ変わったら今度は必ずパトリーナを幸せにすると誓ったんだ。


こんな大事なことを忘れるなんて………


でも名前は同じなのにパトリーナの顔は以前とは違っていた。でも瞳の色は同じターコイズブルー。

顔は違っていても魂は同じ。彼女がパトリーナだと感じる。


会いたくて、苦しくて、切なくて。

ずっと忘れられなかった愛しい女性。


全てを思い出した俺はパトリーナの周囲を調べた。


試験に合格して、一旦国に戻りその間に情報を集めた結果………


まさかのジェシーとマーガレットも生まれ変わっていた。


ただ今回はパトリーナとジェシーの婚約は決まってはいなかった。

それにパトリーナは妹ではなく兄がいる。

公爵家ではなく侯爵家になっている。


前世と似ているところもあるが違っていることにホッとした。


パトリーナは今の所不治の病にはかかっていない。それに肺癌は100年前には絶対助からない病だったが今は助かる可能性もかなり上がってきている。


俺はパトリーナが亡くなった後、医者になるために勉強をして公爵家から抜けて医者として生きた記憶がある。


ただ気になるのはやはりジェシーとマーガレット。

特にあのマーガレットだけは早めに排除するか、消えてもらうか、どこかに飛ばすか………邪魔でしかない。

ジェシーだっていつパトリーナのことを思い出すかわからない。マーガレットのことも今回は幼馴染以上の関係を持とうとはしていない。

それに今回はマーガレットとは親戚ではないらしい。

ただの幼馴染でマーガレットが擦り寄ってきているだけのようだ。


パトリーナも全く前世の記憶はないようだ。

だがマーガレットが不自然なくらいパトリーナに近寄って絡んでいる。


あの碌でもない女がパトリーナに纏わりついているだけで毎日不安で仕方がない。


「パトリーナは学校は楽しい?」

パトリーナ達との夕食の時、何気ない会話の中で聞いてみた。


「そうですね…………仲の良い友人も沢山いますし楽しく過ごしていますよ」


少し考えてから返事をしたパトリーナにさりげなく突っ込んでみた。


「うん?その間は?何?」


「え?あ、ああ……まぁ、ちょっと困った友人もいるので………今日もそのおかげで先生に怒られてしまったから」


「ふうん、そんな子がいるんだ」


兄であるバースが初めて知ったようで眉間に皺を寄せた。


「どんな子?」マーガレットのことだろうと思い尋ねた。話次第では消そうと考えながら。


「あー、まあ、ちょっと幼馴染との恋のお話の相談かな……ただちょっとしつこいくらい聞かされるの」


「名前は?パトリーナの人生に邪魔になるなら消し去ろう」

バースも俺と同じことを考えている。


「もうバース、そんな怖い顔をしないの」

二人の母親は驚いて諭そうとした。


侯爵は呆れながら言った。

「パトリーナももう自分で対処できる歳なんだ、心配は要らないだろう」


「はいお父様、大丈夫です。お兄様もご心配をおかけしてすみません。何かあったら相談しますので」


パトリーナは心配かけないように微笑んだ。





◇ ◇ ◇


学校では普段友人達と過ごしている。


みんなで話しながら昼食を摂っていると、またマーガレット様が顔を出した。


「パトリーナ様!わたしのお話聞いてくださらないんですか?どうしてそんなに意地悪なんですか?」


涙をためてわたしを見つめる。


「え?約束していませ……「約束していましたよね?」


ーーいえ、していませんけど?


周りの友人達はわたしを冷たい目で……あ…見ていなかった。


「パトリーナは貴女と約束などしていませんわ」


「そうよ、いつしたのかしら?」


「……そ、それは、今朝学校に来てから約束しました」


「今日は授業中以外ずっと私たちの誰かがパトリーナと一緒にいました。誰かそんな約束聞いたかしら?」


「知らないわ」


「わたしも聞いていないわ」


みんながわたしを庇ってくれた。


ーーわたしはみんなに信じてもらえているのね。


今までは誰も信じてくれなくてマーガレット様の言うことを信じていたのに……


ーーえ?何?どうしてこんなこと思ったのかしら?


よくわからない………頭の中でマーガレット様のことを危険だと言っている……そして何故か胸が痛くて苦しくて……


「あ……マーガレット様ごめんなさい。約束はしていないけどもし悩みがあるのなら先生にお話しされてはどうでしょうか?」


「っあ!酷いわ。わたしは貴女に悩みを聞いて欲しいの」


「マーガレット様、失礼なことを言わせていただきますが、パトリーナ様とマーガレット様は親しくしているようには見えません。どうしてパトリーナ様にそれほど固執されるのですか?」


友人達がマーガレット様に質問をすると、涙をためて体をプルプルとさせ始めた。


「わ、わたしはただ……ジェシーのことを聞いて欲しくて……」


「マーガレット様……わたしはラングレー様のことはよく存知ません……お話を聞くことはできますが親しく話したこともありませんし彼の人となりすらわかりません……なのでわたしに話しても仕方がないと思うのですが……」


「っえ?ジェシーのことを知らない?嘘でしょう?あんな死に方をしたくせに!なんで覚えていないのよ」


ブツブツと何か言い始めたマーガレット様……よくわからないことをブツブツと言っている。

その顔はとても怖くて……でもどこかで見覚えがある気がするのだけど……


考えすぎて頭が痛くなってきてわたしはもうこれ以上考えることはやめた。


マーガレット様はわたしに「あんたなんか誰にも愛されないのよ!」と叫んで睨むと、そのまま立ち去った。


「パトリーナ様彼女みたいな方にはできるだけ関わらない方がよろしいかと……ですので出来るだけ一人行動は取らないことをお勧めいたしますわ」


「そうですね、わたし達から離れないようにしてください」


「わたしも同意見です」


「皆様、ありがとうございます」


わたしもこれ以上マーガレット様とは関わらない方がいいだろうと思い始めた。


なのに………
















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