08.鳩時計
その団地は、K県最大級。
一棟から九十九棟までが連なり、
人々からは「マンモス団地」と呼ばれている。
シュンの家の柱に掛かっている鳩時計。
生まれたときからそこにあるらしい。
一日おきに鳴き声が変わる、最先端の時計だ。
「ポッポー、ポッポー、ポッ」
小さな扉が開き、鳩が顔を出して時刻を告げる。
二本の針は真上を指していた。
シュンはもう眠っている時間だ。
次に鳴くのは朝の六時。
夜中の時計は、とても静かだ。
鳩が奥へ引っ込み、
針の指す数字の上にある扉が、カタンと閉まる。
扉の閉じた時計の中では――
タッタッタッタッ、
暗闇の中、先に見える部屋の明かりを目指して、
薄い板でできた階段を降りていく。
扉をくぐると、そこには暖かな光が満ちていた。
「カアチャン、今日ノ当番終ワッタゼ。
明日ハ mon ノ番ダカラ」
体をぐっと伸ばしながら、木製の鳩が報告する。
「オツカレサン。mon ヲ呼ンデキテ」
振り返ることなく、
手を動かしながらカアチャン鳩が答えた。
文字盤に取り付ける数字を、せっせと磨いている。
「ラジャー!」
鳩は来た道を戻り、再び階段を駆け下りていった。
時計の中にはいくつもの小部屋があり、
木製の鳩の家族が暮らしている。
今カアチャン鳩のいるこの部屋は広く、
一家が集まるリビングのようだ。
しばらくして、
先ほどの鳩が硬い翼に一枚の紙を持って戻ってきた。
「カアチャン!!
mon ガイナイ!
“ジブン探シノ旅ニ出マスッテ、書キ置キガ!」
mon と呼ばれる鳩が、
メッセージを残して時計の外へ出てしまったらしい。
――たまに、あることだ。
「ナンダッテ!!
マタ?! もう…… tue ハ?」
「明日マデ旅行中……」
鳩たちの仕事は曜日ごとの交代制。
担当の日以外は、兄弟それぞれ自由に過ごしている。
「ハァ……シカタナイネェ。
sun、スマナイガ、明日モ頼ムヨ」
明日も仕事を任されてしまった。
「……ラジャ……」
ポッポ一家は、今日も毎日がんばっている。
月曜日の朝。
「ポッポ〜……ポ〜……ホ〜……ハァ〜……」
シュンは首をかしげた。
「?
今日の鳩時計、元気ないなぁ」
終
ポッポ一家




