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マンモス団地11棟ノ106  作者: イツカスルガ
7/9

07.スベスベ基地

その団地は、K県最大級。

一棟から九十九棟までが連なり、

人々からは「マンモス団地」と呼ばれている。

団地横の道路を挟んだ向かい側には、この辺りの住人がイベントごとに使う広場がある。

道沿いから奥へ進むにつれ、だんだん細くなっていく広場で、その形から「三角広場」と呼ばれていた。

正月には凧揚げ大会、夏には盆踊り。

住人たちの憩いの場だ。

奥の方は崖になっており、ススキのような背の高い草が鬱蒼と生い茂っている。

危険なため柵で囲われているのだが――。




シュン「ここの破れてるとこから行くよ!」

柵の破れた箇所はいくつかある。


ハトシ「先週のチャンプ、忘れてないよね?」

タロー「モチロンダヨ! ズズッー」


柵を抜け、草のトンネルを中腰で進んでいく。

生えている草が長く、先を束ねるとトンネルのようになるのだ。

地面は踏み固められ、自然と道ができている。

しばらく進むと、ダンボールが敷かれた空間に出た。


ビールケースがテーブル代わりに置かれ、その上には懐中電灯とラジオ。

横には人気漫画『チャンプ』の旧刊が積まれている。

そう、子供たちの秘密基地である。

地面は柵の方から下へ続く斜面になっており、気を抜くと滑ってしまう。

通称――スベスベ基地。

学校帰りに集まり、漫画を持ち寄ってくつろげる憩いの場所だ。


ハトシ「ちょっとトイレ!」

トイレの場所もある。


入ってきたときとは別のトンネルを進み、みんなが入らないような草をかき分けた先で、


もちろん“小”だ。


さて、タローが持ってきた最新号のチャンプを読もうとした、そのとき。

ハトシが慌てた様子で戻ってきた。


「見てこれ! トンネルの途中で落ちてたんだ!!」

ハトシが拾ってきたのは、表紙に水着姿のお姉さんが印刷された、あの手の本だった。


「こ、これは……!」


「ズーッ、ピィーッ!!」


ページをめくると、お姉さんのいろいろなポーズが目に飛び込んでくる。

「「「スゲーッ!!」」」

大興奮である。


ハトシ「まだ何冊か落ちてたんだよ! 取りに行かない?!」

シュン「行こう! 基地の宝物に確定だ!!」

タロー「くぁwせdrftgyふじこlp!!」


三人はトイレへ続くトンネルに入っていった。





ハトシが最初に本を拾った場所に着く。

そこは草が生えておらず、土がむき出しになっていて、十冊以上の本が散らばっていた。


シュン「こんなにあるんだ! 多いから中見て選ぼうよ!」

本を開くと、やはり薄着のお姉さんの絵が載っている。


(すごくいい……けど、なんだろう? 説明文? 読めない文字が多いな)


絵の横には、シュンには読めない文字がびっしり並んでいた。


ハトシ「すごいよ! この本のお姉さん、腕が四本もある!!」


タロー「このオネエサンは、背中に羽根がアルゾーッ!」


どの本も、絵の横は文字で埋め尽くされている。

とりあえず、それぞれ一冊ずつ選び、基地へ戻った。






シュンたちが家に帰り、日が暮れた頃。

本が落ちていた地面の土が盛り上がり、ヘルメットとゴーグルをつけた人物が顔を出した。


?「教授〜、ここに古い文献捨てないでって言いましたよねー!」


声の高さからして、女性だろうか。

地面の下へ向かって呼びかける。


教授?「いや〜、昔の失敗作だし、もう棚にも入らないし、ちょっと置いてただけだし。許してちょんまげ、フジコちゃ〜ん!」


地面の下から、同じくヘルメットとゴーグルをつけた、ひげ面で小太り、スーツ姿の人物――教授と呼ばれた男が現れ、フジコちゃんに許しを乞う。


フジコ「だからって、旧型のゴーレム資料も残しておかないと後悔しますよ! 記憶力、あやしいんですから!」


おそらく教授の弟子なのだろう。

フジコちゃんは愚痴をこぼしつつ、本をまとめて地面の下へ戻っていった。



フジコちゃんは気づかなかった。

教授が文献に紛れて、ムフフな本を処分していたことを。



それが子供たちの基地の宝物になったことを。



スケベスケベ基地

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