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第7話後譚 痕跡

 森を突っ切り、ある街を目指すパーティがいた。メンバーは『若者』『眼鏡』『海エルフ』『老兵』『仮面の者』という癖の塊みたいなメンバーではあったが、その実力は確かな物だった。

「やっぱりこうやって森の中をいく方がいいかなぁ、拠点の近くには無い自然を感じれるし」

 若者が頭の後ろに手を組んでゆったりと歩きながら言った。組んだ手の下の背中には、使い古された双剣が担がれ、身につける鎧は胴と腰のみ。露出した顔や手足には数えきれない傷がある。

「おれも同意だな〜。でも、湿地があるのは嫌だぞ?もうぬかるみで転びたくないからな」

 眼鏡を掛けた男は同意しながらぼやいていた。ついさっき転び、鎧も、落とした弓も矢筒も泥まみれだからだ。

「ああ、あれね?結構派手にいったよね〜」

 そう言って笑っているのは海エルフの女性だった。常に物理的に浮いている彼女にとっては、転ぶことなど頭に無かった。それも、彼女が身につけた特殊な鎧のおかげである。基本は海でしか生きられない種族故に、地上で暮らす上ではこの鎧に入っていないといけないのだ。

「笑うな、こっちはマジで嫌なんだからさ」

「ごめんごめん」

 眼鏡に対して海エルフは軽く謝った。次に口を開いたのは長身の老兵だった。

「エータルの森は特に植生が入り組んでいるからな。環境は常に不安定で、モンスターも多い…スピット、まさかとは思うが」

「うん、掃滅するためさ!」

 スピットと呼ばれた若者はいつのまにか抜刀していて、満面の笑みで戦闘準備に入った。

「やっぱりか…」

 頭を抱える老兵をよそに、スピットは目ざとくモンスターを発見した。

「あ!あそこにイーヴン発見!突撃ー!」

 スピットが単騎で突撃した。それを追うものは一人も居らず、むしろ目もくれずにそのまま歩いている。

「なぁジラフ、あれでもう6回目だ、()()()()があんなんでいいのかい?」

「仕方ないだろ?止める理由が無い。実力は知っての通りだしな」

 また頭を抱えてしまった老兵はジラフと言った。もう何度も道を外れ、そのせいで時間が予想以上にかかってしまっているのだ。レベルを上げる事は良いのだが、時間が掛かっては良い迷惑だ。この状況に眼鏡は何か言いたい様だ。

「それもそうだが、おれが言いたいのは威厳の…」

 ジラフと眼鏡が話をしていたら、仮面から召集の声が上がった。二人は顔を見合わせ仮面の所に向かった。

「なんだ、お前が声をかけるとは…ああ、何だこれは」

 ジラフが仮面の見る先へ目移すと、少し開けた森の小道があり、その殆ど真ん中に穴とも亀裂とも言える空間があった。深さは5メートルを軽く超え、その周りには見覚えのある触手が落ちていた。まだ干からびていない所から最近やられたものだと分かった。

「見ての通りだ、何があったかは()()()。ネヴェンデストが内側から破られた」

 居合わせた者たちは皆が揃って目を見開いた。このモンスターはどんなに実力があろうと、内から叩けば原型は残るからだ。

「は!?ネヴェンデストって『未満無効以上半減』だよな?そんな事をしたのは誰だ?」

 驚きを隠せない眼鏡は叫んだ。仮面は冷静なまま続ける。

「…この街にいる実力者の中でいくつか名を挙げれば、アーサー、レスタ、ヴィザーやらが挙がるが、どいつもこいつも高身長だ。一人は既に故人だがな」

 仮面が言い出した名の知れた実力者、それぞれ剣士も魔導師も区別なく挙げていった。

「それがどうした?強い奴の大半はそうだろ?」

 眼鏡が片眉を上げて言った。またジラフと海エルフも同じ事を考えていた。しかし、仮面はこう言った。

「こいつは身長150センチ程度だぞ?恐らく子供だな、しかも丁度リーダーと同い年」

「はぁ!?」

 眼鏡が叫んだ、隣にいた二人はうるさ過ぎて耳を塞ぐ。それにもお構いなく眼鏡は続けた。

「肝心の顔は?見えた?」

 少々呆れてが見えるが、仮面がそれに答える。

「見えない、黄金の霧で覆われていた。こんな事は一度も無かった」

「待て、霧と言う事は…」

 気を察してジラフが言った。仮面はジラフを見て小さく頷いた、少し間を置き更に続けた。

「…こう言う奴は敵か味方か分からないんだ。()()()()()?」

 仮面の言葉を聞いて場が静まり返る。俯いて考え込み、ぶつぶつと聞こえはするが表立って発声する者は無かった。その時ようやくスピットが帰ってきた。モンスターの亡骸も持って来ない代わりに、傷ひとつ負っていない。

「よーどしたー?」

 彼は空気の落ち込みに気がついて亀裂に近づいていった。

「早かったな、これだよ…」

 スピットが目の前を通る時に眼鏡がつぶやいた。亀裂の目の前に立った彼は、黙ると共にそれをまじまじと見て言う。

「うわぁ…ひでぇなこりゃ」

 後ずさって離れるスピットに、ジラフが聞いた。

「お前もこれが出来そうか?」

「無理だね。多分コイツのユニークスキル発動してないよ?」

 スピットの何気なく発した言葉は、皆の耳を疑わせた。

「え?」

「だって、内側から()ったんならどうなっても原型は残るし、死んだ後に引き裂いたにしては周りに皮が無さすぎる。うん、破れるって言うより削れるだもん。これ」

「…」

 どっと亀裂に集まり、言われて再びネヴェンデストの死骸を見る。確かに穴のどこにも、周りのどこにも裂かれた筈の皮が無い。そもそも死んだ後に裂くなんて事は常人で有ればしない行動、仮面の者だけが知る光景でも裂く時間を設けずその場を離れていた。そして仮面が口を開く。

「それじゃあこうしようか。報告はしない、優先度は低いがそいつの正体を突き止める」

「それ…本気?」

 海エルフが仮面に聞くも、もう耳に入って無い様だ。

「そうだな、私の願いが叶う…」

 仮面の奥の目が太陽に照らされ、赤い瞳がよく煌めいた。海エルフは何故かそれから目を離す事が出来なかった。また、スピットは密かに滾っていた。

「そっか、誰だか知らないけど、()()()だなぁ」

 スピットは笑みを浮かべた。それはそれは恐ろしく。

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