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血の吸えるレプリカ

取調べ室に入った。

『こんにちは、あなたが吸血鬼派の幹部ですね。』


『・・・・・。』


部屋に入ってみると、金髪でショートヘアの女性が座っていた。


クレハは椅子をひいて座る。

プラスティックの椅子に簡素なテーブル。


『将校様をお迎えするには簡素で申し訳ありません。話したくなければ、話する必要はありません。捕縛されて、いきなりこんな部屋に連れてこられて。私も仕事なので、いろいろ質問はしますが、、。』


幹部は黙っている。

『私はクレハです。前線で、従軍医師をしています。メンタルケアが専門ですが、これだけ気高い将校様でしたらメンタルはかなりお強いでしょう。しかし、すこしお辛くなったらいつでもおっしゃってください。』


『・・・・・。』

何も反応がない。当然と言えば当然か。幹部だ。死んでも話すことはないだろう。


参ったな。自白剤を飲ませてしまえばいいのだろうが、そんな事したら中立派に矛先が向きかねない。母さんの時のような、親子ということで誤魔化せない。


やれることは全てやってみよう。

まずは自己開示からだろう。



『私の母さんがレプリカ解放軍だったのはご存知ですかね。』


母の生い立ち、親からの虐待、仲間の死、施設での死を迎えた友人との別離など話せるものは話をした。


『すみません、私ばかり話してしまい。でも、正直母って愚かだなあと思うんです。レプリカの運命を受け入れぬまま、廃人になってしまってね。』



監視部屋はざわついているだろう。このくらいで取調べを中止にされたら、ちょっと困るのだけど。何もない。駆け引きという事くらいは察したか。


『バカバカしいですよね。感情だけで解放軍に入って。私みたいに勉強すれば、医師になれるのに。浅はかなんですよね。』


『実の母に対してなかなか言うな貴様は。』

やっと口を開いた。


『そうですかね。みずから火に飛び込んで結局廃人なんてアホだと思いますけど。』


『青いな。軍人とはそれでも戦いを選ばないといけない時があるのだ。』


そうこれは誘導した。


母をけなしながら、軍人の思考は理解できないと言ったのだ。怒りを誘うという感じか。

しかしさすが幹部クラスだと、直情的にはならない。


が、たぶんこの若さで出世したのだ。プライドもあるだろうし、根本的に人に何かをおのれの論理と信条で叩きつぶし、上へはへつらうくらいはやっている。ならば、こっちとしては何も知らないただの好き勝手話す凡人を演じる。上に立つ人は往々にそういうかわいくない若手を潰したがるものだ。


『よくわからないんですよ。黙っていれば、平和ですよ。サポートも受けられますし。友達が死んだくらいで軍に入るとか、公私混同かと。』

『きっかけはそんなものだろう。』

『そうなんですかね。大義名分ってやつですかね。そんな浅はかな理由で隊をまとめていたのだから笑えますよ。吸血鬼派もまあ、そんな器の小さな敵と戦わないといけないのは同情するしかないですよ。』


ちょっと賭けてみた。レプリカ解放軍をこきおろしながら、そんな小競り合いをしている吸血鬼派もアホですね、と。



『青いの、我が軍の愚弄は許さぬぞ。』


うん、青いのはこの人だ。幹部とはいえ、若すぎたか。だから捕まるのだ。



『いえ、こんな差別だのなんだのでいちゃもんつけてくる軍団ですからね。それと戦う大義名分ってのはよくわからないですよ。和平結んでまた、組み伏せれば良い。』


『き、貴様。この対立構造あっての世界というのに。レプリカはみずからを滅するために戦うのを、我々が止めてやってるのだ。』


あ、そういうことね。


『レプリカなんていなくても、吸血鬼の皆様は大丈夫でしょう。憎しみの矛先がなければ、血でも沸き踊るんですか?吸血鬼の皆様は。』


『貴様、許さぬぞ。この紛い物が。』


『紛い物がいないと、統治できないのでしょう。

なんたってこの国は血が慢性的に不足してますからね。血の供給を止めるのと、栄養不足のストレスの吐け口があっての、統治ですからね。』


『・・・っ!』


ビンゴか。やれやれ。


『この国の吸血鬼が血を吸うのを私はあまり見たことがありません。それは、血が足りないから。だったら血のいらないミュータントを作らないといけない。加えて、差別構造を作りストレスの吐け口を作る。レプリカに遺伝なんて関係ない。だってね。』


私は自分の指をペンで刺す。

血が出る。血を舐める。













『レプリカ認定されても、私はこうして血を吸うことができますからね。』


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