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解放軍の団長の息子による告白

私はレプリカ解放軍の野戦病院にてメンタルケアに従事していた。

レプリカ解放軍はやはり、差別を受けてきた種族の人達なので、

メンタルはやられやすいようだ。


もちろん、解放軍にもメンタルケア専門の医師はいるが、

その医師すら診察を受けに来るという構造になっている。


「これ開業医だったたらすごく儲かりそうだな。」

「テツノスケ。私達は儲けなんて気にせずに仕事させてもらえることに感謝しなきゃよ。」

「クレハにしては珍しいな。滅私奉公の精神。」


診察の合間のたばこ休憩でそんな話をする。


こんな悠長に話をしてはいられないのだが、とにかくこの現場で結果を出さないといけないのだ。


従軍医師上層部にも、レプリカの母のセラピーの話を報告し、

それを売り文句にレプリカ解放軍に潜り込ませてほしいことを訴えた。


当然、母の人格を引き出すプロセスまでは売りにはできないが、、

少し私のことはレプリカ解放軍では有名になっていた。


解放軍の一団長の娘であること、そしてレプリカを一人解放したという名目で。



そう、母は解放軍内では再起不能ということになっていたのだ。


「解放ってこうやって、社会生活できないようにぶっ壊すことなのかしら。」

ただ、大きく外れてもないと、クレハは踏んでいる。

それは母が斥候として会った自分に銃をつきつけ、殺そうとしたことから仮説をたてている。


レプリカという種族を滅するのがレプリカ解放軍の目的なのか・・・

だとしたら、集団で自害すればいいものの、吸血鬼派と争うには何があるのだろうか。


この謎は深まるばかりではあるが、おそらくどちらにも解放のための名目があるのだろう。


その本当の意味を知っているのは軍団長に他ならない。なんとか接触しなくてはならない。



「さて、次の方どうぞ。」

「はい・・・・」

「今日はどうなされました??」
















「私は軍団長の息子でして、将来このおぞましい軍団を率いていくことを考えると

夜も眠れないのです。」






まさに渡りに船でだった。

「あなたは軍団長の息子で、遠くない未来あとを継ぐのがこわいと。」

というかなんで軍団長の息子がこんな前線にいる?


「はい。私は修行ということで前線にいるのですが、来月には本部に戻ります。

前線で起きている殺戮風景を見ていると何のためにここまでして戦わなくてはならないと感じる

のです。昔みたいに吸血鬼派に従属していれば何も問題なく、加護を受けられるというのに、、

でも、それをよしとしない流れができて、解放軍ができて。恐ろしいです。レプリカという

存在そのものが。」


「恐れている?何に?」

「レプリカはただレプリカという存在がそこにあれば、この世界では生きていける存在なのです。

でもそれを我々自身が許さない。この世界を創り出したものを許さない。安寧を壊されるのが・・・。」


そこで軍団長の息子は泣き始めてしまった。


「娘も妻もいるのに、こんな運命はつらすぎる!!だから私は私は・・・・。」


そこから私はこの息子の懺悔のようなものを延々と黙ってきいていた。


この息子たる人物は狂っているように思えない。また来院してもらい、情報を集めなくては。。。



「また来週ぜひお越しください。予約を取れますがこられますか?」

「はい、ぜひ・・ああ少し楽になりました。ありがとうございます。先生。」



少し真実に近づいた気がする。やはり潜入は間違っていなかったのだ。


















しかしながら、その軍団長の息子はその夜、キャンプ内で首を吊ってなくなっている姿が発見された。

自殺だったようだ。

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