未来へ
母さんの尋問から1年後。
あれから母さんは何を話しかけても反応がない、廃人となってしまった。
吸血鬼派もさすがに療養が必要な人物ということで、身元保証者として父のもとへ
預けられた。
父は母と再会を涙ながらに喜んでおり、母が戻った後は
警察を辞めて、セラピストの勉強をしながら母の面倒を見ることにした。
幸い、私の実家は海沿いで自然も豊かな立地だから療養にはうってつけだった。
私は従軍医師から休養をもらい、母と父と過ごしていた。
「かあさん、今日は天気がいいね。みてごらん、うみねこが見えるよ。」
「・・・・・・・・・。」
母は1年近くこの有様だ。なぜこうなったか、母の本当の人格については
父にはいっさい伝えていない。そんなことを伝えたところで何も生まれないからだ。
私は私で、レプリカについて、解放軍について、そして吸血鬼というものについて
調べて過ごしていた。
どうも母がいっていた、「レプリカの解放」という言葉がひっかかっており、
またジュンの失踪と謎の女性、そして母をこんなにしたカナエというワーカーの
身元を追っていた。
足取りはつかめず、1年が経ったということだ。
母がライの人格を表に出したのは結果からいうと、
賭けであった。
ショック療法というかぶっちゃけ根拠も何もないから一番ショックを受けそうなことから
やろうと思ったからだ。
とはいえ、小さい頃、私に見せていたライの人格については、
何かこうショッキングな出来事があると母が見せていた姿だったので
なんとなくあたりはつけていたのだが・・・。
「アカネ、元気ですか?」
ミャーコが訪ねてきた。ミャーコはまだ記憶を完全に取り戻したわけではないが、
キミコを機械化したのがミャーコだったことは病院の精密検査にて判明した。
「かあさん、せっかく友達とやっと会えたというのに・・・・。」
父は最近涙もろい。まあ、長年の緊張の糸が切れたのだろう。致し方ない。
「そういや、クレハ。今日はテツもきてるのよ。」
「よう!クレハ!元気していたか?」
「テツ!元気そうね。」
私はなぜかこの男に猛烈な憧れをもっている。なんかアウトサイダー感が強いからかな。
「クレハ、今日来たのはちょっと話があってなのよ。」
とミャーコ。
「私の書斎にいきましょう。」
♦
「話ってなにかしら?」
「実は、ジュンのことについてなの。」
「・・・!」
「ジュンを見かけたという情報を得たのよ。これは従軍医師の同僚が見たっていうんだけど・・・。」
「場所はどこだったのかしら?」
「レプリカ解放軍の野戦病院をやっていたときよ。」
「レプリカ解放軍か・・・・」
「そこでよ!クレハ!そろそろ従軍医師に戻らないか?ちょうtどレプリカ解放軍の方の領地で
お仕事が発生したのよ!」
ジュンに会えば、真実がわかるかもしれない。
「いきましょう。」
「ジュンは裏切りものだから遭遇したら、捕まえて尋問しても構わないんだとさ。
もちろん現地ではむりだろうけど。ジュンの身柄拘束を目的にレプリカ解放軍の領地に
潜り込もう!」
願ったり叶ったりだった。
この世界を終わらせる、引き金になるかもしれない。
でもやらなくてはならない。
こんなバカげた世界は終わらせる。
次からはこの世界についての解明をクレハがすすめていきます。クレハがレプリカなのに、血を飲んでもショック症状にならなかった理由は?レプリカの解放とは?そもそも初吸いの目的とは?
そしてなぜライはいとも簡単に人を動かして、レプリカ街の火災事件を起こすことができたのか?
ジュンの企みは何か?
解明編の幕開けです。




