お母さん、さようなら。
「うわあああああああ!」
私の娘が、私の娘が、
私にあの禍々しいものをむけてくる。
嘔吐がとまらない。
頭の中にフラッシュバックする。
クラスメイトに受けた仕打ち、お父さんとお母さんにうけた仕打ち、
やっと逃げた学園が燃え、友達が死んでいく光景。
それでも生き残った友人が病院に立てこもり、
それでも生き残った友人が凶弾に倒れる。
ママーママーといいながら涙を流す我が子。
その我が子を見捨ててまで望んだ、レプリカの解放。
一番、解放してあげたいレプリカである我が子。
レプリカという存在がいるから、レプリカという差別対象がいるから
この世は薄汚れていく。
ならば、自分たちを含めレプリカという存在を抹消せねばならない。
そしてレプリカたる存在を創り出しているものを。
「母さん、これが怖いんでしょう。あなたの人生を狂わせ、まがい物であるあなたが
受けた心の傷をえぐるこれが。でもね、あなたにはこれと向き合う義務がある。」
はき続けた。そのうち胃の中のものがすべて無くなり、
吐けるものがなくなっていく。
胃がけいれんする。
嗚咽がひどい、のどが焼けるようだ。
「そのうちさあ、のどが傷ついて血が出てくるよ。そうするともっともっと
大変だね。嘔吐も血も止まらない。それがレプリカたる証よ。」
「う・・・・が・・・・・。」
「記憶もすべて飛んじゃうくらい、やばいかもね。かあさん。」
クレハからあれを取り上げなくてはならない。
体は縛られている。動けない。
「ごほっ!」
口から血が噴き出してくる。
その血しぶきはクレハの手にかかる。
そこからは地獄だった。
私にとって1つ驚愕だったのは・・・・
クレハが血をおいしそうにすすっていることだった。
♦
「ど、う、、、して。」
「それは本当の母さんに聞いてみることにするわ。ねえ。」
私の意識が飛ぶ。
「皆さん、この取り調べの光景はビデオでおさめられているのかしら?」
「ああ、しっかりおさえてある。」
「今から起きる光景は母さんが意識を取り戻したら見せてあげること。ここまでが
私のセラピーよ。」
目をあける。ここはどこだ。ああ、あやつの子か。よくわかる。
内なる目で見ていたからな。
「かあさん、いえ本名は・・・・・・・・・・・
ライさんだったかしら?」




