たくらみ
かあさんはあの団にいたみたいで、捕虜になった。
私は今からそのかあさんのセラピーをやるということだろうか。
スピーカーから、指示がとぶ。
『クレハ従軍医師。君は精神科が専門だそうだな。』
『はい、そうですが。』
『当然人の心については、かなり詳しい。そういう理解でよろしいか?』
『はい、大丈夫です。』
『では、そのものの口を割って欲しい。レプリカ解放軍についてなんでもいい。洗いざらい話させてくれ。手段は死なないなら問わない。』
前から思っていた。吸血鬼派はとにかくエグい。かあさんが学園で受けたいじめ、ソノエさん達の施設に対する虐殺、私はいじめはかわしたけどレプリカをここまで目の敵とするか。まあ、そんなレプリカも弱者に甘んじることなく、抗いはじめた結果、今のような世界となった。
にしてもだ。レプリカならレプリカを尋問して狂わせていいのか。自ら手を汚さずに。そして実の親子だ。そこが最大の謎だ。私が手を抜き、かあさんを誘導尋問し、かあさんが解放されるような流れとて、作れるはずなのに。なぜだろうか。
『一つ質問よろしいでしょうか。』
『なんだ?』
『私はこのものと血縁です。その利益相反となると思われますが、そのあたりの見解を教えて頂けないでしょうか。』
『そうだな。確かに血縁だから君の職務と君の大切にしうるものという点では、相反する。我々は真実さえ知ればなんでもいい。ただ君のやり方次第では、そういう血縁を利用した方法でも口を割らない場合、どんな手段を取ってもいいという保証はつけておかないとね。』
なるほど。血縁だから泣き落としでいけ。それで無理ならそうじゃない手段を提示しておく、という事か。吸血鬼派も穏便に事が進むのが1番か。
ただおかしな依頼ではある。私は中立派だ。なぜ中立派がこんなどちらかに寄る、仕事を受けたのか。場合によっては、中立派とレプリカ解放軍の戦争状態になりかねない。
だから、私なのか。実の子が捕虜の母に会いたいと懇願し、中立派が致し方なく仲介した。レプリカ派にもそういった温情を与えながらも、情報は抜き取る。ということは、私の立ち振る舞いは結果今後の戦局を左右しかねない、という側面もあるか。
でも、そんなのはつまらない。決めた。
昔、父から母のトラウマついて聞いたことがある。
『かあさんはスタンガンがダメなんだ。その、昔ね。』
スタンガンだと一発で寝てしまう。だから、この強制的に眠りから覚ます薬も使う。
『かあさん、ごめんね。』
クレハはアカネにスタンガンを見せつけた。
 




