別れと出会い
クレハとテツノスケは近くの吸血鬼派の都市まで逃れていた。
宿をとり、そこで前線の状況を聞きながら
本営からの指示を待つ。今回は、前線の強襲された地区での医療サービスの提供だ。
撤収の際にうけた指示が、「近隣の安全地区にて待機。」である。
普段であれば次の現場、もしくは地区にとどまり医療サービスの提供を継続せよ、という
指示がすぐとんでくるが、今回はそれがない。
何か水面下でことが動いているということだろうか。
「暇だな。この仕事を始めてこんなに暇な時間を過ごしているな。」
「そうね。この地区は安全だけど、街に繰り出すなんてできないわね。従軍医師が、
この状況で前線にも出ず、遊んでいたなんて風評がたったら仕事がしずらくなるしね。。」
1日、炊事場がある宿にこもりながら朝、昼、晩は自炊をしながら
出動要請をひたすら待つ。テツノスケは日中ひたすら読書にふけっている。
私はネット環境があったのでひたすら、情報収集とあきたら医療の論文を読みあさる。
主な情報収集内容は、戦況と捕虜についてだ。
戦況はすぐに出てくるが、さすがに捕虜の情報なんてものは出てこない。
SNSでもさすがにそのような情報をあげている人はいない。
ただ、私達を襲ってきた部隊は作戦により壊滅したようである。
「はあーしかし、こう待機期間があると体がなまってしまうよな。」
テツノスケが何の気なしにつぶやき、たばこに火をつける。
宿の主が部屋を訪ねてきた。
「お客様、従軍医師本部の方からお電話がはいっております。」
「私が電話うけるわ。」
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「はい、はい。え?あ、そうですか。ではテツノスケ医師に変わります。テツノスケあなたにも直接
次の勤務先を伝えるって。」
「ん。はいはい。わかりました。」
テツノスケが電話を切る。
二人で部屋に戻る。
急いで荷物をまとめる。宿をチェックアウトした。
「テツノスケ、じゃあ私はこっちだから。」
「おう、生きてまた会おうぜ。」
二人は宿屋の前で別れた。
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私は吸血鬼派の首都に到着した。伝令が来てから1日が経っていた。
「クレハ従軍医師、ただいま到着しました。」
部屋に通される。監視カメラと鏡が1つ。鏡はおそらく、向こうから様子が見えており、
目の前にいる捕虜とのやり取りを視認したいのだろう。
ここは医療機関だが、少し特殊な場所だ。吸血鬼派の警察組織が運営する、医療施設。
主に、犯罪者を収容している場所だ。
私は吸血鬼派から従軍医師に依頼があってきたわけだ。
吸血鬼派の医師が担当したいのはある理由があるからだ。
目の前の人物が捕虜だということと、
レプリカだということ。
しかし一つだけ理解できない狙いががあるのだと感じながらその捕虜の前に座る。
なぜ私の親族のレプリカと私をひきあわさせたのだろうかと。




